厚生労働省が医療機関での出産にかかる標準的な費用を都道府県別に調べたところ、約6割に当たる広島、岡山など28都府県で、公的医一療保険の財源から全国一律で妊産婦に支給される「出産育児一時金」(42万円)を上回つていることが9月10日、分かった。
一時金で足りない分は自己負担となるため、政府は少子化対策の一環として2023年度から支給額を大幅に引き上げる方針。
ただ出産費用は地域によって最大約20万円の差があり、引き上げ幅をどの程度にするか、慎重な検討を迫られそうだ。
病気の治療や投薬などは国が一つ一つの価格を決めているのに対し、出産(正常分娩の場合)は病気ではないため、公的医療保険が適用されない「自由診療」に位置付けられる。
価格は医療機関が独自に設定する。
妊産婦には経済的負担を軽減するため、一時金の形で定額が支給される。
出産費用は人件費の増加や少子化、高齢出産の影響で年々上昇。
これに合わせて一時金も引き上げられてきた。
現在は一律42万円だが上昇に追いついておらず、岸田首相は9月7日の「全世代型社会保障構築本部」会合で「大幅な増額を早急に図る」と明言。
年内に具体的な金額を決める。
厚労省は引き上げ幅の検割材料とするため、2020年度の公的病院での標準的な出産費用の平均額を都道府県別に集計した。
それによると、東京が最も高い55万3千円で、茨城51万5千円、神奈川49万9千円が続いた。
一時金の42万円を上回ったのは計28都府県。
全国平均は45万2千円だった。
最も低いのは佐賀の35万2千円で、次いで沖縄35万3千円、鳥取35万4千円。
東京と佐賀では約20万円の差があった。
集計に当たった厚労省研究班は「所得や医療費水準、妊産婦の年齢などが地域差の要因」と分析。
公的病院より高額な傾向にある民間病院が含まれていないため、各都道府県の表の平均額はさらに高いとみられる。
一時金は企業の健康堡や国民健康保険などの加入者または被扶養者が出産した際に支給される。
財源は幅広い加入者の保険料や税金で賄われており、引上げには合理的な根拠が求められる。