朝鮮は「全ての日本人」の包括的調査をうたった5月の日朝合意以降、日本で急速に高まった拉致問題早期解決への期待感に警戒を強めている。
10月27日から地の利がある自国に日本側を引き入れ、戦後北朝鮮に渡った日本人妻など別の課題を提示することで、核心の拉致問題について矯小化を図る懸念もある。
「日本政府は拉致問題を議論する前に、朝鮮人民に犯した罪から反省しなければならない」。
北朝鮮は長年こうした見解を堅持し、拉致問題は解決済みとした「従来の立場」の撤回は明示していない。
「調査結果に満足するかしないか、それは日本側の評価の問題。 われわれはありのままを通知するだけだ」。
北朝鮮外務省幹部は再調査に高まる日本側の期待に対し、予防線を張った。
北朝鮮側は拉致被害者らの調査を担う国家安全保衛部幹部らを今回、日本側に対面させることで、合意履行に向けた誠意を強調するとみられる。
ただ日朝間に「拉致問題再調査が最優先」の合意はなく、日本が北朝鮮に調査加速を促すための持ち札は独自制裁の緩和などごくわずか。
本国との連絡さえままならない平壌での折衝で、日本が主導権を握るのは容易ではない。
北朝鮮には高齢化した日本人妻らが生存し、終戦前後に現地で死去した日本人の「墓地」もある。
今回の訪朝に合わせ、北朝鮮が拉致以外のこうした「人道問題」を日本側に突きつけ、対応を迫る可能性も指摘されている。
したたかな北朝鮮にどう対抗できるのか注目。