踊る小児科医のblog

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机上のプランだけでは実現困難な小児科医の配置集約

2005年05月06日 | こども・小児科
5日の東奥日報に「県病への札医大医師派遣で波紋」という記事が掲載されていて当惑しましたが、「道立大学なのに、なぜ青森へ七人も派遣するのか」という視点だけではかえって混乱します。

私も最初「県病」が札幌医大の関連病院になっていることに疑問を感じましたが、こういうことは特に珍しいことではありません。八戸の3病院は日赤が岩手医大、労災が弘前大、市民病院が東北大(科によって異なります)から主に派遣されているし、岩手県中や山形県中にも東北大から派遣されています。この辺は歴史的経緯やマンパワーの問題もあったわけで、大学医局にとってみれば、臨床研修にふさわしい基幹病院を確保していることが学生や他大学出身者に対して入局者を獲得するための強い武器になっていたわけです。札幌医大から県病に医師が派遣されていたのも、そういった面があったはずです。もう一つは新生児医療。

ところが、全国的な小児科医(病院勤務医)不足で地方病院すべてにこれまで通り医師を派遣できなくなってきた。このあたりでも、五戸にはかつて小児科常勤医を派遣していたけれど、それもなくなった。十和田の産科医引き揚げも同様で、先日来取り上げている県南の産科医再編問題と基本的には同じです。

「都が小児救急体制の再編へ 注目集める病院統合計画」というページに、
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 日本小児科学会は、小児科医不足の対応策として「センター病院構想」を提言した。人口三十万-五十万人ごとに「地域小児科センター」を設置し、最低十人の小児科医を配置。これ以外の地域病院は当直はせず、センター病院の休日・夜間救急外来に参加するというものだ。
 厚労省もこのほど、同学会の構想を基に、小児科医を拠点病院へ集約する小児救急体制の再編に取り組む方針を決めた。
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と書かれています。

この小児科学会の構想のことは当然知っているし、その前に青森県で実現しなかった厚労省の小児救急24時間体制のことも知っています。人口30~50万人といえば、青森県では3市の二次・三次医療圏に相当します。八戸には、市民5人、日赤・労災各3人、合計11人の小児科勤務医がいますが、それぞれ独立して経営している病院ですから、これを1か所にまとめることは非常に困難で、今の分散した体制のままでは小児科医だけで当直をまわすことはできません。市民病院では、新生児ICU(NICU)設置基準に合致するために、小児科医が毎日「新生児科医」として当直しており、小児救急との掛け持ちはできません。

そんなこんなで、プランだけで考えれば小児科医は1か所に集約した方が良いに決まってますが、地域の実情に合わせようとするととても簡単には実現できないことがわかります。「机上の空論」とまでは言いません。良いプランだとは思うのですが。。

それならどうするのか。それがまた問題です。現在深夜の小児救急は小児科医以外がみて必要な場合に小児科医を呼ぶ体制になっています。他科の先生の協力を引き続き得ながら、この体制を充実するしかないのでしょうか。

(念のため申し添えますが、八戸は県内でいち早く開業医による小児科時間外体制をつくったことで、一応一番安定した小児救急医療ができていることになっているのです。しかし、勤務医の過酷な状況が改善されたわけではありません)