旅倶楽部「こま通信」日記

これまで3500日以上世界を旅してきた小松が、より実り多い旅の実現と豊かな日常の為に主催する旅行クラブです。

キールナは町ごと移転する

2017-11-06 20:16:54 | スェーデン
鉄鉱山があるからキールナの街が存在する。
街のどこからでもキールナ山が露天掘りしていた頃の段々の斜面が見える↓

夜はその上にオーロラが輝いたりもする↓※二日目の夜の写真より


しかし、2004年にLKAB国営鉄鉱山会社はとんでもない発表をした。
「鉱脈を追って掘られている坑道が街の直下に至っており、このままでは町が崩落する」
街の中心部をそっくり移転させるという大計画が動き出した。

小松がはじめてやってきた2008年にその話をきいていた。
九年後の今日、どこまで事態が動いているのか知りたい。
★鉱山と町のジオラマがLKABの事務所にあった↓これを見るとどのような位置関係にあるかがひと目でわかる↓

赤い線で区切られたエリアは2033年までに陥没する危険があるとされるエリア。
右の湖は陥没の危険を減らすために鉱山に近い部分を排水・水を抜いてしまった。
**

11月6日朝、キールナ駅に到着した我々は、まず市庁舎へ↓上の写真の赤いエリア内にある四角い建物である。

シンプルだが温かみのある美しい建築。内部も美術館のようだ↓レンガはオランダ制手作りだそうな

広い中庭をとりまくように上階のバルコニーが配置されている↓町の人たちが集まることが出来る場所



美術館というものがないので、市庁舎がその役割も兼ねているのだと説明されて納得した。
ロダンぽい胸像も↓これはキールナにとって大事な人物

「これはHjalmar Luncbohm(ヤルマル・ルンドボーム)というLKAB(国営鉱山会社)の初代所長で、キールナの町の創立者として敬愛されている人なんです」
なるほど。この市庁舎を丹念に見ていけば、キールナの歴史も理解できる場所になっている。
市議会もこの建物にある↓

サーメ(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、ロシアにまたがった北極圏に住む民族)の作家が制作した、サーメ人の世界観を表した木彫↓

↑中央には聖なる白いトナカイ。その左にノイデン(サーメの人々のシャーマン)がいる↑
市庁舎の扉も同じ作家がトナカイの骨や角を使って製作したものだった↓

もともとこの北極圏はサーメの人々の土地だったのである。

1964年に建設され、町の人々に愛されてきた市庁舎。かつて時計塔があった時代の写真をガイドさんが見せてくださる↓

★この建物は移転しない・取り壊されることが決まっている
いちばん印象的な・町のシンボルでもあった時計塔だけが、新市庁舎へ移築されるのですでに取り外されている↓

↑なんだか、羽をもがれてしまった鳥のようではないかしらん↑

出発前に見つけていたキールナ新市庁舎の完成予想図↓右の方に確かにあの時計塔が描かれている↓
なかなか良い感じの建物じゃないですか↓ホンモノ、見られますか?とガイドさんにリクエストした。

「外観は完成しているので、バスで出来るだけ近くに行って見てもらいましょう」
ドライバーさんも意図をくんで立ち入り禁止ぎりぎりのところで止まってくれた。

新キールナ市の完成予定地図の中心にも描かれていた↓放射状の道の真ん中にある円筒形の建物がそれ↓

バスが倉庫エリアを走る。視界が開けたところに、建物が見えてきた↓

・・・なんだか・・・とても寂しい建物に見えるのはお天気のせいでしょうか・・・
来年の秋にはオープンということだが、周囲は視界がひらけるほどに何もない。倉庫が点在しているだけ↓

次にキールナにきたときには(いつ?)賑やかな町の中心になっていますように

***
市庁舎とちがって、そのまま新しい街まで運ばれることになったのが丘の上の教会だ↓
鐘楼が印象的なかたち↓

教会本体もバランスがとれた木造建築↓

1912年に完成している↓

祭壇には聖人の像ではなく、緑美しい風景画。
「パラダイスへの道」という題なのだそうだ。エウシェン(ドイツ語ならオイゲン・フランス語ならウージェーヌ)公爵が描いたと説明された↓

調べてみると、彼はスェーデン国王の王子の一人。ノルウェー(当時はスェーデン領だった)の自然を好み、独特の自然を描くスタイルを持っている人物だった。
この建物によく合っている。
天井までひらけた空間は、市庁舎とともに人々が集まれそうな場所だ↓


この建物、はじめは移動させるのは難しいと判断されていた。
だが、2001年には「スウェーデンで国民に最も愛される建物」にも選ばれているので↓※切手にもなったんですね↓

結局そのまま新しい街に移送させると決定されたのだそうな。
今度は丘の上というわけにはいかないようだが、まずは、よかった。

****
ホテルに行く前にスーパーによることにする。
ガイドさん曰く、「社会党系スーパー(COOP)と、資本主義系スーパー(ICA)がある」のだそうな。
キールナ市民には政治意識が強い人もいて、どちらかにしか行かないと決めているのにびっくりしたと話していた。
本日、社会主義系へ向かう。単にバスが止めやすかったから(笑)↓

ワンちゃん、雪の中で退屈そうに待っている。うれしそうにしっぽふってくれました↓

品物は充実している。安くはないけれど↓

こんなクリスマス用のコーラ?みたいなのありました。味は、ドクターペッパーに似ているかな↓


*****
さぁ、ホテルにチェックイン。コテージタイプになっていて、オーロラ観測には最適↓

中にはキッチンもあるので、明日はここでお料理しよう↓

今日はホテルのダイニングにて↓
このホテルのダイニングは評判良いのです。アラカルトにて。
★前菜
選択肢①キノコのスープ↓飾られている花びらも食べられます

選択肢②魚のカルパッチョサラダ・・・とメニューに表記されていたのだが↓

いちばん目立つのはいろとりどりのビート↑スモークした白身魚は時々見つかるぐらい小さくまぶしてある。
ビートのサラダとしておいしくいただきました。

★メインコース
選択肢①
Arctic Char=「いわな」のグリルポテト添え↓

選択肢②ムース肉↓薄切りにして巻いてある

選択肢③ビーフ・フィレ肉↓

選択肢④ベジタリアン↓かぼちゃ、根菜類をバルサミコソースで

★デザートはちょっとずつ分けました↓


北極圏でも、ちゃんと場所を選んで、相応の予算をかければ、豪華でなくても十分にじゅうぶんにおいしい食事が楽しめます(^.^)


レストランにかかっていた一枚の絵が目に留まった↓
昼間に訪れた市庁舎が描かれている。まだ、あの時計塔も乗っている↓

この風景も、人々の記憶の中のものになってしまうのか
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ストックホルムから夜行列車で北極圏のキールナへ

2017-11-06 09:09:00 | スェーデン
ヴァーサ号を見学してから旧市街のガムラスタンを少し歩いて、軽い夕食
ペルシャ人の運転するタクシーでホテルにもどりホテルから二百メートルほどのストックホルム中央駅に向かった。

今晩は夜行列車。ストックホルム発17時半。えっと23号車か↓

日本と違い、ヨーロッパでは今も夜行列車が利用されている。
部屋のタイプはこの列車には三つ。今回はいちばん快適な二人一室でシャワーもついている部屋↓

シャワーとはきいていたが、実際どの程度の設備かわからなかったのだが…ああ、これでは日本人は利用しにくいだろう↓


洗面台の水道水は飲まないように。飲料用に紙パックに入った水が用意されている※緑色のパック↓

扉を閉めて、上段への梯子をかけたところ↓

上の段にてドア方向を見る↓


六人一部屋のコンパートメントはこんな感じ↓※撮影したのは明け方近く、すでにこの部屋の人々は降りた後の様子


時間になると音もなく発車。ほんとに「ガタン」という音もしない
★小松が夜行列車の良し悪しを判定するいちばんのポイントは、実はこれ。夜行列車は夜中に何度も、止まる・動き出すを繰り返す。この時に衝撃があると簡単に眠りを破られてしまう。
これまで乗ってきた夜行列車で最上の乗り心地はフィンランドの「サンタクロースエクスプレス」だったが、この列車も(車両は古めだが)乗り心地は良い。


しばらくすると、車掌さんが検札にやってきた↓切符はQRコードであります↓


食堂車(というほど大したメニューはないが)まで渡ってゆこう↓

サンドイッチの他に「チンっ」してくれるメニューもいくつかある↓

テーブルでしばし、車窓を見ながらお話しましょ↓

***

何度か目を覚ましながら、列車は北極圏に近づいていた。現在地を知るのに誰かに訊かなくても大丈夫、近頃は携帯電話がいちばん↓
実は、今回の寝台車量はボーデンで終了し、キールナまで行かない。ルレアというバルト海側の港町へ行ってしまうのである↓下の地図で、下からの線路がT字に突き当り、右下へ行くと海に面したルレアに至っているのが分かるだろうか↓

我々の目指すキールナへの線路はさらに北へ続いている↑
ボーデンからさらに四時間近く乗ることになる。

午前五時半、ボーデンに到着。小雨の中同じ列車の数両先へ移動↓

今度は16号車↓※号車番号は車両の数とは関係ありません↓

乗り換えた列車も座席指定↓幸いこの時期は空いている

十五分ほどで再び発車。今度は内陸へ向かう。
すると、三十分もしないうちに一面の雪景色に変わった↓


キールナ駅到着まであと数時間、ビュッフェカーは簡単なスナック売場に代わっていた。



コーヒーは20スウェーデンクローネ(¥330円ほど)↓カップを持っていけばおかわりできる↓






スーツケースは車内でまとめて置いておける↓


が、降ろす時はちとたいへん↓
午前九時半、雪の中のキールナ駅に到着!↓

バスは駅のすぐ前にいる(写真にも見えてます)ので、ほんの二、三十メートルだけれど雪の中をひきずって行きました↓


今晩から二泊、北極圏の鉄鉱山の街キールナをゆっくり楽しもう(^.^)

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