踊る小児科医のblog

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マスコミが伝えようとしないタバコ規制枠組条約(FCTC)の「本当の目的」 (1)

2005年05月21日 | 禁煙・防煙
 2月末の条約発効を記念して書きたいと思っていたものが遅くなってしまいましたが、5月31日の世界禁煙デー記念もあわせて、みなさんに是非知っておいてもらいたい「本当のこと」をお伝えします(と言っても別に秘密でも何でもなく、私たちにとっては常識なのですが)。
 院内報用に書いたもので、少し長くなるので2回にわけます。

 デーリー東北や東奥日報に『ニュースなぜなに』という子ども向けのコーナーがあり、先日『たばこ規制枠組み条約 吸わない人の健康も守る 喫煙場所や広告など制限』という記事が掲載されました。
 私たちは、県内の医療、教育、保健、行政関係者が協力して禁煙活動を行うためのネットワーク「青森県タバコ問題懇談会」の活動の中で、マスコミ関係者にも参加してもらって、メディアに誤った内容や誤解・無理解を助長するような記事が載らないよう、そしてタバコ問題の真実を広く伝えてもらえるよう努力しているところです。しかし、モグラ叩きのように「問題のある記事」は出てくる。この記事も、全体として間違いは書いていないにせよ、肝腎のポイントをわざと避けて書いているとしか思えません。
 まずは、必要につき全文を引用してからそのポイントをお伝えします。

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たばこ規制枠組み条約 喫煙場所や広告など制限 吸わない人の健康も守る
 あなたのまわりにたばこを吸う人はいますか? 店の中や街角で「けむい」と思ったことはありませんか? あなたも知らないうちに、たばこの煙を吸っているかもしれません。
 たばこの煙にはがんを起こしたり、がんになりやすくするのを手助けする物質が、四十種類以上含まれています。たばこを吸う人は、がんや心臓の病気になりやすく、妊娠した女性の場合は赤ちゃんが死ぬ危険が高くなります。たばこが原因で死ぬ人は、一年間に世界で約五百万人、日本では約十一万四千人といわれます。
 そこで、たばこの害から健康を守ることを目的とした「たばこ規制枠組み条約」が、二月末から効力を持ち始めました。日本など条約を結んだ国は、たばこの害に取り組む約束を守らなければなりません。
 条約では、たばこを吸わない人の健康も守るため(1)職場や公共交通機関など、人が集まる場所での規制(2)たばこの箱の30%以上の大きさでその害を印刷する(3)たばこの広告を五年以内に禁止あるいは制限する(4)二十歳にならない人は自動販売機で買えないようにする。などが定められています。
 日本は前もって法律を作り、対策を進めてきました。去年から、電車やバス、県庁や市町村の役場、ホールなど、大勢の人が使う場所では広告できないようになりました。道路で吸うことを禁止し、違反者から“罰金”をとる市町村もあり、話題になりました。箱に、心臓の血管がつまって死ぬこともある心筋こうそくになる危険性を「一・七倍高めます」と表示したたばこも売られています。
 しかし、もっと禁煙を進めようという人たちは、「これでは不十分」と批判しています。たばこの税金を上げれば吸う人が減るのに、増税が話し合われていないからです。
 日本は、世界的にもたばこを吸う人の割合が高い国です。吸うことで病気になる人が増え、たばこを吸わない人の健康もそこなうたばこ。どうしたら減らせるのか考えてみましょう。
【写真】中国・上海の通りに登場した巨大な禁煙看板。効果のほどは?(AP=共同)
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 まずは見出しの『吸わない人の健康も守る』という表現は、「健康も」の「も」という一文字が入っているため明らかな間違いではありませんが、FCTC の本当の目的は受動喫煙の防止ではありません(規定にはありますが)。各国の政府がその国におけるタバコ産業の広告・販売促進活動を厳しく規制することにより、未成年者が新たに吸い始めることを防止するだけでなく、現在喫煙している人にも積極的に禁煙させて、結果としてタバコの消費を大きく抑制して喫煙率を大幅に低下させ、タバコ産業の「命を金にかえる商売」から各国の国民の健康を守ることにあります。受動喫煙の防止だけなら、すでに2003年に健康増進法が制定されています。健康増進法も、飲食店で禁煙・分煙が進んでいない現状を踏まえて「罰則規定」のある法律に改正しなくてはいけないのですが、ここではそれ以上は触れないでおきます。受動喫煙の防止は、すでに実現していなくてはいけない当然の義務であり、これを見出しにもってくるのは一種のまやかしと言えます。

>たばこが原因で死ぬ人は、一年間に世界で約五百万人、日本では約十一万四千人といわれます。
>そこで、たばこの害から健康を守ることを目的とした「たばこ規制枠組み条約」が、二月末から
>効力を持ち始めました。日本など条約を結んだ国は、たばこの害に取り組む約束を守らなければなリません。

(この部分に対するコメントとその続きは明日の記事に)