旅倶楽部「こま通信」日記

これまで3500日以上世界を旅してきた小松が、より実り多い旅の実現と豊かな日常の為に主催する旅行クラブです。

ヴァーサ号博物館

2017-11-05 16:16:34 | スェーデン
個人的にはストックホルムでいちばん見てほしい博物館。1628年に沈没した巨大戦艦を引き上げて展示してある↓

1950年代に場所が特定され、30メートルの海底からゆっくりゆっくりひきあげられ、様々な処置をほどこした後1990年にやっとこの博物館に公開された。

その圧倒的な迫力↓

↑いちばん下に写っている人の大きさと比べてみてほしい。
全長69メートル、高さ52.5メートル
ずらりと並べられた砲門 全部で64もの大砲を装備していた↓

↓船体全体の高さはパリの凱旋門にも匹敵する↓




17世紀前半はヨーロッパは宗教戦争の真っ最中。スウェーデンも新教側の一国として参戦し、南ドイツまで進軍していった時代。
グスタフ・アドルフ二世王はスウェーデン史の中でも指折りの好戦的な王様。
彼が命じて建造させた巨大戦艦がこのヴァーサ号である。

ところがこの船、完成して処女航海に出発したその日・ストックホルム湾を出る前に横風をうけて大きく傾き、砲門から浸水して沈没してしまったのである!
その時の予想図がこれ↓

あれあれ。
確かに頭でっかちで安定が悪く見える。
目の前にそびえる船体を見てもそう↓

我々のようなど素人が見てもそうおもうのだから、当時この船をつくっていた職人たちはとっくに気づいていただろう。
幾多の船を見て・乗っていたベテランたちが、この船の不安定さに気付かないはずはない。

記録を読んでいると、処女航海の前日に甲板長がこんな実験をしていた。
乗組員三十人を甲板のいちばん端に集め、いっきに逆の端まで走っていかせたのだ。
「三回往復した所で中止しなければならなかった。そうしなければ船は横倒しになっていただろう」
※現地で売られていたガイド本より
まわりの多くの者たちが危惧していたのである。

それなのになぜ、誰にも沈没を止められなかったのか?
建造を正しくすることができなかったのか?

理由は
誰もがグスタフ・アドルフ二世王を怖れていたからにちがいない。

独裁者に諫言するのは、今も昔も、洋の東西を問わず命がけだ。
王が「これでよし」と認可した船の建造を止める者はついに現れず、
この悲劇に至ってしまった。


処女航海の日=沈没の日、王はドイツに居た。
責任者を見つけようとする裁判では多くの「被疑者」があがったが、肝心の設計者は完成前に死亡していた。

**

ひきあげられたとき、副キャプテンの持っていたものと思われる金の指輪がみつかっている↓


貴重な大砲だけは、17世紀の後半にほとんどすべてが海中から引き揚げられた↓


本体は333年間海底に眠っていたが、幸いバルト海の薄い塩分濃度に助けられ、ほとんど損傷せずに、こうして現代までその姿を伝えているのである。



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ストックホルム市立図書館~世界一美しい図書館かもしれない

2017-11-05 12:12:25 | スェーデン
ここは、世界一美しい図書館かもしれない

⇒※こちらに動画を載せました

入口の狭い階段を登りきると、360度を円筒形の書架に囲まれた空間に出る。

今回、この図書館だけのガイドをしてくれた方が、
「設計したアスプルンドがモデルにしていたのはローマのパンテオン神殿だったのです」
と解説してくれて、はっとした。
その証拠に床の「四角と丸」のデザインが同じ」↓

ローマのパンテオンの床って、確かにこんなデザインだった。
よく覚えている。

本というのは、人類の英知の結晶。
人が神話や迷信の時代から理性と知性の時代に踏み出せたのも、書物が人類の英知を繋いできたおかげ。
図書館は人類にとって神殿のような場所なのかもしれない。アスプルンドはこの図書館のかたちにその考え方を反映しているのだ。

導線は外の階段からはじまっている↓階段の幅がだんだんと狭くなりながら建物へ向かってゆく↓

幾何学的なガラスの扉を開けて、エジプトの神殿入口のような門へ足を踏み入れる↓

周囲の壁は、人類がまだ暗黒の時代にいることを表す黒。
そこに神話の代表として、ホメロスの「イリアス」が描かれている。
おお、このシーンは、アキレウスが親友パトロクロスを殺されて参戦し、敵のヘクトールを殺して戦車で遺体をひきずりまわすシーンにちがいない↓
左にはアキレスの足元にひれ伏して息子ヘクトールの遺体を返してもらいにきた老プリアモス王が描かれている↓

黒い空間から登っていくと、明るい冒頭の空間に出る↓劇的なストーリーになっているのだ


今は回転扉に換えられてしまったが、かつての扉はこんな↓幾何学的にシンプルなものだった

ドアの引手は、知恵の実を食べてしまったイブとアダムだった↓
盗もうとする輩がいるので、今は取り外してこんなふうに展示してあるが↓


★最初の完成予想図をガイドさんが見せてくれた↓

入り口前に、古代の教会の前にあった洗礼所のような池がデザインされていた↑
建物の外壁にはエジプトの象形文字のようなデザイン↓

***
四角い建物の中心に円筒形を入れ、四方向にそれぞれ性格のちがった部屋を配置している。そのうちのひとつにアスプルンドがデザインした水飲み場がそのままに残されている↓蛇口に注目↓

四本の腕を上げたギリシャ風の戦士だ↑

建設された1928年当時の、光が良く入るようにあけられた高い窓↓

書架を照らすライトは当初は下からの光だったようだが↓後年、見やすさを考慮して上からに変更されている


ひとつの部屋には一般の人々の働く姿をデザインした大きなタペストリーが飾られている↓

上の書架への螺旋階段のコンクリート部分は、一見、絨毯をひいたように見えるかたちになっている↓芸が細かい


****
今日は日曜日なので、
★一般立ち入り禁止の上階部分も見学させてくださった↓
階段から円筒形の中央広場が見下ろせる↓

階段の突き当りにあったのはアテナ神の胸像↓

上階にはかつての図書館の記憶がたくさん留められていた
アスプルンドがデザインしたオリジナルの椅子がずらり↓

椅子の角のデザインも四角と丸⇒
↓かたわらにあったこの入れ物は?

なんと防火用水だった↑
コンピューター導入まで使われていた図書カード棚が↓


図書館長のデスクとその部屋もオリジナル↓

ランプもアスプルンドのデザイン↓

19世紀的なデザインの椅子とその上の古いクッション↓


アンティークなライトはオリジナル?

****
建築家アスプルンドがこの図書館を出現させるためには、それを採用した発注者が必要である。
今回ガイドしていただいて、ファルフリッド・パルムグレンという女性の存在をはじめて知った。
ひっそりと飾られた理知的な肖像が彼女↓

★彼女について⇒こちらに書きました。

子供のための図書館という概念が、はじめて本格的に実現されたストックホルム市立図書館↓
奥まったところにある夢見るような部屋↓

その手前の部屋に描かれた星空の意味は?
↑上のファルフリッド・パルムグレンについてのページに書きました







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