碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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今後も楽しみなオムニバス「55歳からのハローライフ」

2014年06月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、NHKの土曜ドラマ「55歳からのハローライフ」を取り上げました。


仕掛け人は「あまちゃん」の敏腕プロデューサー

「いや、リリーさん、そりゃ無理だよ」と、見ながらツッコミを入れていた。先週から始まったNHK土曜ドラマ「55歳からのハローライフ」。
その第1回、「キャンピングカー」である。

55歳で早期退職した営業マン(リリー・フランキー)の夢は、妻と2人でキャンピングカーに乗り、気ままな旅をすることだ。

しかし、今どきの妻たちが夫の身勝手な夢に易々とつき合ってくれるはずもない。ドラマの中でも、妻(戸田恵子)は“自分の時間”を失うことを恐れ、キャンピングカーに異を唱える。

しかも悠々自適の皮算用を変更し、突然始めた再就職活動もうまくいかない。これまた「そりゃそうだよ」の連続だ。

会社と肩書が消滅した“素のまんま”の男がいかに非力か。また自分に対する甘い認識がどれほど世間とズレているか。大森寿美男の脚本はリアルに描き出していく。

さらにキャンピングカーの旅で出会う謎の男(長谷川博己、好演)の存在も効いている。

男とのやりとりの中で、仕事を理由に自分自身や妻ときっちり向き合わずに生きてきたことに気づくのだ。夢の旅と日常という二重構造の見せ方も上手い。

今回の土曜ドラマは一話完結のオムニバス形式。この後も迷える50代男女が登場する。仕掛け人は、「ハゲタカ」「あまちゃん」の敏腕、訓覇(くるべ)圭プロデューサーだ。

(日刊ゲンダイ 2014.06.16)