東日本大震災の記憶を風化させてはならない――。その思いを込めて宮城県気仙沼市にあるリアスアーク美術館の学芸員たちがカメラで記録した写真の巡回展が、名古屋市民センター栄で開かれています。
11日(日)までです。
リアスアーク美術館は1994年に、宮城県が地域住民の美術文化に親しむ場にと開設。三陸沿岸のリアス式海岸と、ノアの箱舟の呼称でもある「アーク」とって名付けたそうですが、2011年3月11日に発生した東日本大震災の記憶を未来に繋ぐための発信基地、という大きな役割を加わえました。
地震発生から約2年間、学芸員らが気仙沼市と南三陸町を中心に記録。被災現場の写真203点、被災物155点、その他の歴史資料など計約500点を常設展示しているそうですが、名古屋巡回展では名古屋市民ギャラリーの2つの部屋を使って写真を中心に展示しています。
時速40~50キロで襲ってきた大津波は一瞬にのみ込みました。人々の命、家屋、学校、役所、寺、神社、魚市場、商店街、漁船、車、線路、列車、駅・・・万物すべてです。
単なる物体となったがれきの山。呆然とたたずむ人。写真には場所や撮影日とともに撮影者の思いなどコメントを記したプレートが添付されています。
「天災は忘れた頃にやってくる」。科学者・寺田寅彦の言葉通り、三陸でも過去には明治三陸地震(1896年)、昭和三陸地震(1933年)などがあり、そして2011年の東日本大震災でした。
今回の写真展にあった倒れた石碑の写真が目に止まりました。昭和三陸地震の後に、大津波への教訓として建てられていた石碑です。そこには大きくこう刻まれています。「地震があったら 津波の用心」
添付された撮影者のコメントにはこうありました。「先人たちが発した警告を、我われは受け止められていただろうか」と。
昭和三陸地震のあと建てられていた「地震があったら 津波の用心」と刻まれています