碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「わたしの一番最悪なともだち」蒔田彩珠が 繊細な演技で見せていく

2023年09月06日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「わたしの一番最悪なともだち」

テレビドラマ初主演の蒔田彩珠が

繊細な演技で見せていく

 

夜ドラ「わたしの一番最悪なともだち」(NHK)の主人公、笠松ほたる(蒔田彩珠 まきた・あじゅ)は就職活動中の大学4年生。

しかし、なかなか内定が出ない。「素の自分」が没個性的であることは承知しているが、どうしていいのか分からないでいた。

ある日、幼なじみの鍵谷美晴(高石あかり)のキャラクターを借用して書いたエントリーシートを第一志望の会社に送り、通過してしまう。

小学生の頃からクラスのもめ事を鮮やかに解決し、トラブルも柔軟な発想で突破してきた美晴。大学ではダンスサークルの中心メンバーだ。

鬱陶しい存在でありながら、ほたるは「こんな自分だったらいいのに」と思っていたことに気づく。その後、一次面接も突破して次へと進むが、気持ちは晴れないままだ。

このドラマ、いわゆる「なりすまし物語」ではない。ヒロインは仮面をつけて外界と向き合ってしまったことで、逆に自分にとって大切なものが見えてくるのだ。

蒔田は、これまでにNHK朝ドラ「おかえりモネ」でヒロインの妹、「妻、小学生になる。」(TBS系)では堤真一と石田ゆり子の娘を好演。映画「万引き家族」など是枝裕和監督作品の常連でもある。

今回がテレビドラマ初主演だが、ほたるの中にあるモヤモヤも、美晴への複雑な心境も繊細な演技で見せていく。

入社後の展開が今から気になって仕方ない。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2023.09.05)