碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

2015年大晦日のテレビ番組を振り返る

2016年01月10日 | 「北海道新聞」連載の放送時評



北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、大晦日のテレビ番組について書きました。


2015年大晦日のテレビを総括する
紅白は音楽バラエティ?

大晦日の夜は、NHK「紅白歌合戦」と民放各局を往復しながら過ごした。まず今回の「紅白」だが、1年を締めくくる音楽番組というより、正体不明の音楽バラエティという印象だった。

目立ったのは内外のヒットコンテンツの援用だ。アニメコーナーが設けられ、民放各局のヒットアニメのテーマ曲が、その映像と共に流された。映画「スター・ウオーズ」の人気キャラクターも出現した。ただし演出が凡庸で、サプライズ感も有難味も希薄だった。先方は公開中の新作のPRになったが、「紅白」にとってこのタイアップはどんな意味があったのか。

そして、「紅白」では珍しくなくなったディズニー・ショーも披露された。ミッキーのキレのいいダンスは見事だったが、年始客獲得を狙う東京ディズニーランドのプロモーションにしか見えなかったのが残念だ。さらに吉永小百合も登場したが、主演映画「母と暮せば」の宣伝とのバーターが明白で、ややがっかりした。

今後は、あらためて音楽番組としての原点に立ち返るのか。それとも、“何でもあり”の音楽バラエティとして喧騒を続けるのか。「紅白歌合戦」という伝統枠そのものについて、根本から検討する必要があることは確かだ。いずれにせよ、午後9時からの2時間45分で十分かもしれない。

一方の民放は、「史上最大の限界バトル KYOKUGEN2015 魔裟斗VS.山本KID徳郁」(TBS―HBC)、「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND―PRIX2015~IZAの舞~」(フジテレビ―UHB)、そして「THE BEST OF WBA世界S.フェザー級タイトルマッチ&WBA世界L.フライ級タイトルマッチ」(テレビ東京―TVH)と、横並びの格闘技が目立った。

もちろん格闘技ファンが一定数存在するのは事実だが、あまり魅力的とも思えない対戦が視聴者の大晦日の気分にマッチしていたのか、熟考すべきだろう。

それ以外の局は、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 大晦日年越しスペシャル・絶対に笑ってはいけない大脱獄24時!」(日本テレビ―STV)、「くりぃむVS林修!年越しクイズサバイバー2015」(テレビ朝日―HTB)といったバラエティだった。固定ファンもいる定番ではあるが、新鮮味に欠けた企画と言わざるを得ない。

どこか1局くらい、「この1年の政治・経済・文化を、分かりやすくまとめて振り返る」といった内容の大晦日特番があってもよかった。

(北海道新聞 2016年01月08日)


実習授業「テレビ制作」 追い込み中!

2016年01月10日 | 大学























週刊新潮で、NHK「紅白」と石川さゆりについてコメント

2016年01月09日 | メディアでのコメント・論評



また“津軽海峡”で紅白出場の石川さゆりが不満
「新曲出しているんですよ」

2年前の北島三郎、今回の森進一と、NHK『紅白歌合戦』から演歌歌手の“卒業”が続く。一方、それでも君臨し続ける歌手もいて、例えば石川さゆり(57)の通算出場回数は38回。紅組歌手では、和田アキ子に続く歴代2位の記録なのだとか。そんな石川、舞台裏でこんな不満を口にしていた――。

最近、石川が紅白で披露する曲目には一定の法則がある。今回は「津軽海峡・冬景色」で前回は「天城越え」、前々回は「津軽海峡・冬景色」で、その前は「天城越え」……。2007年以降、この2曲の無限ループに陥っているのだ。

「石川には、内心忸怩(じくじ)たるものがあるはずです」

とは、NHK関係者。

「紅白の本番前、司会者と全出演歌手との面談が行われるのですが、その場で石川さんは“もう何回目でしょうね”とか“今年も新曲出しているんですよ”と言っていた。また、昨年10月にリリースしたアニメ『ルパン三世』の主題歌『ちゃんと言わなきゃ愛さない』を引き合いに、“今年はルパンもやりましたし”とアピールしていた」

これについて、上智大学の碓井広義教授(メディア論)は次のように語る。

「よく言ったな、と感じます。これは石川さんだけの問題ではない。紅白に出られるのは嬉しいけれど、まるで懐メロ歌手のように扱われ続けることには、忸怩たる思いがあるという、ある種の代弁だと思います。」


来年歌うのは、新曲? それとも「天城越え」? 

(週刊新潮」2016年1月14日迎春増大号)



毎日新聞で、ペリー荻野さんと「芸能」対談

2016年01月08日 | メディアでのコメント・論評



特集ワイド 
大予測2016 
<芸能>


「真田丸」三谷氏の執念 ペリー氏
「紅白」1年かけ再考を 碓井氏


今年はどんなテレビドラマや音楽が話題になるのだろうか。テレビウオッチャーでコラムニストのペリー荻野さん(53)、メディア論が専門の上智大教授、碓井広義さん(60)が語り合った。【構成・江畑佳明、写真・内藤絵美】

−−まずドラマについて。昨秋から続くNHK連続テレビ小説「あさが来た」は、平均視聴率20%台を保ち、好調です。その理由は何でしょうか?

ペリー氏 時代設定が幕末から明治で「ちょんまげでスタートした初めての朝ドラ」と私は呼んでいます。時代劇好きの私は「やっと来た!」と歓喜しています。

碓井氏 ハハハハハ。

ペリー氏 制作側が朝ドラの本流である「女性の一代記もの」をしっかり研究しているのが大きい。朝ドラは「女性の一代記もの」と「自分探しもの」があります。1990年代以降の視聴率低迷期は「自分探し」が多かったのですが、本流は「おしん」(83〜84年)に代表されるように激動の時代を生き抜く「女の一代記」。最近では「カーネーション」(2011〜12年)や「花子とアン」(14年)がありました。

碓井氏 主人公のモデルは豪商・三井家のお嬢さんで、実業家として日本女子大学設立に尽力した広岡浅子。物語の軸がしっかりしているから、安心して見ていられる。それと時代設定が幕末から明治という大激動期である点が大きい。現代は明日が見えにくい閉塞(へいそく)感が漂っていますが、現代と比べものにならないほどのパラダイムシフト(社会構造の大転換)があった時代を、ひとりの女性がどう生き抜いたか、視聴者は参考にしたいのかもしれません。

ペリー氏 舞台が関西というのもいい。あの時代を新鮮な角度から見られますから。

碓井氏 同感です。幕末維新ものは、江戸を舞台にすると武家中心の話になってしまう。武家だとしきたりに縛られて面白くありませんが、「あさ」は大阪の商人たちが自由で伸び伸び活躍します。

ペリー氏 また、細かいところでは「あまちゃん」(13年)で主人公の「じぇじぇじぇ」という決めぜりふがあったように、「あさ」でも「びっくりぽんや!」があって、これもヒットの「鉄板要素」。まさに「あさ(朝)が来た!」という感じです。

−−春からの朝ドラは「とと姉ちゃん」です。

ペリー氏 生活総合誌「暮(くら)しの手帖(てちょう)」を創刊した大橋鎮子をモデルに描かれます。これも一代記もの。期待したいですね。

−−民放では「下町ロケット」(TBS系)が好評でした。

ペリー氏 「このドラマは応援せねばいかん」という気持ちになりましたよね。

碓井氏 さすがと思うのは「ドラマの三要素」すべてをうまく詰め込んでいたことです。物語の面白さ、キャスティング(配役)がよかった。演出でも、登場人物のアップから、3000人の社員の整列という壮大なシーンまで画面にすきがなかった。「きちんとドラマをつくれば、視聴者は見てくれる」と証明してくれました。今年も手の込んだドラマを見たい。

−−今年ブレークしそうな若手の俳優はいますか?

ペリー氏 男性では菅田(すだ)将暉さん。昨年5〜8月放映の「ちゃんぽん食べたか」(NHK)ではさだまさしさんの青年期をうまく演じていて好感が持てました。映画「ピンクとグレー」が9日に公開されますが、今後も出演作が続きます。

碓井氏 女性では昨年のポカリスエットのCMに出演した中条あやみさん。うかがい知れない雰囲気があって、期待大です。2月公開予定の映画「ライチ☆光クラブ」ではヒロイン役で登場します。

−−大河ドラマは三谷幸喜さん脚本の「真田丸」です。

ペリー氏 試写会で初回を見たのですが、三谷さんの執念を感じました。三谷さんが大河を手がけるのは「新選組!」(04年)以来。数年前「今度大河に関われるなら真田をやりたい」とおっしゃっていたんです。

碓井氏 へえ。僕は信州の出身なので、非常に関心が高い。が、やはり池波正太郎さん原作のドラマ「真田太平記」(NHK、85〜86年)のイメージが刷り込まれています。比べる必要はないとわかっているのですが……。三谷さん的なギャグより、男たちの骨太なドラマを見せてほしい。

ペリー氏 試写会を見た私のイチ押しは、昌幸(幸村の父)役の草刈正雄さん! 「真田太平記」で幸村を熱演していました。このドラマで昌幸役だった丹波哲郎さんが乗り移ったみたい。視線をクールにすーっと動かす所作とか。もう、感激。

碓井氏 それは楽しみです!

−−音楽界はどうでしょう。昨年末の紅白歌合戦は視聴率が低迷しましたが。

碓井氏 かつては「1年を振り返る音楽番組」でしたが、昨年は「ディズニーから番組宣伝まで何でもありの音楽バラエティー番組」になってしまった。音楽番組として何をしたいのかわからない。今年1年かけて紅白のありかたを考え直してほしい。以前のような午後9時スタートの2時間45分番組で十分な気もします。

−−懐メロが目立ちました。今年ヒットする兆しはありましたか。

ペリー氏 目玉が乏しくサプライズも少なかったのは残念でしたが、AKB48は既に国民的歌手になった感じがしました。E−girls、初出場の乃木坂46もそうですが、数多くの若い女性たちが歌って踊る路線は今年も続くのでしょう。お母さん的視点ですが、好感が持てますから。

碓井氏 アニメ番組「ラブライブ!」の声優で結成したμ’s(ミューズ)も女性グループですが、最近の音楽界ではアニメソングの存在が大きいと改めて感じました。

ペリー氏 演歌からは2人が初出場しました。三山ひろしさんは、多くの苦労を乗り越えているので歌に味がありました。山内恵介さんも新鮮でした。今年は演歌の盛り上がりに期待したいですね。

−−バラエティー番組の勢いは変わりませんか。

ペリー氏 昨年は「マツコ(・デラックス)時代」と言ってもいいくらいでした。

碓井氏 マツコさんには知性と品性を感じるし、確かに面白い。視聴者にとっては「この番組を見て損はしない」という最低保証があります。でも制作側がタレントの個性にばかり頼る姿勢はいかがなものでしょうか。

ペリー氏 先日、浅草の劇場を中心に活動している芸人さんたちを紹介する番組を見ました。普段テレビでは見ない方々ですけど、とても面白くて。今年は、こういう人たちが出てくるバラエティー番組がもっとあってもいい。

碓井氏 全く同感ですね。今年はタレント力だけではなく、制作側の番組構成力がより問われると思います。

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ぺりー・おぎの
 1962年愛知県生まれ。時代劇の主題歌を集めたCD「ちょんまげ天国」をプロデュースするなど、時代劇をこよなく愛す。著書に「ちょんまげだけが人生さ」「バトル式歴史偉人伝」など。
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うすい・ひろよし
 1955年長野県生まれ。慶応大卒。テレビ制作会社のプロデューサー、東京工科大教授などを経て現職。新聞コラムでの辛口論評で知られる。著書に「テレビの教科書」など。


(毎日新聞 2016.01.06)


撮影:内藤絵美(毎日新聞)

加島祥造さんに、合掌

2016年01月08日 | 本・新聞・雑誌・活字



1月6日に、加島祥造さんが亡くなりました。

加島さんの本は何冊も読んできたし、週刊新潮の書評で何度も取り上げさせていただきました。

どの本も、読むと、少しだけ気持ちが軽くなったものです。

92歳の大往生かもしれませんが、いなくなってしまったこと、新しい本が読めなくなったことは寂しいです。

感謝をこめて、合掌。


以下は、書いた書評のいくつかと、このブログに書いた文章です。

加島祥造 『私のタオ~優しさへの道』 
筑摩書房 1680円

詩人で翻訳家の著者が老子に関する最初の本を出してから17年。“老子をめぐる思索の旅”は86歳の今も続いている。本書のテーマは『老子』が示す「優しさ」「柔らかさ」、さらに「弱さ」だ。閉塞社会、不安の時代を生きるためのヒントが見つかるかもしれない。
(2009.12.10発行)


加島祥造 『ひとり』 
淡交社 1680円

雄大な中央アルプスを背に田園風景が広がる信州・伊那谷。著者がこの地に移り住み、独居を始めて四半世紀が過ぎた。89歳になった現在、「老子」を通じての思索はさらに深まり、その言葉は透明感を増している。「求めない、受けいれる」生き方がここにある。
(2012.05.11発行)


加島祥造 『アー・ユー・フリー? 自分を自由にする100の話』 
小学館 1728円

現在91歳になる著者が、信州・伊那谷に移り住んでからの25年間に行った講演のセレクト集だ。「よりよく生きるということは、自分に正直に生きることだ」といった言葉を含む100話が並ぶ。全てに共通しているのは「自由」への思い。老子をひも解きたくなる。
(2014.2.27発行)


加島祥造さんの『小さき花』

『タオ 老子』などで知られる加島祥造さん。最新刊『小さき花』(小学館)が出た。

見開きページの、右に言葉、左に書。文と画が加島さん、そして書は金澤翔子さんの作品だ。

米寿[88歳]の年を迎えた“伊那谷の老子”は、ますます澄み切っていく。この本の中の言葉は、シンプルだからこそ、強い。書もまた、眺めていて、飽きることがない。

楽シサハ
身ノ
自由ナル
トコロニアル

いま在るがままでいればいい
いちばん好きなことを
するがいい
いま要るものだけ
持つがいい
――加島祥造『小さき花』




(2010年12月15日)


詩人・加島祥造のドキュメンタリーと「巨匠」

いい番組を見た。

NHK ETV特集
「ひとりだ でも淋(さび)しくはない~詩人・加島祥造90歳~」


信州・伊那谷の自然の中で暮らす詩人・加島祥造さん(90歳)の言葉が、この時代をどう生きるか悩める人々から注目されている。ベストセラーとなった詩集「求めない」、「受いれる」の中で加島は言う。会社や家庭の中で求めすぎる心を転換してバランスをとり、ありのままの自分を受け入れるとずいぶん楽になると。

もともと加島さんは横浜国大の英文学教授だった。ノーベル文学賞作家ウィリアム・フォークナーやアガサ・クリスティの数々の翻訳で名声も獲得。しかし、なぜか心は満たされず、逆に息苦しさを感じて生きていた。

そんなとき、野山で自由に遊び回っていた幼少期の頃の感覚を思い出せという内なる声が聞こえた。60歳になった加島は、我慢の限界に達し、社会から飛び出す。そして、たどり着いたのが伊那谷だった。その大自然に触れるうち、自分の中に可能性を秘めた赤ちゃんのようなもう一人の自分、いわば「はじめの自分」がよみがえった感覚を感じたという。

その後、伊那谷で暮らすうちに、なぜか詩が湧いて出てき、また、絵も描けるように変わっていった加島。精神のバランスも徐々に取れるようになっていった。

そんな加島さんの元を訪ねるようになったのが、政治学者の姜尚中(63歳)。順風満帆に見える姜だが、実は、4年前に長男を26歳の若さで亡くした。それがきっかけとなり、60歳を過ぎて、このままの人生を送っていいのか、何が自分にとっての幸せなのか考えるようになったという。そんなときに偶然出会ったのが加島さんだった。それ以来、たまに伊那谷を訪れて、加島とのやりとりを繰り返している。

わがままと言われようと、ただ命に忠実に向き合ってきた加島。番組では人生の晩年をどう生きるか、今もあがき続ける90歳の日々を見つめる。


加島さんの本はすいぶん読んできた。とはいえ、共感しながらも、簡単にその境地に近づけるはずもない。

番組で見る最近の加島さんは、ますます遥かな道を歩んでいる、という印象だ。亡くした”大切な女性”の話も含め、「ああ、加島さんらしい90歳だなあ」と思いながら、なんだか嬉しかった。

見終わって、いい気分でいたので、エンドロールをぼんやり眺めていた。NHK福岡の制作だったが、ディレクターの名前は見逃してしまった。けれど、「編集 吉岡雅春」という文字は目に入ってきた。

吉岡さんは番組編集者だ。知る人ぞ知る、天才的編集者。私もお世話になった、テレビ界の大先輩だ。今は、主にNHKスペシャルで、その名を見ることが出来る。

30年前、新人のアシスタント・ディレクターとして、吉岡さんに初めて会った。その際、先輩のディレクターから、吉岡さんのニックネームが「巨匠」であることを教えられた。出会った時から、すでに巨匠だったわけだ。そして私がディレクターになってからも、何度もお世話になった。

取材が不十分な時、その指摘は厳しく、私はすごすごと「追撮」に出かけた。編集作業に少し疲れたり、私が煮詰まったりすると、吉岡さんはキャッチボールをしようと言う。黙ってボールをやりとりしながら、こちらも打開策を考えるのだ。

巨匠は、今でも、ディレクターとキャッチボールをしているのだろうか。

(2013年10月20日)


“何でもあり”の音楽バラエティーだったNHK「紅白」

2016年01月07日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今回は、NHK「紅白歌合戦」について書きました。


NHK「紅白歌合戦」
夜9時からの2時間45分で十分かもしれない

「紅白歌合戦」は本来、その年のヒット曲と人気歌手が集合する大型音楽番組だ。しかし今回、並んだ出場者に違和感を覚えた視聴者は多かったのではないか。

特にラストの近藤真彦も含め、白組26組のうち7組がジャニーズ系というのは異様だ。井ノ原快彦も「あさイチ」での貢献があるとはいえ、10年連続でジャニーズ事務所からの司会者起用は新鮮味に欠けた。

また、あちこちのヒットコンテンツの援用も今回の特色だ。まず、民放各局のヒットアニメのテーマ曲が歌われた。次に映画「スター・ウォーズ」の人気キャラクターも出現。ただし演出が凡庸で、サプライズ感もありがたみもありゃしない。先方は新作のPRになったが、「紅白」にとってどんな意味があったのか。

加えて恒例のディズニーショーだ。ミッキーのキレのいいダンスは見事だが、年始客に向けた東京ディズニーランドのプロモーションにしか見えなかった。そして、さらなるダメ押しが吉永小百合で、映画「母と暮せば」の宣伝とのバーターが露骨でゲンナリした。

今回の「紅白」は、音楽番組というより“音楽バラエティー”だった。今後は、本気で音楽番組としての原点に立ち返るのか。それとも、“何でもあり”の音楽バラエティーとしてカオスを深めていくのか。どちらにしても、夜9時からの2時間45分で十分かもしれない。

(日刊ゲンダイ 2015.01.06)


【気まぐれ写真館】 新校舎建設、進む

2016年01月07日 | 気まぐれ写真館


新春ドラマ放談 (3)

2016年01月06日 | メディアでのコメント・論評


オリコンが発行するエンタメ専門誌「コンフィデンス」。

その新年特別号に、「新春ドラマ放談」のタイトルで座談会が掲載されました。

この座談会で、産経新聞記者の三品貴志さん、ライターの吉田潮さんとご一緒しています。

以下はそのパート3。

10月期のドラマが対象です。


新春ドラマ放談
15年注目ドラマ振り返り&16年の期待の若手
ヒットドラマ・俳優ブレイクのカギを探る!
<パート3>



後半はバラエティ豊かな力作ぞろい
2016年のドラマにも期待


――10月期は『下町ロケット』の他にも力作が多かった印象ですね。『あさが来た』もスタートしました。

三品氏 『あさが来た』は、やはり正統派で面白いですね。波瑠はそれまで、ミステリアスだったり清楚な役が多く、お転婆な役柄が合うのかという危惧もあったのですが、意外に明るいコメディタッチもいけると証明してみせた。それと、やはり出るだけで画面の質が変わる宮あおいの存在感。このヒロイン2人によって、作品が重層的になっています。

碓井氏 少なくとも実話ベースですから、お話も安心して観ていられる。財閥のお嬢さんが幕末からどう流転し成長するのか、という下世話な興味もありつつ。まだ女優としてはこれからという波瑠のたどたどしさ、素人っぽさが、両替商の若いおかみさんや炭鉱主の責任者といった場における初々しさに、うまく自然に重なるんですよね。非常に効果的なキャスティングだったと思います。

吉田氏 女性が朝ドラにはまる要因の1つに、ちょっとダメな男の存在があるんですよ。『花子とアン』での吉田鋼太郎のような。今回は、江本佑と玉木宏というダブルダメ男、さらに風吹ジュンと萬田久子、ダブルヒロインだけでなく、そのへんどこからでも美味しく食べやすく構築してあるなと思います。

――『破裂』『サイレーン』というなかなか刺激的な作品もありました。

吉田氏 『破裂』については、内容がセンセーショナルかつリアルでしたね。介護、高齢化、医療費などのテーマ立てが、どこかでこれって厚労省の本音なんじゃないのという部分も感じられて。でも残念ながら、一般にはあまり話題にならなかった。

碓井氏 原因としては、登場人物に感情移入しにくいというのはあったかもしれません。観ていてスカッとするわけでもなく、正義の味方がいる勧善懲悪でもない。でも全体のバランスは良かったですよね。奇妙な味ではありますが。

三品氏 役者の濃さは見応えありましたが、ずっと緊張して観ていないとお話がわからなくなるようなところはありましたね。そういう意味では、『サイレーン』は分かりやすいというか。『ファーストクラス』以降の菜々緒のケレン味がついにここで確立した感がありました(笑)。

吉田氏 菜々緒の禍々しさが非常に印象的でしたね。せっかくの松坂桃李と木村文乃が霞んでしまうほど。あと、この期で触れておきたいのは『おかしの家』ですね。最初は、ほっこり癒し系で下町情緒を映して終わりだったらつまらないなと思っていたら、全然そうじゃなかった。ふんわりどころじゃなくて、ドラマの必然で人が死んだりもする。描かれている要素を書き出してみると、けっこう社会派な面もある。良い意味で裏切られた作品でした。

碓井氏 私は『釣りバカ日誌 ~新入社員 浜崎伝助~』が良かったですね。実は、映画も原作マンガも大好きなので、ダメなら叩いてやろうと待ち構えていたのですが(笑)、アンチに回らずに済みました。設定を新入社員時代にしたのも大正解。

三品氏 濱田岳の芝居のうまさ、憎めない愛らしさはもちろん、ハマちゃんが今度はスーさんを演じるという構造はうまかったですね。出てくる人が誰も傷つかない、こういうドラマは今なかなか少ないですし。それに、広瀬アリスが良い存在感を放っていますね。なんというか、落ち着きと暖かみを感じる女優さんだと思います。

――駆け足で2015年のドラマを振り返ってきましたが、では2016年のドラマに期待するのは、どういった点でしょうか。注目の役者さんなども含めて最後に教えてください。

三品氏 2016年は、やはり良質なコメディをもっと観たいですね。『デート』や『リーガルハイ』『民王』のような。明るいけど、ちょっとヒネってあるような作品を期待したいです。役者でいうなら、例えば菅田将暉と松岡茉優の共演するコメディとか、どこかで実現してほしい。志尊淳、高杉真宙、芳根京子といった『表参道高校合唱部!』出演メンバーのその後も注目しています。

吉田氏 群像劇が時々疲れてしまうので、力のある人たちが5人くらいで空気感をきちんと作っていくような、大人の鑑賞に耐えるようなドラマが観たいです。真飛聖とかをキャスティングしてもらって(笑)。注目の若手は森川葵などたくさんいますが、以前の『ごめんね青春!』や『表参道高校合唱部!』もそうかもしれませんが、若手の登竜門になるようなドラマ枠がもっと増えるといいなと思います。そういう意味でも、15分枠や30分枠のドラマがあってもいいのにとも思う。

碓井氏 大人たちが普通に観られるような、もっとリアルなドラマがあってもいいようには思います。50、60代はテレビの優良な視聴者ですから。無理に恋愛モノや企業モノとかじゃなくても、等身大の日常も十分スリリングだと思うんですよね。それはさておき、注目しているのは中条あやみ、山崎紘菜といったあたり。この2人は憶えていていい名前だろうと思います。

吉田氏 そうそう、ドラマと関連する希望として。ドラマのCMにキャストが出てくるパターン、最近すごく多くないですか? スポンサーさんの意向なのかもしれませんが、あれは逆に視聴者の集中力を削ぐことおびただしい。ぜひ2016年は減らしてほしいです(笑)。


【3人が注目した作品/15年10月期】

碓井氏
『下町ロケット』(TBS系)
『破裂』(NHK)
『コウノドリ』(TBS系)

三品氏
『あさが来た』(NHK)
『釣りバカ日誌 ~新入社員 浜崎伝助~』(TX系)
『サイレーン』(CX系)
吉田氏
『破裂』(NHK)
『偽装の夫婦』(NTV系)
『おかしの家』(TBS系)

(オリコン「コンフィデンス」2016新年特別号)

新春ドラマ放談 (2)

2016年01月05日 | メディアでのコメント・論評



オリコンが発行するエンタメ専門誌「コンフィデンス」。

その新年特別号に、「新春ドラマ放談」のタイトルで座談会が掲載されました。

この座談会で、産経新聞記者の三品貴志さん、ライターの吉田潮さんとご一緒しています。

以下はそのパート2で、4月期と7月期のドラマが対象。





新春ドラマ放談
15年注目ドラマ振り返り&16年の期待の若手
ヒットドラマ・俳優ブレイクのカギを探る!
<パート2>


朝ドラより朝ドラらしいヒロイン
大河より大河らしい日曜劇場


――4月期では、全員一致としては『64』が挙がっています。

三品氏 実はそこまで手放しで絶賛というわけではないのですが、ピエール瀧の存在感と、井上剛の演出の力を改めて感じました。

碓井氏 ギリギリと雑巾を絞るような、非常に緊迫感のある演出でしたね。ゴロンと横になって眺めることができない。あまちゃんのピエール瀧とは違う迫力が見事で、大画面テレビを縦に埋めちゃう存在感は、『帝都物語』での嶋田久作のインパクトを継ぐものだったと思います(笑)。

吉田氏 硬派というと軽く聞こえるかもしれませんが、あの昭和の時代感、空気感がきちんと表現できていて、素晴らしいと思います。段田安則さんの演技、特に子どもを誘拐され、震える手で10円玉を公衆電話に投入するシーンとか、目がクギづけでした。ピエール瀧の汗とか、ああこれきっと本物の汗だと思わせる。そういう細部へのこだわりにも惹かれました。

――本来なら『天皇の料理番』はこのクールの代表作だと思うのですが。

碓井氏 それはもちろん、ちゃんと作ってありましたね。さすがTBSだな、日曜劇場だな、と。優等生的な作品。

三品氏 それこそ、TBSのドラマ制作力の高さを改めて世間が認識したという意義は大きかったかもしれません。佐藤健も、意外に愛嬌のある一面を見せてくれて。

吉田氏 ただ、あえて私たちが褒めなくても、もう十分に評価されていますから(笑)。この期では個人的に『REPLAY&DESTROY』が印象的でした。もうね、セリフの展開についていけなくて、自分が歳をとったというのを痛感させられた。おばさんついていけない(苦笑)。小林涼子など若手の実力派も出ていて、興味深く観ていました。

――続いて7月期。『表参道高校合唱部!』『民王』『恋仲』といった話題作がありました。

碓井氏 この夏はリアルな政治でも総理が話題になることが多かったし、そういう意味でも『民王』でしたね。おかしかった。そりゃ、そんなに深く考えてやってるわけではないんでしょうけど、俗物総理とバカ息子の中身が入れ替わるようなドタバタコメディを放映すること自体が、うまく社会批評にもなっているという。

吉田氏 実は『表参道高校合唱部!』にはさっぱり反応できなかったんです、残念ながら。あー慈英さん歌うまいんだ、堀内敬子さんも声がきれいとか、神田沙也加さんも城田優さんも歌うまいなーとか。そういう反応のみ。個人的に合唱という文化がちょっと苦手だということが大きかったかもしれない。

碓井氏 逆に、昔ながらの合唱をドラマの軸に据えたところが挑戦だったように思います。たとえどんなにヘタでも、合唱そのものは人の気持ちを打つ。彼らが肉体で声を出して歌うだけで、おじさんちょっと泣けてくるという(笑)。芳根京子さんも、久々に良い意味で田舎っぽい子が出てきたなと思います。実際は東京の方だそうですが、うまくこういう子が伸びていけばいいなと。

三品氏 比較するのもおかしな話ですが、時期が一部重なっていた『まれ』よりもヒロイン像が朝ドラっぽくて、朝ドラよりも朝ドラらしい、しっかりしたドラマでした。ちょうど同じ頃に『天皇の料理番』が『花燃ゆ』より大河ドラマ的だという評判もよく耳にしましたが、これらは2015年の皮肉でしょうね。

碓井氏 『恋仲』については、セリフや恋愛模様が既視感ありまくりであらゆる原稿で斬りましたね(笑)。でも、若者たちにとってはそこが新鮮だったという声も聞きます。

三品氏 若い世代に受けたという事実はきちんと捉えておかなければ、と思いますね。SNSでの話題性が突出していて、リアルタイム視聴に若者が戻ったとされています。序盤では、あだち充作品との類似なんかも指摘されていましたが、そういうベタなネタが一周まわって新しいということなのでしょうか。

吉田氏 うーん。若い子にとっては、本当にドラマそのものを楽しんでいたというより、むしろネタ消費に近かったのではないかという感触があります。ドラマのシーンを真似て動画サイトに投稿するとか。ちょうど、“壁ドン”や“あごクイ”などがネタになるのと同じような感覚ですね。


【3人が注目した作品/15年4月期】

碓井氏
『アイムホーム』(EX系)
『64』(NHK)
『不便な便利屋』(TX系)

三品氏
『天皇の料理番』(TBS系)
『64』(NHK)
『LOVE理論』(TX系)
吉田氏
『64』(NHK)
『REPLAY&DESTROY』(TBS系)
『天使と悪魔』(EX系)


【3人が注目した作品/15年7月期】

碓井氏
『表参道高校合唱部!』(TBS系)
『民王』(EX系)
『初森ベマーズ』(TX系)

三品氏
『表参道高校合唱部!』(TBS系)
『恋仲』(CX系)
『初森ベマーズ』(TX系)
吉田氏
『探偵の探偵』(CX系)
『民王』(EX系)
『エイジハラスメント』(EX系)


・・・続く・・・

(オリコン「コンフィデンス」2016新年特別号)



新春ドラマ放談 (1)

2016年01月04日 | メディアでのコメント・論評



オリコンが発行するエンタメ専門誌「コンフィデンス」。

その新年特別号に、「新春ドラマ放談」のタイトルで座談会が掲載されました。

この座談会で、産経新聞記者の三品貴志さん、ライターの吉田潮さんとご一緒しています。

放談ということで、かなり自由な発言、乱暴な話もしていますが(笑)、どうぞ、ご海容ください。


新春ドラマ放談
15年注目ドラマ振り返り&16年の期待の若手
ヒットドラマ・俳優ブレイクのカギを探る!

Part.1では情報番組やドラマプロデューサー、ドラマやアーティストに詳しい有識者へのアンケートをもとに16年期待の若手を紹介した。Part.2では、日頃からドラマをはじめテレビ関連の記事執筆で活躍する3名に登場していただき、15年の振り返り&16年の展望を語ってもらった。

(プロフィール)
碓井広義氏(上智大学文学部新聞学科教授)
慶應義塾大学法学部卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加。20年にわたり番組制作を行う。慶應義塾大学助教授、東京工科大学教授を経て2010年より現職。専門はメディア論。著書に『テレビの教科書』ほか

三品貴志氏(産経新聞記者)
2005年に産経新聞に入社。静岡支社あんどを経て、2001年から文化部に配属。主にテレビ・ラジオ業界を取材・執筆

吉田潮氏(ライター)
編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて連載「TVふうーん録」を開始。おもな著書に『TV大人の視聴』(講談社)、『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など


境界線を揺さぶる作品群と
TBSの底力を感じた2015年


――15年のドラマを振り返ってみて全体で感じることはありますか。終盤にきてTBSの『下町ロケット』が大きな話題になったのが印象深くはありますが。

碓井氏 日曜劇場のタイトルを『流星ワゴン』『天皇の料理番』『ナポレオンの村』『下町ロケット』と4本並べてみた時に、1年を通じてドラマ制作力という面でTBSが非常に踏ん張ってくれていることは実感しますね。技術的なところも含めて、日本のドラマの質をキープしてくれている。いわばドラマ全体の底割れを防いでくれているのではないかと思うほど。世間ではドラマ離れ云々と言われてはいても、ちゃんと作れば、ちゃんと観てくれるじゃないの、というのを示した意義は大きい。

三品氏 平均視聴率で言えば、2ケタで御の字というのが、いよいよ普通になってきています。これは20時台くらいの浅い時間のドラマが減ってきている理由でもありますよね。深夜以外で新たな時間帯を開拓するなり、放映時間をもっと短くするなりといった対応も考えていくべき時期なのかもしれないと感じた1年でもありました。

吉田氏 数字が出ないのはある意味、もはや仕方がない状況ですよね。作品を評価する際に、視聴率という軸だけではライフスタイルの変化に対応できていないわけですから。録画視聴への評価をどうにか作品の評価に反映する手段を持つべきだとは思います。『下町ロケット』をはじめ、TBSがドラマの底を支えているというのも確かですが、一方で、テレビ東京が、実験的だったり、挑戦的な作品を投入することで、何らかの風穴をあけようと努力していることも注目しています。

碓井氏 『下町ロケット』では、キャスティングも画面も、隅から隅まできちんと作り込んでいる。かけるところにはお金も手間もかけています。本来、当たり前にやるべきことなんでしょうが、そこがきちんと成立していることが逆に今は新鮮であり、頼もしく感じてしまう。それと、1クールに2つのストーリーを圧縮していて、スピード感が凄かったじゃないですか。あれは『あまちゃん』以降、15分の長さでお話がどこまで展開できるのかを知ってしまった視聴者にとっては、とても心地良い凝縮感だったんだと思います。そういう意味では、1時間枠のドラマにこだわらず、時間帯も含めて新しいフォーマットを模索する試みも必要でしょう。

――なるほど。それでは、クールごとに印象に残った15年作品を振り返っていこうと思います。事前にお願いしたチェックリストでは、1月期では皆さん共通して『問題のあるレストラン』を挙げていらっしゃいます。これは、キャスティングの力も大きかったように思うのですが。

三品氏 真木さんはもちろん良かったのですが、特に二階堂ふみ、高畑充希、松岡茉優といった若手の女優さんたちの活躍が目立っていて、かつそれぞれの既成のイメージと少しズレているのが印象的でした。違った一面が観られた。男性社会の中で女性たちの抱える鬱屈を坂元裕二さんが非常にキメ細かく描いていて、さすがだと思いました。

吉田氏 安田顕さんの女装とかもなかなか完成度高かったですしね(笑)。実は菅田将暉さんも出ていたり。今振り返って思えば贅沢なキャスティングでした。個人的には大好きなドラマで、もう初回から泣きまくりでした。でも内容的には若い女性には重くて観ていられないという意見も意外に多かったようですね。実際に現実でそれに近い光景を観ていたら、改めてドラマで観なくても、という気分はわからなくもないのですが。

碓井氏 確かに、ある程度お客さんを絞っている印象はありました。でも、今どき老若男女にまんべんなく受け入れられるドラマを成立させるのは困難ですし、選択も重要ということだと思います。その意味でも突き抜けている感じはしましたね。女性が働いている現場に近いリアルさはしっかりありました。

――皆さん共通して挙げておられる作品がもう1つ、『山田孝之の東京都北区赤羽』です。

碓井氏 1つの挑戦として非常に面白かった。どこまでがフィクションで、どこからが実像なのかさっぱりわからない。でもそのわからなさも含めて、それでもドラマなんだな、という認識を提示していたんじゃないかなと思います。極端な話、情報番組でもグルメ番組でも、役者がいてカメラが回っていたらドラマなんだと。おそらくご本人も、演じている山田とリアルな自分をわざとズラしながらやっている。相当な高等戦術だと思います。これもまた、ちょっと不思議な山田さんだから成り立つ作品だと思います。

吉田氏 しかも、これを観ても赤羽に行きたいとも特にこちらに思わせないという(笑)。でも、全部見終わって、いったいこれ何だったんだろう、と心にモヤモヤを残すんですよね。改めて、テレ東の自由さ、冒険心も感じました。枠を越えようという意志のようなものを感じます。

三品氏 境界線が分からないという意味では、ある種、15年の特徴的な作品でもありますね。『LOVE理論』や『太鼓持ちの達人~正しい××のほめ方~』『廃墟の休日』など、バラエティなのかドキュメンタリーなのかドラマなのか枠が判然としない。これらも軒並みやはりテレ東さんなんですが(笑)。でもフジテレビの『She』などもフェイクドキュメンタリー風ですし。ある層の視聴者が純粋なフィクションに飽きてきているのかもしれない。

碓井氏 僕らはドキュメンタリーとドラマの境界が云々って気にしますけど、特に若い視聴者にとっては、そんなの関係ないことなんでしょうね。こんな変なのやってるよ、というSNS絡みのネタになるかどうかだったり、観たことのない面白いコンテンツかどうかが重要であって。枠組みにはこだわらない。


【3人が注目した作品/15年1月期】

碓井氏
『問題のあるレストラン』(CX系)
『山田孝之の東京都北区赤羽』(TX系)
『流星ワゴン』(TBS系)

三品氏
『デート 〜恋とはどんなものかしら〜』(CX系)
『問題のあるレストラン』(CX系)
『山田孝之の東京都北区赤羽』(TX系)
吉田氏
『怪奇恋愛作戦』(TX系)
『デート 〜恋とはどんなものかしら〜』』(CX系)
『山田孝之の東京都北区赤羽』(TX系)

・・・続く・・・

(オリコン「コンフィデンス」2016新年特別号)

【気まぐれ写真館】 信州・安曇野 2016年正月

2016年01月04日 | 気まぐれ写真館


女性セブンで、「あさが来た」の“新次郎”について解説

2016年01月03日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「女性セブン」最新号に、NHK朝ドラ「あさが来た」に関する特集記事が掲載されました。

タイトル「はじまりは今日も新次郎」。

ヒロイン・あさの夫である新次郎にスポットを当てたものです。

記事全体は本誌をご覧いただくとして、私の解説部分は以下の通りです。


上智大学文学部の碓井広義教授(メディア論)は、「女性を取り巻く環境と時代の変わり目をうまく描いていることが、新次郎の魅力を際立たせている」と語る。

「江戸時代までの男性は、<台所を中心に夫や家族を支え、男性に対して2歩も3歩も引いた控えめな女性>を理想としていました。男女平等といわれて久しいですが、今も、もしかしたらそういう本質的な部分は残っているかもしれない。

でも、新次郎には“女はこうでなくてはならん!”というステレオタイプの女性観がありません。あさが旧来の女性の生き方からはみ出してのびのびできるのも、すべて新次郎のおかげなんです。あの夫がいたからこそ、起業もできた」

「彼はのんびりしているけれども、リーダーになって仕事をさせたら、きちんとこなせる力量がある。それにも関わらず、あさを応援しているのが奥深い。“頼りない”のではなく、かわいいあさが思う存分羽ばたける環境を整えてやれる度量があるんです。

孫悟空じゃないけれど、おてんばなあさは、新次郎の手のひらの上で飛び回っているんですよ」(碓井教授)


(女性セブン 2016年1月7日/14日合併号)





【気まぐれ写真館】 謹賀新年2016

2016年01月01日 | 気まぐれ写真館


本年も
どうぞよろしく
お願いいたします

2016年1月1日
碓井 広義

大みそかは「紅白」

2016年01月01日 | メディアでのコメント・論評



2015年の大みそか。

いつものように、信州の実家で、母を囲んで、私と妹と弟と、それぞれの家族も集まっての年越し。

今年もまた、この「いつものように」が出来ることに感謝です。

テレビは、子どもの頃から変わらず「紅白歌合戦」。

半世紀以上も続いている習慣ですから、定点観測もここに極まれりですが、取材の〝予約〟も2件入っているので、メモを取りながらの観戦でした。

AKB48のところで、前田のあっちゃんと大島優子が登場。

現在のメンバーと一緒に歌って踊っているのを眺めていて、その懐かしい〝絵柄〟に、涙が出そうで困りました(笑)。

「紅白」全体の感想は、あらためて新聞と雑誌で、公表させていただきますね。