「質屋」を観た。この映画はわたしのベストワンだった。次に「すきなのが怒れる11人の男たち」.....40年ぶりに観て驚いた。わたしは たしかに青い空.....を見たと思ったのに 映画はモノクロだった。白い雲 蒼い空 草原のピクニック うつくしい妻 子どもたち 両親......そこへナチスがやってくる。男はすべてを失った。目の前で妻がドイツ兵に犯された。どうすることもできなかった。ニューヨーク 教授だったユダヤ人の男は質屋のオヤジになっていた。週一度木曜日 所轄の刑事が金を取り立てにくる。貧しいひとたちがひきもきらず 質草を持ってお金を借りにやってくる。フラッシュバックのように過去がよみがえり男を苦しめる。やさしい妻。幼い息子 家族を守れなかった自分。男はなにも信じてはいなかった。正義も愛も芸術もなにもかも......お金だけだった。その金も実は売春宿の上がりからくる不浄の金と男は知る。質屋は暗黒街のボスの事業の隠れ蓑になっていたのだ。
そんな男を慕っていたのはジーザスという若い店員だった。.....が 彼は 強盗の手引きをしてしまう。仲間が男に銃を向けたとき ジーザスは男を守ろうとして 銃で撃たれ 血にまみれて死ぬ。男は自分のためにジーザスが死んだことを知り メモ刺しの鉄の針でわが手を刺し貫き おもての雑踏へふらふらと出てゆく。
若かった わたしは この映画を 回心をテーマにした映画と思っていた。わが子を失った男が 息子のような......生きていたらそのくらいになっていたであろういはば 息子の身代わりのような店員の無償のわが身を投げ出す愛で 蘇生した 甦った男のものがたり 再生のものがたりとずっと思っていた。
だが 別の見方もできるのだった。わが罪で キリストを殺した男の贖罪のものがたりと そう見ることもできる。衝撃だった。.......それは 今 わたしが 自分のうちの罪に気づいたからかも知れなかった。ものがたりはこんなにも変容するのだった。
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