稲田防衛相が、沖縄県名護市辺野古で建設が進む代替施設の完成後も米軍普天間飛行場が返還されない可能性に言及し、沖縄県で波紋が広がっている。
米側が代替施設整備以外の返還条件として、那覇空港の使用を検討しているとの観測が急浮上。
無条件返還を訴える県の立場との溝は広がる気配で、反発が強まっている。
稲田氏は6月6日の参院外交防衛委員会で「普天間飛行場の返還のためには、緊急時の民間施設の使用改善を含む返還条件が満たされる必要がある」とした上で「米側と調整が調わなければ、返還条件が調わず、飛行場は返還されないことになる」と述べた。
「そのようなことがないよう対応する」とも強調した。
「緊急時の民間施設の使用改善」とは、2013年の日米合意で示された返還を巡る8条件の一つ。
米側は辺野古施設の滑走路が普天間飛行場より短いとして、滑走路の長い施設も使えるよう求めているとみられる。
今も日米地位協定に基づき民間空港が使われることはあるが、米側はより高頻度で柔軟な使用を要求している可能性が高い。
6月15日の同委員会では、候補とする民間施設12ヵ所のうち1ヵ所が沖縄にあると記した米政府監査院(GAO)の報告書を野党議員が取り上げ、施設名の開示を求めたが、稲田氏は「やりとりは差し控える」と拒否した。
稲田氏の発言は沖縄県議会の議論に波及。
質問に立った議員から「辺野古と普天聞か同時に使われる可能性すらある」「(普天間の危険性除去には)辺野古移股が唯一の解決策だという政府の論理は崩壊した」と憤りの声が次々に上がった。
答弁で謝花知事公室長は、米側か候補とする施設について、滑走路の長さが普天間飛行場と同規模との根拠を挙げ「那覇空港ではないか」との見方を示した。
翁長知事は「大きな衝撃をもって受け止めている。 絶対に那覇空港は使わせない」と断言した。
稲田氏は7月7日の記者会見で「辺野古移設後も普天間飛行場が返還されない状況は全く想定していない」と釈明。
「民間施設の使用改善について、現時点で具体的に決まったものはない」と火消しを図った。
県や県議会は今後、正式に政府の見解をただす方針だ。