英製薬会社ラインファーマは12月16日までに、妊娠を中絶するための経口薬の製造販売の承認を、来週にも厚生労働省に申請する方針を固めた。
国内で人工妊娠中絶の手段は手術に限られているが、承認されれば初めて飲む薬が選択肢となり、女性の心身への負担が軽減される可能性がある。
中絶薬は1988年に世界で初めてフランスで承認され、欧米などで広く使われている。
世界保健機関(WHO)は、体への負担が少ない中絶方法の一つとして薬を推奨する。
承認申請する薬は、妊娠を維持するのに必要なホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」と、子宮の収縮を促す「ミソプロストール」。
対象は妊娠9週までで、二つを組み合わせて飲む。
国内の臨床試験(治験)には妊娠9週までの18~45歳の女性120人が参加。
まずミフェプリストン、次いで36~48時間後にミソプロストールを服用した。
このうち93%が服用後24時間以内に中絶した。
59%に下腹部痛や嘔吐などの症状が出たが、ほとんどが軽度か中程度で、薬と因果関係がある副作用とされたのは全体の38%だった。
国内で人工妊娠中絶は、母体保護法で経済的理由がある場合などに同法指定医師により行うことができると規定され、今回の薬でも同様の運用が見込まれている。
治験に携わった大須賀・東京大教授(産婦人科学)は「安全のため、服薬後しばらくは医療機関の十分な管理下に置くことが重要だ」と指摘。
承認を求める団体は「早期に中絶できるようオンライン処方などで、自宅で服用できるようにすべきだ」とする。
日本では金属製の器具でかき出す「掻爬法」か、管で吸い取る「吸引法」の手術が行われる。
WHOは、子宮を傷つける恐れのある掻爬法は「時代遅れ」とし、吸引法か中絶薬を推奨する。