碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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日刊ゲンダイで、月9ドラマ「真夏のシンデレラ」について解説

2023年09月23日 | メディアでのコメント・論評

 

 

月9ドラマ「真夏のシンデレラ」

歴代ワースト視聴率

大爆死の必然

 

森七菜(22)と間宮祥太朗(30)がダブル主演を務めるフジテレビの〝月9〟「真夏のシンデレラ」の最終回の平均世帯視聴率が6・3%(関東地区・ビデオリサーチ調べ=以下同)だったことがわかった。全10回の平均世帯視聴率は5・7%で、これは18年1月期の「海月姫」の6・1%を下回り、月9史上ワーストとなってしまった。

今季のドラマでは、日曜劇場「VIVANT」(TBS)が最終回で世帯視聴率19.6%と有終の美を飾り、SNS上では、いまだ〝考察〟が続き、続編への期待が高まっているのとは対照的だ。

やはり今時、恋愛ドラマは流行らないのか。それとも恋愛に興味がある若い人ほど配信での視聴が中心だからここまで落ち込んだのか。しかし一番の理由は、何よりもその内容にあったようだ。

メディア文化評論家の碓井広義氏は、「申し訳ないけど、今回はよく5・7%行ったよねと思うくらい、もっと惨敗してもおかしくないダメなドラマだったと思います」としてこう話す。

「まず『真夏のシンデレラ』という設定からして疑問です。今どき、貧しい女の子がお金持ちの男の子に見染められて幸せを掴む〝格差恋愛〟なんて誰も望んでいないでしょう。

今の若い女性は、そうした『シンデレラ願望』を持っている人なんていないですよ。欲しいものは自分で手に入れようという考え方が主流の時代に、これは作り手たちが頭の中で考えたもので、完全に時代を読み間違えていると言わざるを得ない」

また、その描き方にも大いに疑問符がつくという。

「ドラマは物語と登場人物が重要な要素ですが、今回は、その両方ともいかがなものかと。ストーリーは、家庭や学歴に恵まれない、いかにもな3人の女性と、中途半端にセレブな5人の男性によって展開します。

頭のどこかに往年の名作『男女7人夏物語』などがあったのかも知れませんが、ひとりひとりの掘り下げ方が浅く、ドラマ全体が平板で物語に起伏がない。海辺が舞台となっていますが、まるで金魚鉢の狭い世界の中で、8匹のメダカがつつきあってるかのようです。これでは視聴者は引き込まれないでしょう。

さらに登場人物に関しては、森七菜演じる主人公は〝明るくてサバサバした性格〟ですが、恋愛ドラマとしては、憧れや共感を得にくく、感情移入できないキャラクターでした。男性陣もよくなくて、画面に出てくるだけで萎えてしまうような感じでした。いい俳優を使っているのにこれではまるで活かせていない」

長らくドラマを見つめてきた碓井氏はこう言った。

「今回の視聴率を見て、視聴者はいいドラマと悪いドラマはちゃんと見分けるんだなとむしろ安心しました。視聴者はやはりレベルの低いドラマには反応しないんです。恋愛ドラマがダメなのではなくて、ダメな恋愛ドラマがダメなんですよ」

看板の枠に大いにドロを塗る格好になってしまった今作だが、今後の作品でリベンジを目指すしかなさそうである。

(日刊ゲンダイ 2023.09.22)