栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

物事を見る場合に大事なのは視点。

2010-09-12 15:15:57 | 視点
 サルスベリ、漢字で書けば百日紅。
サルスベリと百日紅、同じ木だが見ている箇所の違いが文字の違いになっている。

 百日紅(ひゃくじつこう)は花の方。
夏から秋にかけて長い期間(百日近くという意味)咲いている紅色の花ということから付けられた名前。

 もう一方のサルスベリは花ではなく幹を見た印象。樹皮が取れツルツルしていて、これでは猿も滑って登れないだろうということから付けられた。
 百日紅は中国語で、サルスベリは日本語。

 同じものでも見る箇所によって違って見えることは多い。
だからこそ、どういう視点で見るかが大事になる。
それと同時に、物の一面だけを見ると判断を誤るということだ。
美しいバラには刺があるし、きれいなサルスベリの花も幹に目を落とすと樹皮が剥がれてツルツル。

 これと似たことがいま民主党代表選で行われている。
マスメディアによる世論調査では菅さんの支持が高いようだが、それは花の部分を見ているからではないだろうか。

 権力志向は小沢、菅両氏では菅さんの方が圧倒的に強い。
社民党の田英男氏は早くからそのことを見抜いていた。
 菅さんは市民運動出身ということを売り物にしているが、それはサルスベリで例えれば花の部分。本質は幹の部分で権力への執着である。
 田さん、菅さんが共に社民連にいた頃だと思う。
菅さんが田さんのところに来て、「何でもいいから役職をください」と言ったそうだ。
その時、田さんは活動するのに役職があった方が動きやすいからなのだろうぐらいにしか考えていなかったらしいが、その後の菅さんを見ていて、この男は違う、と思ったようだ。
 だから、その後社民党が民主党との合併を誘われた時も、菅がいる民主党とは絶対に合併しない、と反対したそうだ。
 田さんはジャーナリストとしての目から、菅直人という男の本質をきれいに見える花の部分ではなく、幹の部分にあると見抜いていたわけだ。

 菅さんの罪が大きいのは首相就任後約3か月何もせずに来たことだ。
それというのも彼の頭の中には最高権力の座に座ることしかなかったから。
高校生が大学へはいるのが目的で、入学後は目標を見失ってしまうのと似ている。
彼にはこの国をどうしたいというものがなかった。
ただ首相の座に着きたいだけだったのだ。
こんな人が国のトップに居座っている国民は不幸である。
早く変わってもらった方がいい。

 とにかく彼は場当たり的。
先の参院選で突然、消費税増税問題を持ち出してみたり、今回は選挙対策であちこちの工場を視察してみたり、「1に雇用、2に雇用、3に雇用」と叫ぶだけ。
 雇用を増やすには企業、とりわけ中小企業を元気にしなければいけないし、そのためには円高を阻止、脱デフレ政策をとらないとダメだが、その政策を話さない、明らかにしない。
 とはいえ、今回の代表選でよかったのは小沢氏に対抗するため、いままで何もしなかった政策を急に実行し出したり、経済対策をやっと考え出したことだ。

 一方の小沢氏。
見てくれやイメージは悪いが、言っていることがブレない。
中小企業の某経営者が言っていた。
「仮に小沢が負けると、きっと何年か後に『ああ、あの時小沢を選んでおけばなあ』ときっと後悔するに違いない」

 小沢氏の弱点はマスメディアによって強調されたイメージの悪さ。
それもこの所の討論会でコメンテーターなども随分評価を変えてきたが、一度作られたイメージはなかなか壊せない。
もし小沢氏に、このイメージ的な悪ささえなければ、いまの難局を突破できるのは彼しかいないという認識では大多数の人が一致しているわけだから、小沢氏圧勝で終わるのだろうが。

 人間は重要な局面でムードに流され判断を失ったことが多々ある。
小泉「改革」の時もそうだ。
彼は「自民党をぶっ壊す」と言って国民の圧倒的な支持を得たが、「ぶっ壊した」のは自民党ではなく派閥と国民の生活。
それなのに国民の大多数は訳も分からず熱狂的に小泉氏を支持した。

 さて、後数日で民主党代表選の結果が出る。
果たして民主党員は樹のどこを見て決めるのか。


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