ゲストのcojicoさんへのレスを書きながら、以前「エロイカより愛をこめて」の『パリスの審判』の一コマをスキャンしたことを思い出し、画像を探し出した。作者である青池保子さんの隠し味はたまらない。なにしろマリアーノ・フォルトゥニーまで何気に登場するなんて渋すぎ!♪ ちなみに、『パリスの審判』は旧スターリン時代に略奪されたクラナッハの絵の返還をめぐる物語である。
ということで、クラナッハ(図録表記はクラナハ)も来ている「ウィーン美術アカデミー名作展」(損保ジャパン東郷青児美術館)を観てきた。
この秋に開かれている主要な展覧会を観て廻ったのだが、その中で私的に一番観応えがあり満足感を覚えたのはこの展覧会だ。なにしろ代表作品が多く来ているうえに内容的にも充実、また、その作品が北方ルネサンスからクールベまでの西洋古典絵画という、まさに私のための展覧会だった(笑)
ウィーン造形美術アカデミーのギャラリーは、ヒエロニムス・ボス《最後の審判》を観るために訪れたことがある。ここは珍しく美術館図録は置いていなかったし、大学付属だから広報活動はしないのかなぁと思っていたら、なんと向こうから出張興行でやってきてくれたのが嬉しい♪
まず、展覧会のオープニングは意外なことにヴァン・ダイク《15歳の自画像》だった。画家自身の若々しい才気と強い自負心がこちらに向けた視線から感じられる作品である。が、クレーフェやクラナッハの前に展示するのは時代的に、ん?、とも思う。まぁ、アカデミーのサイトでも代表作品に位置づけられているようで、美術大学という性格を象徴する作品だからこそなのだろう。
で、その後にルーカス・クラナハ(父)の《不釣合いなカップル》《ルクレティア》《ヘラクレスとアンタイオスの戦い》と続く。クラナハを面白く思うのは皮肉っぽい醒めた感触を感じることで、きっと画家自身もそうなのかもしれない。ルターの親友でありながら宗教画を多く描いていたりする。注文があれば何でも描くのが当時の画家かもしれないが、割り切れる怜悧さがあるということだと思うのだ。もちろん優れた宗教画も多く描いているが、コルマールのウンターリンデン美術館《磔刑》などは、最新モードで着飾ったマグダラのマリアがキリストよりも目立ってしまうという不思議さも併せ持つ。
さて、《不似合いなカップル》はそんなクラナハらしく、ぬけぬけとした二人のやりとりを楽しみながら皮肉たっぷりに描いており、好色老人の財布袋に手を入れる若い女性の何食わぬ表情なんてまさに絶品(笑)。この男女を入れ替えた作品(ブダペスト国立美術館)もあるようなので参考までにご紹介(^^;;。左はウィーン作品。右はブダペスト作品。
きっとこのような世俗画の延長線上にCARAVAGGIOの「女占い師」や「いかさま師」があるのだよね。
ところが、《ルクレティア》は意外なことに皮肉さを感じさせない悲壮さがあって、思わず絵の中に惹き込まれてしまった。
描いた主目的はヴィーナス像と同じかも知れないけれど、それでもテーマに相応しい表情は秀逸だと思う。西美にあるグイド・レーニの同主題なんかよりも私的には好ましい。
《ヘラクレスとアンタイオス》は北方ルネサンスの画家に多く観られるテーマで、どちらかというとムキムキ筋肉を誇張する作品をよく見ているが、残念ながらこのクラナハのレスリングは迫力に欠ける(笑)。彼の描く独特の優美な曲線を持つ女性像に比べ男性像があまり魅力的ではないのは画家自身の嗜好なのだろうか?(^^;;;
それにしても、同時代人であるデューラーやグリューネヴァルトに生真面目さを感じるのに、クラナハには世俗的なニュアンスが濃厚に感じられ、そこがクラナハ的な魅力なのだなぁと思った展覧会だった。
ということで、一応、まだ続く予定(^^ゞ
ということで、クラナッハ(図録表記はクラナハ)も来ている「ウィーン美術アカデミー名作展」(損保ジャパン東郷青児美術館)を観てきた。
この秋に開かれている主要な展覧会を観て廻ったのだが、その中で私的に一番観応えがあり満足感を覚えたのはこの展覧会だ。なにしろ代表作品が多く来ているうえに内容的にも充実、また、その作品が北方ルネサンスからクールベまでの西洋古典絵画という、まさに私のための展覧会だった(笑)
ウィーン造形美術アカデミーのギャラリーは、ヒエロニムス・ボス《最後の審判》を観るために訪れたことがある。ここは珍しく美術館図録は置いていなかったし、大学付属だから広報活動はしないのかなぁと思っていたら、なんと向こうから出張興行でやってきてくれたのが嬉しい♪
まず、展覧会のオープニングは意外なことにヴァン・ダイク《15歳の自画像》だった。画家自身の若々しい才気と強い自負心がこちらに向けた視線から感じられる作品である。が、クレーフェやクラナッハの前に展示するのは時代的に、ん?、とも思う。まぁ、アカデミーのサイトでも代表作品に位置づけられているようで、美術大学という性格を象徴する作品だからこそなのだろう。
で、その後にルーカス・クラナハ(父)の《不釣合いなカップル》《ルクレティア》《ヘラクレスとアンタイオスの戦い》と続く。クラナハを面白く思うのは皮肉っぽい醒めた感触を感じることで、きっと画家自身もそうなのかもしれない。ルターの親友でありながら宗教画を多く描いていたりする。注文があれば何でも描くのが当時の画家かもしれないが、割り切れる怜悧さがあるということだと思うのだ。もちろん優れた宗教画も多く描いているが、コルマールのウンターリンデン美術館《磔刑》などは、最新モードで着飾ったマグダラのマリアがキリストよりも目立ってしまうという不思議さも併せ持つ。
さて、《不似合いなカップル》はそんなクラナハらしく、ぬけぬけとした二人のやりとりを楽しみながら皮肉たっぷりに描いており、好色老人の財布袋に手を入れる若い女性の何食わぬ表情なんてまさに絶品(笑)。この男女を入れ替えた作品(ブダペスト国立美術館)もあるようなので参考までにご紹介(^^;;。左はウィーン作品。右はブダペスト作品。
きっとこのような世俗画の延長線上にCARAVAGGIOの「女占い師」や「いかさま師」があるのだよね。
ところが、《ルクレティア》は意外なことに皮肉さを感じさせない悲壮さがあって、思わず絵の中に惹き込まれてしまった。
描いた主目的はヴィーナス像と同じかも知れないけれど、それでもテーマに相応しい表情は秀逸だと思う。西美にあるグイド・レーニの同主題なんかよりも私的には好ましい。
《ヘラクレスとアンタイオス》は北方ルネサンスの画家に多く観られるテーマで、どちらかというとムキムキ筋肉を誇張する作品をよく見ているが、残念ながらこのクラナハのレスリングは迫力に欠ける(笑)。彼の描く独特の優美な曲線を持つ女性像に比べ男性像があまり魅力的ではないのは画家自身の嗜好なのだろうか?(^^;;;
それにしても、同時代人であるデューラーやグリューネヴァルトに生真面目さを感じるのに、クラナハには世俗的なニュアンスが濃厚に感じられ、そこがクラナハ的な魅力なのだなぁと思った展覧会だった。
ということで、一応、まだ続く予定(^^ゞ
やっと見てきました。ヨーロッパの落ち着いた絵を満喫できるとてもよい展覧会でした。
クラナハについては、このページで勉強させていただきました。ありがとうございます。
私も少し感想を書いたのですが、その中で、こちらのブログへのリンクをしてしまいましたが、よろしかったでしょうか?こういう事が、ネットの常識として良いことなのかいけないことなのか、よくわかりません。また、教えていただけるとうれしいです。
また、トラックバックもさせていただきました。
さて、私の描いた作品についてですが、倉庫にある油絵をまだ取りに行っていない状態です。すみません。今週後半も来週もちょっと出かけるので、その次の週ぐらいに写真に撮り、ブログにアップすることにします。
cojicoさんのブログも拝見しましたよ~☆ 私もスペイン絵画が好きです。ムリーリョについて、うなずきながら拝読させていただきました。感想は後ほどお伺いいたしますね。
で、クラナハについてのリンク、ありがとうございまました!美術ド素人が勝手なことを書いてしまったもので...あな、恥ずかしや...(^^ゞ
それから、cojicoさんの油絵が近々拝見できそうなのがとても嬉しいです!♪