内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

無意識の世界の危険な旅からの生還

2017-06-06 23:59:59 | 雑感

 今日の記事は、とりとめのない呟きです。
 エランベルジェの『無意識の発見』を読んでいて、無意識の世界の旅は、未知の大海原の危険に満ちた航海に似ている、と思った。進路を見失う危険もあるし、航海中に悪天候に見舞われることもあるし、難破の恐れもつねにある。意識の陸地にまた戻って来られるかどうかは保証の限りではない。
 「創造の病い」を語ることができるのは、この無意識の世界の危険な旅から無事帰還することができた人たちについてだけだ。帰還した意識の世界の中で新たに生産的な仕事ができるようになってはじめて、その人が経過した病いを「創造の病い」だったと言うことができる。罹患した時点でそれがすでに「創造の病い」であることが確定しているような「創造的疾患」があるわけではない。
 エランベルジェによれば、危険を孕んだ無意識の世界の旅からの帰還を可能にするのは、何らかの仕方での現実世界との恒常的な接触である。この点は、上記の比喩ではうまく説明できない。航海に出ることは、普段の現実世界を離れた非日常への出立なのだから。
 孤立感に苛まれながら無意識の世界の旅を続けつつ、日常では公私両面において他者との関係に支障が発生しない程度に普通に過ごす。そんなことがどうっやたら可能なのだろうか。