
口伝にて一揆の表裏旱空 好夫
一読引き込まれた。本来、戦や天地を揺るがす大きな一揆ならばどこかに記録が
残っているもの。「口伝にて」というのだから、小さな里の農一揆なのだろう。
残念なのは、「旱空」が読者に「農」を意識させてしまうことかもしれない。
「口伝にて」で「農」まで導き出せていると思う。
私が興味を持ったのは「表裏」である。作者はこの「口伝」に関わっている
一人ではないか?と直感したからで、何かその編纂に立ち会っているとすると
私の中の物語は広がりを持つ事になる。物事に表裏があることは当然なのだろう、
しかし、私たちの既存の考え方には,一揆は農民の一途な思いとなる。
一揆の記録文章ならば「裏」はどこかの時点で抹殺されていただろう。
「口伝」だからこそ、生き残った「裏」と思うとワクワクさせられる私の中の
秀句一句。

大股に行脚の僧や草じらみ

今日は現俳の選句締切りの日、いざ大言を吐いたものの正直、自信もなく
翌朝に送られてくる結果に,毎月揺らぐ自分が居る。
今の現俳の投句傾向は高点句の傾向を真似ているものが多い。
良し悪しは兎も角、選句していても悲しいものがある。

玉露の踊りてこぼす蓮かな 桑原健次