石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス篇2 埋蔵量(2)

2012-07-18 | その他

本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0233BpGas2012.pdf

 

(埋蔵量は30年間で2.5倍、可採年数は60年台で安定!)
(2)1980~2011年の埋蔵量及び可採年数の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-1-G02.pdf参照)
 1980年末の世界の埋蔵量は81tcmであったが、2011年末のそれは208tcmであり、この30年間で埋蔵量は2.5倍に増加している。1980年から2011年までの埋蔵量の推移は、1989年、2001年及び2010年と言うほぼ10年毎の大幅な増加を挟み4期に分けることができる。

 1980年代は年率平均4%の割合で伸び、1988年末の埋蔵量は109tcmに達した。そして1989年には対前年比12%と大幅に増加し、同年末の埋蔵量は122tcmとなった(第1期)。その後1990年代は年間成長率が平均2%とやや鈍り1999年末の埋蔵量は149tcmであった(第2期)。2001年は前年比9.7%増大し同年末の埋蔵量は169tcmに達したが、2002年以降2007年までは年間成長率が1%以下に停滞している(第3期)。2008年から埋蔵量は再び増加の兆しを見せ2010年及び2011年の対前年比伸び率はそれぞれ4.7%、6.3%であり現在は第四期の成長期となっている。

 一方可採年数の推移をみると1980年から現在に至るまで60年前後で殆ど変化していない。上に述べた通り1980年以降現在まで可採埋蔵量は一貫して増加しており、消費量も大幅に伸びている(後述)。消費量が急激に増加するなかで可採年数が横這い状態となっているということは、世界各地で新しいガス田が発見され、或いは技術革新により従来商業生産が難しいとされていた資源が生産されるようになったことを意味している。前者の新規発見の例としては中央アジアのトルクメニスタン或いはロシアの北極海における大型ガス田の発見などがあり、後者の技術革新の例としては米国のシェールガスの開発をあげることができる。

(昔も今も欧州・ユーラシアと中東が二大埋蔵地域!)
(3)地域別の埋蔵量推移(1980年~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-1-G03.pdf参照)
 埋蔵量の推移を地域別に見ると、1980年は欧州ユーラシア地域が世界全体の41%を占め最も大きく、次いで中東地域が30%であった。この2地域が世界の埋蔵量の7割強を占める構図は2011年まで変わっていないが、欧州ユーラシア地域の比率は1990年代初めに43%に上昇した後、徐々に低下し2007年末には32%まで低下、その後再び上向き2011年のシェアは38%になっている。これに対して中東地域の世界に占めるシェアは1980年の30%から2000年代は40%を超える状態であり、2011年末は38%であった。

 1980年に世界の12%を占めていた北米地域のシェアは2011年には5%に落ち込んでいる。アフリカ、アジア・大洋州及び中南米のシェアは過去30年間殆ど変化していない。

(トルクメニスタンの埋蔵量は4年間で8倍に増加!)
(4)主な天然ガス資源国の過去10年間の埋蔵量の変化
(http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-1-G04.pdf参照)
 2011年末の天然ガス埋蔵量上位5カ国(ロシア、イラン、カタール、トルクメニスタン、米国)にオーストラリア(世界11位)及び中国(同13位)を加えた7か国の埋蔵量の推移を見ると、ロシア及びカタールは過去10年間の埋蔵量は殆ど変化していない。

 埋蔵量世界2位のイランは2007年から2011年までの間に埋蔵量が28tcmから33tcmに増加している。同国は米国の経済制裁により国際石油企業との合弁事業の道が閉ざされ自前の技術で探鉱開発を行っているが、その技術が時代遅れのものであることは周知の事実である。このような状況下で埋蔵量が増加しているのは石油篇で述べたと同様、イラン政府が政策的に埋蔵量の水増しを行っていると判断せざるを得ない。

 これに対してトルクメニスタンの場合は外国石油企業との全面的なタイアップにより国内で探鉱作業を行った成果が顕著に表われている。同国の埋蔵量は2001年から2007年まで3tcmの水準を維持し、ロシアの10分の1以下であったが、2008年末には一挙に3倍近く増加して8tcmとなり、更に2010年末に13tcm、2011年末にはカタールと並ぶ埋蔵量(24tcm)に達し、わずか4年間で8倍と言う驚異的な伸びを記録している。

 近年国内の探鉱開発作業が活発なオーストラリア及び中国も埋蔵量が着実に増加しており2007年から2011年までの4年間の埋蔵量の年平均増加率はそれぞれ7.9%及び4.3%の高い水準を維持している。

(天然ガス篇埋蔵量完)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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