碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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水ドラ25『僕の姉ちゃん』黒木華の「平熱の演技」が出色

2022年08月24日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

水ドラ25「僕の姉ちゃん」テレビ東京系

黒木華の「平熱の演技」が出色だ

 

アマゾンプライムビデオで先行配信されていた「僕の姉ちゃん」が、テレビ東京系「水ドラ25」の枠で“地上波初放送”されている。

配信サービスは便利だが、週に1度、深夜のテレビで登場人物たちと顔を合わせる「のんびり感」が、このドラマにはちょうどいい。

大きな物語ではない。父の海外赴任に母も同行した留守宅で暮らす、姉と弟の日常だ。

何事にも辛辣な姉、白井ちはる(黒木華)は三十路のOL。素直な性格の弟、順平(杉野遥亮)は社会人1年生。

夜、仕事から帰った2人が、どうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もない会話を、ゆるく続けていく。

とにかく姉がユニークだ。弟が「好きな男性に対する母性」について問えば、「育ててもない男に、そんなもんあるわけないじゃん」と言い切る。続けて「幻想が好きならオーロラでも見てこいっつーの」と明快だ。

さらに「あんたに彼女ができたとしても、あたし、たぶんその子キライ」。

ある時、社内のボウリング大会に参加した姉。気になっていた男性とハイタッチしたが、「ときめかなかった」と落胆している。「手のひらが合わない人と他の部分を合わせられると思う?」と嘆く残念顔がおかしい。

原作は益田ミリの人気漫画。ベテランOL姉ちゃんのキャラクターが秀逸で、それを完璧に体現してみせる黒木の「平熱の演技」が出色だ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2022.08.23)