石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

グローバルサウスに傾斜する中東北アフリカ諸国(MENAの多国間関係)(18)

2023-10-11 | 中東諸国の動向

5. エネルギー連携

 

(脱炭素勢力と最後の決戦に臨む石油カルテル!)

5-1. OPEC(石油輸出国機構)

 OPEC(石油輸出国機構、Organization of the Petroleum Exporting Countries)は現代世界で最も大きな影響力を持つ組織の一つと言って過言ではないであろう。OPECは単に経済的な力だけではなく、時には国際政治を動かす力すら持っている。

 

 OPECは1960年、イラン、イラク、クウェイト、サウジアラビア及びベネズエラの5カ国により結成された。当時国際石油市場は販売、価格などすべての面で「セブン・シスターズ」と呼ばれる欧米の巨大石油企業に独占されていた。これに対して「資源はそれを保有する国家のものである」とする国連決議に力を得て中東の産油国が立ち上がり、価格支配力の奪還を目指したことがOPECの始まりである。世界経済の高度成長の波に乗りエネルギー、特に石油が売り手市場になったこともあり、OPECは世界のエネルギーを左右する存在へと駆け上がり今に至っている。

 

 現在OPECの加盟国は13カ国であり、オーストリアのウィーンに本部を置いている。生産量が多いのは上記創設メンバー5カ国のほかUAE(アラブ首長国連邦)、ナイジェリア、アルジェリア、リビア、アンゴラなどである。

 

 議長国は毎年持ち回りで担当、12月に総会を行うほか、随時閣僚会合を開いている。後述するように最近はロシアなどOPECに加盟していない10か国を交えたOPEC+(プラス)会合がこれに取って代っている。

 

 世界の石油生産量に占めるOPECのシェアはかつて5割近くに達したこともあるが、現在は4割弱に低下している。これにより石油市場におけるOPECの存在感が弱まった。OPEC+の結成はそれを補うものとなっている。

 

 さらに同じ化石燃料の中で天然ガス(LNG)が目覚ましい成長をとげ、さらに地球温暖化問題で石油・天然ガスから原子力を含む非炭素燃料へ、さらには太陽光、風力など自然エネルギーへの転換が推奨されるに至って石油消費に対する世論が厳しく、産油国は逆風に晒されている。

 

 しかし現在のところ自然エネルギーは価格が高く供給が不安定であるという弱点を抱えており、石油の優位性は消えていない。OPECはエネルギー革命の最後の決戦に臨んでいると言えよう。

 

 OPEC加盟国のほとんどは国家財政の多くを石油収入に頼っており、カルテルによって高価格を維持することが必須である。サウジアラビア、UAEなどMENAの産油国は特にその傾向が強い。OPECは中東産油国の生命線と言える。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                     E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(63)

2023-10-11 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第2章 戦後世界のうねり:

 

063ゲリラになるか?難民になるか? 彷徨えるパレスチナ人(4/4)

落ち延びたのはPLOという組織だけではない。ヨルダンに避難したパレスチナ人の個人々々も同様である。しかし避難先のヨルダンは貧しく、とても安住の地と言える場所ではなかった。ある者は豊かな生活を求めて更なる移住を目指す。そのころ丁度クウェイトやイラクで石油開発ブームが始まろうとしていた。彼らは出稼ぎ者として産油国に押しかけた。こうしてパレスチナ人の選択肢は二つに分かれた。PLOと行動を共にしてゲリラ戦闘員になるか、さもなくば家族を連れて異国を渡り歩くか、のいずれかであった。

 

第一次中東戦争(イスラエル独立戦争)でヨルダン川西岸のトゥルカルムからヨルダンに難を逃れた教師のシャティーラ一家と医師のアル・ヤーシン一家は今度も行動を共にして第二次中東戦争(スエズ戦争)が勃発した1956年、クウェイトに移った。豊かな石油収入で国造りを目指すクウェイトは教育と医療に力を入れ高給を餌に多数のアラブ人を招き寄せたからである。

 

パレスチナ人は二千年の昔のユダヤの民のごとくディアスポラ(離散)の民となった。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする