花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

秋の北イタリア旅行(11)(ヴィチェンツァ①)

2024-01-09 22:55:29 | 海外旅行

さて、今回の旅の一番の目的はこのVicenzaにあった。アンドレア・パッラーディオの「ラ・ロトンダ(La Rotonda(Villa Almerico Capra))」をぜひ観たかったのだ。サイトで調べたら開館が金・土・日になっていたので、金曜日に行く予定を立てていた。

アンドレア・パッラーディオ(Andrea Palladio, 1508-1580年)は、パドヴァ生まれの建築家であるが、ヴィチェンツァの「Palazzo della Ragione(市公会堂)」改修案コンペで優勝し、後にヴィチェンツァに居を移して多くの建築物の設計を行っている。ちなみに、「Palazzo della Ragione」はその後パッラーディオ様式(初)の公会堂(Basilica)ということで「バジリカ・パッラディアーナ(Basilica Palladiana)」と呼ばれることになる。

若きパッラーディオはヴェネツィア中央での活躍の場を求めたが、当時、サッコ・ディ・ローマ(1527年)によりローマの芸術家や建築家もヴェネツィアに逃げてきていた。ヤコポ・サンソヴィーノ(Jacopo Sansovino、1486-1570年)もその一人で、人脈の成果(?)でヴェネツィア政府の重要な仕事を引き受けるようになり(サン・マルコ聖堂主任建築家就任、マルチャーナ図書館設計...とか)、パッラーディオの入り込む隙がなかなかなかった。「リアルト橋」コンペにも敗れたしね。サン・ジョルジョ・マッジョーレやイル・レデントーレなども後半年になってからの仕事である。

もちろん、パッラーディオは「建築四書」や、バルバロ編「ウィトルウィウス建築十書」(図版)を著し、建築理論の分野でも有名である

興味深いのは、サンソヴィーノやジュリオ・ロマーノが建築の装飾も自ら手掛けたのに対し、パッラーディオは石工出身だったから、装飾に関しては地元出身の優れた画家との役割分担によって数々の名作を残したようなのだ。

ということで、ヴィチェンツァ移動の翌日である木曜日、朝食の後、さっそく市内見学用に「Vicenza Card」を購入しようと、テアトロ・オリンピコ隣のインフォメーションを目指した。

下↓の城門から入り、ローマ広場を横切り、アンドレア・パッラーディオ通りをまっすぐ進む。

「テアトロ・オリンピコ」は通りのずっと先で、道すがら様々な(含パッラーディオ)建築物を眺めていたら、横道の先にある青緑色の屋根が印象的な「バジリカ・パッラディアーナ(Basilica Palladiana)」が目に飛び込んできた。

バジリカ前のシニョーリ広場ではマーケットが開かれ、客でにぎわっていた。きっと木曜日は市の立つ日なのだね。

バジリカの向かいには同じくパッラーディオが設計したヴェネツィア共和国総督官邸「ロッジア・カピタニアート(ロッジア・ベルナルダ)」が建っていて、ヴィチェンツァがヴェネツィア共和国のテッラ・フェルマであったことを想起させる。

「ロッジア・カピタニアート」はパッラーディオにより1565年に設計され、1571年から1572にかけて建てられた芸術作品である。この元ヴェネツィア総督官邸は現在ヴィチェンツァ市議会の建物になっているようだ。

だからなのだろうか、パラーディオ通り周辺には、思わず「ここはヴェネツィア?」と思わせるパラッツォもいくつかあった。↓は赤茶色の壁に白い窓枠が映える15世紀ヴェネツィアン・ゴシック様式の「パラッツォ・ブラスキ(Plazzo Braschi)」だ。

通りには時代様式の異なる興味深いパラッツォが並び、なんだかジェノヴァの街も想起しながら、ようやくテアトロ・オリンピコ横のインフォメーションにたどり着いた。

「Vicenza Card 」は15€のカードを買ったのだが、これはちょっと失敗だったかも。15€だと11ケ所の見所の内4ケ所しか入場できない。20€のカードだと全部見ることができるのだ。と知ったのは、翌日バジリカのインフォメーション(チケットセンター)でのことだった

とにかく、先ずは晩年のパッラーディオ設計「テアトロ・オリンピコ」から。近代最初で最古の常設の屋根付き劇場である。古い中世の建物の中にあり、外からは中に劇場があるなんて想像できないほどだ。

アンドレア・パッラーディオ「テアトロ・オリンピコ」(1580-85年)客席部分

客席はかなり急な造りになっていて、ロープに掴まりながら上の段に昇るようになっていた。客席上階にはローマ風の彫刻が並ぶが、他の建物でも多用されているので、パッラーディオって彫刻飾りが好きなのかもね、と思ってしまった

上↑は「テアトロ・オリンピコ」舞台部分。後継のヴィンチェンツィオ・スカモッツィ(Vincenzo Scamozzi、1548 - 1616年)による舞台(テーバイの町並み)は遠近法の錯視を上手く使い、奥になるほど小さく作られている。要はローマのパラッツォ・スパーダの庭にあるボッロミーニのトンネルと同じだね

上↑は「テアトロ・オリンピコ」見学後の出口。この建物の中にあの劇場があるなんて信じられないよね

「テアトロ・オリンピコ」見学を終えた後は、すぐ近くの「パラッツォ・キエリカーティ(市立美術館)」に向かった。こちらもパッラーディオ設計の傑作建築である。

アンドレア・パッラーディオ「パラッツォ・キエリカーティ」(1550年設計、17世紀末完成)



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