国立がん研究センターは1月19日、全国の16施設で1999~2002年にがんの診療を始めた約3万5千症例の分析で、10年後に患者が生存している割合を示す10年生存率は全体で58.2%だったと発表した。
5年生存率のデータはこれまでにもあるが、10年生存率を大規模なデータで算出したのは初めてという。
がん治癒の目安とされる5年生存率は63.1%で10年生存率と大きくは変わらないが、乳がんや肝臓がんは5年後以降も生存率の低下が目立った。
また、ほぼ全てのがんで早期に発見し、治療を始めるほど良好な結果が得られることも確認できた。
群馬県立がんセンターの猿木・前院長は記者会見で「乳がんなどは(5年後以降も検診で)きちんとフォローする必要があることが示された」と指摘した。
部位別の5年後と10年後の比較では、胃がんは70.9%から69.0%と1.9ポイントの低下にとどまったが、肝臓がんば32.2%から15.3%へと16.9ポイントの減、乳がんでは88.7%から80.4%へと8.3ポイントの減と、大きく下がった。
進行度を示す「病期」(ステージ)との関係では、診断時に早期の「病期1」ではがん全体の5年生存率は90.1%で、10年後にも86.3%と高めを維持していた。
筋肉の層を超えて広がる「病期2」ではそれぞれ76.3%と69.6%、リンパ節に転移する「病期3」では46.0%と39.2%、他の臓器に転移があるなど進行した状態の「病期4」では5年後は17.4%と低く、10年後には12.2%に下がった。
集計では「全国がん(成人病)センター協議会」(全がん協)に加盟する16施設でがんと診断された患者の治療経過を追跡し、5年後や10年後に生存している人の割合を算出。
がん以外での死亡の影響を除いた「相対生存率」を求めた。
がんの部位別の生存率や、手術、放射線治療や学療法(抗がん剤)といった治療法別の生存率などが、全がん協のホームページから検索できる。