碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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『らんまん』の寿恵子(浜辺美波)を、「朝ドラ三大女房」と呼びたいワケとは?

2023年09月27日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

『らんまん』の寿恵子(浜辺美波)を、

「朝ドラ三大女房」と呼びたいワケとは?

 

半年間続いてきた連続テレビ小説『らんまん』(NHK)も、いよいよ今週末で幕を閉じます。

関東大震災の前あたりから時間は一気に進み、気がつけば万太郎(神木隆之介)も妻の寿恵子(浜辺美波)も、孫のいる夫婦になっていました。

「寿恵子という存在」の大きさ

ここまで見てきて、つくづく思うことがあります。それは、このドラマにおける「寿恵子という存在」の大きさです。

万太郎はもちろん、見る側にとっても、彼女がいてくれて本当に良かった。いや、助かったということです。何しろ、万太郎という主人公は、良くも悪くも、ずっと同じことを続けてきた人物です。

大学に出入りしようが、それを禁じられようが、また多額の借金を抱えようが、年齢を重ねようが、万太郎がやってきたことはいつも変わりません。ひたすら植物採集を行い、その草花を絵と文で記録し、それが貴重な植物図鑑となっていく。

モデルの牧野富太郎が実際にそうだったのかもしれませんが、ドラマの主人公という意味では、「変化」にとぼしいことは否めませんでした。

その一方で、物語に豊かな「起伏」を与えてくれたのが寿恵子です。

研究に湯水のごとくカネを使う夫のために家計をやりくりし、借金取りたちとの愉快な攻防を繰り返しながら、いつも笑顔を絶やさない。

ついには、自分で「待合茶屋」まで開業してしまった。夫と暮らす長屋ではごく普通の妻であり母でありながら、自分の店では凛とした美しい女将です。

さらに関東大震災の後、万太郎にも知らせず、東京郊外に土地を購入。住居と標本の保存だけでなく、四季の草花と常に接することの出来る環境を整えました。

しかも、それらはカネに無頓着な“坊ちゃん”である万太郎のためだけでなく、自らの意思と選択による、自分の「生きる道」でもあったのです。

寿恵子は「朝ドラ三大女房」の一人に

『南総里見八犬伝』の愛読者である寿恵子は、自分の人生を「冒険」に見立て、夫を支える苦労も困難も常に楽しんできました。

誰をも和ませてしまう笑顔と、ここぞという時の思い切りの良さと勝負勘。その姿が見る側を元気づけ、寿恵子と共に万太郎という“不思議な天才”を応援する気持ちにさせてくれたのです。

『らんまん』における、「もう一人の主人公」だった寿恵子。これはもう、『ゲゲゲの女房』の布美枝(松下奈緒)や、『まんぷく』の福子(安藤サクラ)と並ぶ、「朝ドラ三大女房」と呼んでもいいのではないでしょうか。

そんな寿恵子の魅力を、浜辺さんが全身で表現してくれました。少し早いですが、大きな拍手を送りたいと思います。


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