熊本熊的日常

日常生活についての雑記

感動

2008年09月25日 | Weblog
今日は立川らく朝の独演会を聴いてきた。この人は落語家というよりも、落語が上手い医者なのだろう。技術はあるのだろうが、面白くない。

そのキャリアには目を見張るものがある。医師でありながら、44歳で立川志らく門下に客分の弟子として入門。46歳で本来の弟子として入門。50歳で二つ目になり、今年54歳で真打に挑戦。一般に二つ目昇進から真打になるまで20年程度と言われているので、人生経験を積んでからの入門とは言え、これで真打になれば異例の速さでの昇進である。

既に真打だの二つ目だのという落語家の身分制度は形骸化しているとも言われているが、それでも真打の芸と二つ目のそれとの格差は決して小さなものではない。ただ、形骸化ということの意味は、芸の質が真打にふさわしい水準に至っていなくても、観客動員力のある落語家が少なくないということなのである。

今日のゲストである立川談春によれば、らく朝の観客動員力は真打並なのだそうだ。今日の独演会もほぼ満席である。ただ、会場が新宿の駅前という立地条件は勘案しなければならないだろう。

らく朝が果たして真打に値するのか否かはさておき、44歳にして新たな道に挑戦するという決断は尊敬に値すると思う。医師というのはいろいろな意味で激務である。その仕事を続けながら落語家の弟子になるというのは、容易な決断であったとは思えない。芸事というのも、やはり激務であると思う。その落語を聴く限り、日々の並々ならぬ稽古のあとが窺える。どちらの仕事にも全力で向き合っていることがなんとなく伝わってくるのである。その一生懸命な生き方に心動かされるものがある。

今日も、昨日の独演会とは別の意味で、良い経験をさせていただいた。