内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

中心と周縁(6)― 両者を隔てかつ繋ぐ中間領域という媒介項

2015-11-07 06:48:14 | 哲学

 「中心と周縁」というテーマに限ったことではないが、ある問題を考えるときに、その問題を構成している諸概念について予め規定しておかないと、無用で不毛な混乱をその後の議論の中に引き起こしかねない。それらの混乱を避けるための基本的手段の一つは、それらの概念それぞれに議論の出発点で一応の定義を与えて置くことである。
 しかし、その混乱回避のための、ある意味でもっと簡単で、かつ思考のダイナミズムを活性化しやすい方法がある。それは、テーマとなる諸概念の価値を、それらと何らかの仕方で関連する他の諸概念の価値との弁別的差異によって規定しておくことである。
 簡単に言うと、「〇〇とは何か」という問い方から議論を始めるのではなく、「〇〇は何とどう異なっているか」「AはBとどう違うのか」「AとBとを結びつけているものは何か」などと問うことから始めるということである。
 この方法を「中心と周縁」というテーマに適用とすると、どうなるだろう。少し考えてみよう。
 ある空間について、その中心と周縁というとき、中心と周縁とが直接することはない。周縁は、必ず、中心から多かれ少なかれ隔たったある閾値を境として、その「向こう側」として規定される。この意味では、中心と周縁とは非連続である。しかし、他方、ある点が中心として機能するためには、必ず、それに対してある限定された周縁がなくてはならない。この意味では、つまり、両者相俟って同じ一つの空間を構成しているという意味では、両者は連続している。
 このような両者の非連続性と連続性を同時に成り立たせているのが、互いに異なり、場合によっては相対立するものとして両者を隔てかつ一つの空間の構成要素として繋いでいる中間領域である。中心と周縁とを隔てかつ繋ぐ媒介項として中間領域が機能してはじめて、中心と周縁とはそれぞれの機能を果たしうる。したがって、この媒介項としての中間領域の機能・構造に変化が発生すれば、中心と周縁との関係も必然的にその影響を何らかの仕方で受けることになる。