中国福建省で、核兵器に使える高純度のプルトニウムを生成できる高速増殖炉の建設が最終段階に入ったことが5月13日、衛星画像で分かった。
年内の稼働が見込まれ、本格運転すれば年間100発超の核弾頭を製造できる量のプルトニウムが生み出されるとされる。
中国は核施設の査察義務がなく、民生用の核物質を軍事転用する可能性が高い。
国際社会の監視機能が働かない中、核戦力強化の懸念が強まっており、先進7力国首脳会議(G7広島サミット)で議題となる見通しだ。
国有企業の中国核工業集団が福建省霞浦県で高速増殖炉「CFR600」を建設。
計2基のうち1号機は2017年、2号機が2020年に着工した。
笹川平和財団が入手した昨年9月30日の衛星画像によると、主要なタービン建屋が完成したことが判明、それぞれ2023年と2026年の稼働が見込まれる。
電気出力は日本の高速増殖炉「もんじゅ」の約2倍の60万キロ。
専門家によると、核兵器に用いる純度の高いプルトニウムを年間200~300キロ生成。
核弾頭にすると100~200発程度の製造が可能な量という。
中国政府は電力需要増に備え高速増殖炉を開発中としているが、中国メディアは「軍民両用が可能で核弾頭増強に非常に有利だ」と伝え、核兵器への転用を示唆した。
中国は国際原子力機関(IAEA)へのプルトニウム保有量の申告を2017年に停止。
2016年に最後に申告したプルトニウム量は40・9キロで、高速増殖炉によるプルトニウムを加えると、2030年ごろには核弾頭約620~1040発相当の量に増加するとの試算もある。
米国防総省は2022年に公表した墾に書で、中国の運用可能な核弾頭は400発超と推定。
2035年に1500発に増加すると予測しており、原料となる大量の核物質が不可欠な状況だ。
中国も加盟する核拡散防止条約(NPT)はプルトニウム保有量の申告や査察といった監視を義務付けているが、核兵器保有国にはこうした義務がない。