古代ギリシアのダイエット・ブームは、プラトンをして怒らしめるほどの勢いであったようであるが、現代にも見られるこのような社会的熱狂現象は、幸いなことに、まったく否定的な結果だけを生んだのではなかった。
ダイエットは、それが効果を発揮するためには、生活全般について事細かに決められた規則に従って、毎日実行すべきことを実行しなくてはならない。そのためには、だたそれらの規則を暗記しただけでは駄目で、日々の実践を通じて、それらの規則がいつも心に留められているようにしなければならない。
古代ギリシアにおいて、このダイエット成功のための基本原則を倫理的な諸規則の実践に当てはめようとする「徳ある人」たちが現れたのである。つまり、体の健康を保つための諸規則の実際の効果的な適用のための原則を、魂の健康のため応用する人たちが登場したのである。
しかも、自分をコントロールし、不慮の事態に備えるためには、諸々の必要に対して、できるだけ簡素であるように努め、あれやこれやの必要に引きずられないようにすることを受け入れなくてはならない。このような態度が、実際、後にセネカによって実践されることになる。
一言で言えば、このような「魂のダイエット」が哲学の起源の一つなのである。