ドイツ政府が財政再建に成功し、来年度の新規国債の発行がゼロになる見通しとなったことが話題になっている。
日本政府は膨大な借金を抱えたままだが、ドイツから何かを学ぶことはできるのだろうか。
ドイツのショイブレ財務相は、ドイツ連邦議会において2015年度予算案について説明し、その中で新規国債の発行がゼロになる見通しであることを明らかにした。
旧西ドイツ時代も含め新規国債がゼロとなるのは実に46年ぶりのこと。
ドイツは、欧州各国に財政を健全化するよう強く求めているが、自分自身が財政再建を実現してそのお手本を示した形だ。
2014年度におけるドイツ連邦政府の歳出見込みは約2965億ユーロ(約41兆円)となっている。
これに対して歳入は2898億ユーロとなっており、歳入と歳出はほぼ均衡する予定だ。
これによってドイツ政府は、新規国債の発行をゼロにすることが可能となった。
ドイツは、財政均衡を義務付ける法律を制定しており、財政に対しては厳しいスタンスで臨んでいる。
歳入のうち税収が占める割合は9割に達しており、借金に頼らずに財政を運営できる体制を整えている。
ドイツにおける政府債務のGDP比は、政府が保有する資産を差し引いた数値で約50%、米国が約80%、日本は約140%となっている。
一方、資産を差し引かない数値では、ドイツが約70%、米国が約100%、日本は約250%となっている。
ドイツや米国は連邦制となっており、中央政府と地方政府の関係が日本とは異なるため単純な比較はできないが、ドイツ政府の債務比率の低さは突出していることがわかる。
日本は借金も多い代わりに資産も多いので問題ないという意見もあるが、少なくともドイツや米国との比較ではそれは当てはまらないようだ。
また日本政府が持つ資産の中身を見ると、流動性が低く、実質的な資産価値が低いものも多く含まれているというのが現実だ。
ドイツは基本的に緊縮財政を推し進めたことで財政再建を実現したわけだが、緊縮だけが財政再建を実現できた理由ではない。
ドイツは好調な経済が続いており、税収が伸びたことが、財政再建の原動力となった。
米国の財政もこのところ急激な改善を見せているが、これも好調な米国経済を背景に税収が増えたことが大きく影響している。
つまり、財政再建には歳出削減も重要なのだが、それ以上に、歳入を多くすることが大事というわけだ。
日本はこの20年間、経済成長がほとんどなく増税以外に税収を増やす手段がなかった。(この間、先進諸外国のGDPは1.5倍から2倍に拡大)。
今の状態では、政府が国際公約として掲げる2020年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化という目標は、消費税を10%にしても達成困難だ。
財政再建を実施するためには、持続的な経済成長を実現することが、何よりも求められている。