碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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“家族とは何か”を問う、TBS「家族狩り」

2014年07月10日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、松雪泰子主演のTBS「家族狩り」について書きました。


TBS「家族狩り」
家族のリアルについて問いかける一本

夏クールの連続ドラマが始まった。TBS「家族狩り」は最も早いスタートの1本だ。20年以上前に書かれた天童荒太の原作。しかも連続一家殺害事件というエグイ内容の物語に挑戦している。 

主な登場人物は児童ケアセンターの児童心理司(松雪泰子)、高校の美術教師(伊藤淳史)、そして捜査一課の警部補(遠藤憲一)の3人だ。本来なら無関係なはずの彼らが事件に引き寄せられ、リンクしていく。 

先週の第1回で、伊藤が暮らすアパートの近くで一家心中と思われる事件が発生した。少年が両親と祖父を殺害して自殺したというのだ。しかし遠藤は最近起きた別の心中事件も含め、その“見立て”に納得がいかない。後輩の刑事に言う。「誰かが家族を狩っているんだ。家族狩りだよ」

上々の滑り出しである。何より事件の背後にただならぬものを予感させる。また人物像にも奥行きがある。認知症で徘徊する父と、その介護に疲れた母(浅田美代子)を抱えた松雪。非行に走った娘はもちろん、家庭内に問題がありそうな遠藤。それぞれが十分リアルだ。

「家族」とは理屈だけではない繋がりの他者であり、身近だからこそ厄介な存在でもある。このドラマは凄惨な事件の真相を追うことで、家族について問いかける1本だ。本来は重くて暗い話だが、伊藤の軽みがほどよい緩衝材になっている。

(日刊ゲンダイ 2014.07.09)