米軍の戦略爆撃機B52が先週、訓練中に南シナ海・南沙(英語名・スプラトリー)諸島に中国が造成した人工島から12カイリ(約22キロ)内を飛行していたことが12月18日、分かった。
米国防当局者は「意図的ではなかった」と説明しているが、南沙諸島で領有権を主張する中国政府は2カイリ(約3.7キロ)内の飛行だったと指摘し、米側に抗議を申し入れた。
米中が南シナ海で偶発的に衝突する危険がある現実を浮き彫りにした形。
南シナ海問題をめぐる米中の対立が一段と高まる恐れもある。
中国政府は12月16日、米政府が台湾にフリゲート艦などの武器を売却すると決めたことに抗議したばかり。
米当局者やウォール・ストリート・ジャーナル紙(電子版)によると、B52は12月10日、中国が今年に入り灯台を設置するなどしたクアテロン(中国名・華陽)礁から12カイリ内に入った。
米高官は同紙に、悪天候のため航路を外れ、予定より同礁に近い地点を飛んだと指摘した。
米軍は10月、行き過ぎた領有・管轄権の主張を認めない方針を示すために行う「航行の自由作戦」の一環として、中国が人工島を築いた南沙諸島のスービ(渚碧)礁から12カイリ内に駆逐艦を送り込んだ。
国防当局者はB52の飛行については「12カイリ内を飛ぶつもりはなかった。航行の自由作戦ではない」と強調している。
ただ、クアテロン礁は、満潮時も海面に姿を現す「岩」と位置付けられ、国連海洋法条約で定める12カイリの領海を伴う。
一方、スービ礁は、満潮時に水没するため領海を主張できない。
中国メディアによると、中国国防省新聞事務局は12月19日、「中国の軍隊が米軍機を厳密に監視した。岩礁の守護部隊が高度な警戒態勢を取り、米軍機に警告し、追い払った」と明らかにした。
同事務局は米国が人工島周辺の米艦航行などに加えて、爆撃機を派遣したとして、「島礁を守る中国の要員や施設の安全に危害を及ぼすもので、地域の平和と安定を害する。 重大な軍事的挑発行為だ」と非難。再発防止を要求するとともに、「中国軍隊は米国の挑発行動に一切の必要な手段と措置を取る」と警告した。