ストラスブール大学ではここ三年ほど、特にコロナ禍が落ち着きを見せキャンパスに学生たちが戻って来たころから、ハンディキャップのある学生たちの受け入れに目立って積極的になった。その基本方針に反対する教員はいない。私ももちろん賛成だ。
しかし、昨年度から学科のミッション・ハンディキャップ担当責任者になってからいろいろと思うところはある。基本方針を大々的に大学が喧伝し、実際様々なハンディキャップをもった学生たちが目に見えてキャンパス内に増えている。その割には、現実の予算配分・設備投資・人員配置等が現実に追いついていない。バリアフリーなどまだほとんど実現できてないと言っていいし、エレベーターなどしょっちゅう故障しているし、ハンディキャップのある学生に付きそうスタッフの数も十分ではない。学生バイトを急募しているが、それだけでは不十分なことは明らかだ。
ハンディキャップといっても実に様々なタイプとケースがあり、それぞれに取るべき対応が異なってくる。ところが対応する側がきめ細かく適切に対応できるだけの知識も経験もないのだ。教員はそれぞれ自分の分野では教えることのプロではあっても、ハンディキャップに関しては素人同然である場合がほとんどで、訓練を受けている暇もない。私自身もそうだ。
身体的なハンディの場合、適切な対応は比較的明確だが、心的あるいは精神的ハンディキャップの場合はとても対応が難しく、そもそも何が学生本人にとって問題なのかよくわからないこともある。よかれと思って掛けた言葉が逆効果になってしまうこともあるし、コミュニケーション自体がうまく取れないこともある。
まだ始まったばかりの今年度だが、非常に難しいケースを一件学科としてかかえることになった。個人のプライバシー情報に関わることなので具体的は書けないが、先週のガイダンスのときにすでに目立った問題行動が見られ、これから授業中にも同様な行動が見られるであろうことはほとんど避け難く、そうなれば担当教員たちはそれに振り回され、円滑な授業運営は困難になり、他の学生たちからは当然苦情が出るであろう。早急な対応を迫られている。