石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:天然ガス篇4 生産量(2)

2012-07-20 | その他

本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0233BpGas2012.pdf

 

(40年間で生産量が30倍になったアジア・大洋州!)
(3)地域別生産量の推移(1970~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-2-G02.pdf 参照)
 1970年に1兆㎥を超えた天然ガスの生産量はその後一貫して上昇を続け、1994年に2兆㎥、そして2008年には3兆㎥を突破した。2009年は対前年比でマイナスとなったが、2010年、2011年は再び史上最高を更新し、2011年の生産量は3兆3千億㎥弱を記録した。1兆㎥から2兆㎥になるまでは24年かかったが、次の3兆㎥に達するには14年しかかかっていない。このように天然ガスの生産は近年飛躍的に増加しているのである。石油の場合は第二次オイルショック後に需要が前年を下回り続けオイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要していることと比べ(前章石油篇「生産量推移」参照)天然ガスの生産拡大には目を見張るものがある。

 地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産は北米と欧州・ユーラシアの二つの地域で全世界の94%を占めており、残る6%をアジア・大洋州、中東、中南米及びアフリカで分け合っていた。しかし北米を見ると1970年に6,630億㎥であった生産量はその後微増にとどまり、世界に占めるシェアも66%(1970年)から26%(2011年)に低下している。欧州・ユーラシア地域の生産量は1970年の2,819億㎥から急速に伸び、1982年に北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の半分を占めるまでになった。しかし同地域の生産量も90年代以降伸び悩んでおり、2011年の世界シェアは32%にとどまっている。現在も北米と欧州・ユーラシアの二地域が世界の天然ガスの主要生産地であることに変わりは無いが、その合計シェアは58%であり、1970年の94%から大きく後退している。
 
 この二地域に代わりシェアを伸ばしているのがアジア・大洋州と中東である。アジア・大洋州の場合、1970年の生産量は157億㎥でシェアもわずか2%しかなかったが、2011年の生産量は30倍の4,791㎥に増加、シェアも2%から15%に上昇している。また中東も生産量は1970年の199億㎥から2011年には26倍の5,261億㎥、シェアは16%に上がっている。アジア・大洋州或いは中東の生産量は1990年以降急速に増大しているが、特にここ数年加速された感がある。その理由としては生活水準の向上により発電用或いは家庭用燃料としての天然ガスの地域内の需要が増加したことに加え、これまで先進外国市場から遠いため困難であった輸出が、近年では液化天然ガス(LNG)として市場を拡大しつつあることをあげることができる。

世界的にみると天然ガスの対前年増加率は3~4%前後と石油生産の伸び率を上回っており、石油から天然ガスへのシフトが進んでいる。天然ガスは石油よりもCO2の排出量が少なく地球温暖化対策に適うものと言えよう。この点では今後クリーンエネルギーである原子力或いは再生エネルギーとの競合が厳しくなると考えられる。但し原子力は福島原発事故問題を抱え、再生エネルギーもコストと安定供給が弱点である。その意味で天然ガスは今後世界のエネルギー市場でますます重要な地位を占めるものと考えられる。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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