(前日の記事よりつづく)
>たばこが原因で死ぬ人は、一年間に世界で約五百万人、日本では約十一万四千人といわれます。
>そこで、たばこの害から健康を守ることを目的とした「たばこ規制枠組み条約」が、二月末から
>効力を持ち始めました。日本など条約を結んだ国は、たばこの害に取り組む約束を守らなければなリません。
どうか考えてみてください。
コンビニやスーパーに並んでいる商品の中で、その商品を「定められた正しい使い方で」使うことによって購入した人の2人に1人が亡くなっていて、毎年世界中で500万人もの犠牲者を出している上に、購入するのに許可もいらず、アジアの東の果ての島国では60万台もの違法野放し状態の自動販売機で未成年が自由に買うことができる、そんな商品が他にあるでしょうか。
しかもこの死者数は毎年増え続けていて、2030年には毎年1000万人が亡くなると推計されているのです。
日本は先進国ではトップクラスの喫煙大国で、成人男性の約半分、男女合わせて約3000万人もの喫煙者がいるのです。その中で青森県は更に喫煙率が高く、平均寿命はダントツで最下位です。県が行った調査によると、20代女性の喫煙率は全国の16%に対して、青森県では55%という信じがたい数字になっています。(この種の調査は方法などで変動要因が大きいのですが、それを差し引いても高すぎます。)
これらの原因は「人々がタバコを好き勝手に入手しているから」ではありません(タバコ会社は裁判でそのように主張していますが)。タバコ産業が先進国から途上国へ、貧しい国や飢えた人々へ、成人男性から未成年や女性へと販路を拡大し続けているからです。もちろん日本も例外ではなく、自動販売機を撤去できない最大の理由は未成年への販売が全体の6分の1という大きなマーケットになっているからです。
大人は「タバコのある社会」「タバコを自由に吸うことができた社会」に慣れっこになっていて疑問に思わない人が多いようですが、この話を中学生にすると必ず「それならどうしてタバコなんて売っているのか?」と質問されます。
それが正しい疑問で、その疑問をもつことが「普通」なんです。
この記事の表現では、タバコがこれからもこの世の中に普通に存在して売られ続けることを前提にして、『たばこの害から健康を守る』ことが条約の目的のように書かれていますが、決してそうではありません。タバコがこんなに入手しやすく大量に作られ売られている現状に対して、この条約は世界中の国が結束してタバコ産業の活動を抑えようとすることが真の目的です。言葉を返せば、国際条約を作らなくてはいけないくらいタバコ産業の力が強かったということであり、メディアが及び腰の記事しか書けないのも、広告費というタバコマネーの力が強大なものだからです(東奥日報の例はこちら)。子ども向け記事だからではなく、子ども向けだからこそ「狙われているのは子どもだ」という真実を書かないといけないのです。
しかし、FCTC に批准したことで大きな転換点を過ぎ、その力関係も逆転へと向かいつつあります。
もう一つ、日本と諸外国との決定的な違いがあります。
諸外国では、国や州の政府がタバコ規制のための法律を制定したり、医療費の増大や情報隠しなどでタバコ会社を訴えたりしているのですが、日本では政府が日本たばこ(JT)の筆頭株主で半数以上の株を所有している事実上の国営会社であり、「たばこ事業法」という法律でタバコ産業を育成・奨励するように定めているのです。
そして、タバコ病訴訟では、国はJTを訴えるのではなく、逆に一緒に訴えられている上に、JTが「受動喫煙の害は確立していない」とか「喫煙者が肺がんになったのは個別の因果関係は問えず自己責任だ」と主張してることを事実上認めているのです。(もちろんこのような主張は世界中のどこに行っても笑いものになるだけです)
さらに、日米独の3国政府は FCTC 制定のための会議で、国民の健康を守るために厳しい規制を制定するよう働きかけるのではなく、国民の健康を犠牲にしてタバコ産業の利益を守るために規制を緩やかなものにするよう圧力をかけ続け、世界各国から“悪の枢軸”と非難されたという事実を、国民のほとんどは知りません。
この構図は、水俣病や薬害エイズと全く同じで、諸外国が30年も前にきちんと規制を始めているのを知りながら放置し、健康被害を拡大し死者の山を築き続けてきた(現在も続けている)という悪質なものです。
私も昔は、ただ「タバコは健康に悪いもので肺がんになりやすい」とか「未成年が吸わないようにさせたい」といったお題目程度のことしか理解していませんでした。しかし、ここに書いたような「日本の常識は世界の非常識」という現状を理解するにつれ、これは企業と国家による犯罪行為であり、医師としてこの状態に対して何も行動を起こさないのは共犯と言っても過言ではないと確信するようになったのです。(ちなみに『バカの壁』の養老氏の考えは全くその逆で「禁煙運動はナンセンスで必要ない」と発言し続けています。バカの壁を書いた本人がバカの壁を築いているとしか考えられないのですが、、もちろんご本人は喫煙者です。)
皆さんの大切なご家族やお子さんが、タバコにとらわれた一生を過ごして毎日お金をタバコ会社に貢ぎ続け、そのあげくに平均して10年も老化を早めて寿命を縮める(※)などという馬鹿げた罠に陥らないように、そして、受動喫煙や妊娠中の喫煙によって、乳幼児の突然死や流早産をはじめとして、喘息や気管支炎、中耳炎、知能低下や低身長、問題行動や少年犯罪などの深刻な被害を受け続けている子どもが一人でも減るように、今後も地道に活動していきたいと考えています。
具体的にすぐにでも実現しなくてはいけないのは、
1.屋外タバコ自動販売機の撤去(IC識別カード自販機はまやかしの対策です)
2.タバコ税大幅増税を行い、諸外国並みの800円~1000円にする
3.健康増進法の改正(罰則規定追加)と、たばこ事業法の撤廃
4.タバコ税収の一部を用いてタバコ農家の転作支援を強力に推し進める
5.全ての小中学校における防煙(喫煙予防)教育
などで、その他にも個人のレベルから国や世界のレベルまで、やらなくてはいけないことは山積していますが、一人ではとてもできることではないので、懇談会というネットワークをつくって活動しているのです。
5月31日の WHO 世界禁煙デーを記念して、6月18日に青森市のアスパムで「脱タバコ元年 無煙社会を目指して」と題して講演会と県内の取り組みの報告会を開催します。当日は午後休診となりますのでご了承下さい。
※ 20歳で吸い始めて元々80歳の寿命だった人が10年縮まるとすると、残りの人生(60年)が6分の5になるわけで、表現を変えると、1日が20時間に、1年が10か月になったのと同じことです。毎日4時間をタバコに捧げても惜しくはないですか?
>たばこが原因で死ぬ人は、一年間に世界で約五百万人、日本では約十一万四千人といわれます。
>そこで、たばこの害から健康を守ることを目的とした「たばこ規制枠組み条約」が、二月末から
>効力を持ち始めました。日本など条約を結んだ国は、たばこの害に取り組む約束を守らなければなリません。
どうか考えてみてください。
コンビニやスーパーに並んでいる商品の中で、その商品を「定められた正しい使い方で」使うことによって購入した人の2人に1人が亡くなっていて、毎年世界中で500万人もの犠牲者を出している上に、購入するのに許可もいらず、アジアの東の果ての島国では60万台もの違法野放し状態の自動販売機で未成年が自由に買うことができる、そんな商品が他にあるでしょうか。
しかもこの死者数は毎年増え続けていて、2030年には毎年1000万人が亡くなると推計されているのです。
日本は先進国ではトップクラスの喫煙大国で、成人男性の約半分、男女合わせて約3000万人もの喫煙者がいるのです。その中で青森県は更に喫煙率が高く、平均寿命はダントツで最下位です。県が行った調査によると、20代女性の喫煙率は全国の16%に対して、青森県では55%という信じがたい数字になっています。(この種の調査は方法などで変動要因が大きいのですが、それを差し引いても高すぎます。)
これらの原因は「人々がタバコを好き勝手に入手しているから」ではありません(タバコ会社は裁判でそのように主張していますが)。タバコ産業が先進国から途上国へ、貧しい国や飢えた人々へ、成人男性から未成年や女性へと販路を拡大し続けているからです。もちろん日本も例外ではなく、自動販売機を撤去できない最大の理由は未成年への販売が全体の6分の1という大きなマーケットになっているからです。
大人は「タバコのある社会」「タバコを自由に吸うことができた社会」に慣れっこになっていて疑問に思わない人が多いようですが、この話を中学生にすると必ず「それならどうしてタバコなんて売っているのか?」と質問されます。
それが正しい疑問で、その疑問をもつことが「普通」なんです。
この記事の表現では、タバコがこれからもこの世の中に普通に存在して売られ続けることを前提にして、『たばこの害から健康を守る』ことが条約の目的のように書かれていますが、決してそうではありません。タバコがこんなに入手しやすく大量に作られ売られている現状に対して、この条約は世界中の国が結束してタバコ産業の活動を抑えようとすることが真の目的です。言葉を返せば、国際条約を作らなくてはいけないくらいタバコ産業の力が強かったということであり、メディアが及び腰の記事しか書けないのも、広告費というタバコマネーの力が強大なものだからです(東奥日報の例はこちら)。子ども向け記事だからではなく、子ども向けだからこそ「狙われているのは子どもだ」という真実を書かないといけないのです。
しかし、FCTC に批准したことで大きな転換点を過ぎ、その力関係も逆転へと向かいつつあります。
もう一つ、日本と諸外国との決定的な違いがあります。
諸外国では、国や州の政府がタバコ規制のための法律を制定したり、医療費の増大や情報隠しなどでタバコ会社を訴えたりしているのですが、日本では政府が日本たばこ(JT)の筆頭株主で半数以上の株を所有している事実上の国営会社であり、「たばこ事業法」という法律でタバコ産業を育成・奨励するように定めているのです。
そして、タバコ病訴訟では、国はJTを訴えるのではなく、逆に一緒に訴えられている上に、JTが「受動喫煙の害は確立していない」とか「喫煙者が肺がんになったのは個別の因果関係は問えず自己責任だ」と主張してることを事実上認めているのです。(もちろんこのような主張は世界中のどこに行っても笑いものになるだけです)
さらに、日米独の3国政府は FCTC 制定のための会議で、国民の健康を守るために厳しい規制を制定するよう働きかけるのではなく、国民の健康を犠牲にしてタバコ産業の利益を守るために規制を緩やかなものにするよう圧力をかけ続け、世界各国から“悪の枢軸”と非難されたという事実を、国民のほとんどは知りません。
この構図は、水俣病や薬害エイズと全く同じで、諸外国が30年も前にきちんと規制を始めているのを知りながら放置し、健康被害を拡大し死者の山を築き続けてきた(現在も続けている)という悪質なものです。
私も昔は、ただ「タバコは健康に悪いもので肺がんになりやすい」とか「未成年が吸わないようにさせたい」といったお題目程度のことしか理解していませんでした。しかし、ここに書いたような「日本の常識は世界の非常識」という現状を理解するにつれ、これは企業と国家による犯罪行為であり、医師としてこの状態に対して何も行動を起こさないのは共犯と言っても過言ではないと確信するようになったのです。(ちなみに『バカの壁』の養老氏の考えは全くその逆で「禁煙運動はナンセンスで必要ない」と発言し続けています。バカの壁を書いた本人がバカの壁を築いているとしか考えられないのですが、、もちろんご本人は喫煙者です。)
皆さんの大切なご家族やお子さんが、タバコにとらわれた一生を過ごして毎日お金をタバコ会社に貢ぎ続け、そのあげくに平均して10年も老化を早めて寿命を縮める(※)などという馬鹿げた罠に陥らないように、そして、受動喫煙や妊娠中の喫煙によって、乳幼児の突然死や流早産をはじめとして、喘息や気管支炎、中耳炎、知能低下や低身長、問題行動や少年犯罪などの深刻な被害を受け続けている子どもが一人でも減るように、今後も地道に活動していきたいと考えています。
具体的にすぐにでも実現しなくてはいけないのは、
1.屋外タバコ自動販売機の撤去(IC識別カード自販機はまやかしの対策です)
2.タバコ税大幅増税を行い、諸外国並みの800円~1000円にする
3.健康増進法の改正(罰則規定追加)と、たばこ事業法の撤廃
4.タバコ税収の一部を用いてタバコ農家の転作支援を強力に推し進める
5.全ての小中学校における防煙(喫煙予防)教育
などで、その他にも個人のレベルから国や世界のレベルまで、やらなくてはいけないことは山積していますが、一人ではとてもできることではないので、懇談会というネットワークをつくって活動しているのです。
5月31日の WHO 世界禁煙デーを記念して、6月18日に青森市のアスパムで「脱タバコ元年 無煙社会を目指して」と題して講演会と県内の取り組みの報告会を開催します。当日は午後休診となりますのでご了承下さい。
※ 20歳で吸い始めて元々80歳の寿命だった人が10年縮まるとすると、残りの人生(60年)が6分の5になるわけで、表現を変えると、1日が20時間に、1年が10か月になったのと同じことです。毎日4時間をタバコに捧げても惜しくはないですか?