碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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NHK「銀二貫」の松岡茉優がいい

2014年06月04日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、NHK木曜時代劇「銀二貫」について書きました。


“あまちゃん銘柄” 松岡茉優を軸に
見届けるのも一興

NHK木曜時代劇「銀二貫」が今週、最終回を迎える。戦国でも幕末でもなく、有名な歴史上の人物も登場しない。仇討ちで父を失った武家の子・鶴乃輔(林遣都)が、縁あって大阪で商人として生きていく物語だ。

父と一緒に討たれるところを救ったのは、通りがかりの寒天問屋主人(津川雅彦)。仇討ちの若侍(風間俊介)に銀二貫(当時の大金)を差し出し、命を買ったのだ。 

このドラマの見どころは2つある。まず、名前を松吉と変えた鶴乃輔が、過去に縛られつつも周囲の人たちの善意に支えられて成長していく姿だ。

そして次が、鶴乃輔を慕いながら、孤児になった自分を育ててくれた養母のためにその思いを封印して生きる真帆(松岡茉優)の健気さである。

松岡の名前に記憶がなくても、「あまちゃん」のGMTリーダーと聞けば顔が浮かぶのではないか。

埼玉の地元アイドル役から一転して、今回は過酷な運命に耐える女を演じているが、この松岡が意外なほどいい。0こうと決めたら曲げない意思の強さと、内に秘めた純情の両方を丁寧かつ繊細に表現しているのだ。 

「あまちゃん」銘柄の若手女優としては、能年玲奈、橋本愛、有村架純など逸材が並ぶが、松岡もまた注目すべき1人となりそうだ。

すべてに決着がつく5日の最終回。松岡を軸に見届けるのも一興かもしれない。

(日刊ゲンダイ 2014.06.03)