今日から修士一年の演習が後半に入った。前半六回は『現代思想』に掲載された拙論二つの読解に当てられ、私からのフランス語での説明が主であった。後半は、来年二月の日仏合同ゼミの日本語での発表準備に当てられる。この後半六回では、私は、原則、日本語でしか話さない。時折説明の便宜上フランス語の単語を差し挟むことはあっても、フランス語で説明はしない。
今日は、四つのグループそれぞれの第一回目の発表であった。同じグループ内でも日本語の実力には歴然とした差がある。できる学生のスクリプトは日本語としてはほとんど直す必要がないほどよく書けている。他方、できない学生のスクリプトはまともに書けている文がほとんどない。辛うじて言いたいことがわかる程度である。正直、添削する気にもならない。もう一回面洗って出直してこいと言いたいくらいだ。
内容に関しては、四グループとも実によく考えて準備してきた。生命倫理、動物倫理(二グループ)、肉食問題がそれぞれのメインテーマだが、予想通り、グループ間で互いに交差し合う問題が取り上げられており、今後各グループで準備を進めていく過程で、自ずとグループ間で共通する問題点が浮かび上がってくるだろう。そうなってくれれば、全体ディスカッションでの議論も活発になることが期待できる。
年度初めには、もし学生たちが拙論で取り上げられているテーマそのものに拒絶反応を示したらどうしようという不安もなくはなかった。日本学科で扱うようなテーマではないからである。なんでこんなことを日本学科で勉強しなくてはならないのですかと学生たちから問い詰められていたとしたら、日本語の論文を読む練習だという苦しい言い訳くらいしかできなかっただろう。しかし、幸いなことに、学生たちはまさにそのテーマに強い関心を示してくれた。それどころか、すでに何年も前から動物の権利に関心をもっていたという学生もいた。
これから三ヶ月間、スクリプトを何度も書き直す作業を通じて、そして毎回の授業で口頭発表の練習を重ねることで、二月には日本語で日本人学生たちと議論できるようになるところまで学生たちを鍛えていきたい。