5. エネルギー連携
(脱炭素勢力と最後の決戦に臨む石油カルテル!)
5-1. OPEC(石油輸出国機構)
OPEC(石油輸出国機構、Organization of the Petroleum Exporting Countries)は現代世界で最も大きな影響力を持つ組織の一つと言って過言ではないであろう。OPECは単に経済的な力だけではなく、時には国際政治を動かす力すら持っている。
OPECは1960年、イラン、イラク、クウェイト、サウジアラビア及びベネズエラの5カ国により結成された。当時国際石油市場は販売、価格などすべての面で「セブン・シスターズ」と呼ばれる欧米の巨大石油企業に独占されていた。これに対して「資源はそれを保有する国家のものである」とする国連決議に力を得て中東の産油国が立ち上がり、価格支配力の奪還を目指したことがOPECの始まりである。世界経済の高度成長の波に乗りエネルギー、特に石油が売り手市場になったこともあり、OPECは世界のエネルギーを左右する存在へと駆け上がり今に至っている。
現在OPECの加盟国は13カ国であり、オーストリアのウィーンに本部を置いている。生産量が多いのは上記創設メンバー5カ国のほかUAE(アラブ首長国連邦)、ナイジェリア、アルジェリア、リビア、アンゴラなどである。
議長国は毎年持ち回りで担当、12月に総会を行うほか、随時閣僚会合を開いている。後述するように最近はロシアなどOPECに加盟していない10か国を交えたOPEC+(プラス)会合がこれに取って代っている。
世界の石油生産量に占めるOPECのシェアはかつて5割近くに達したこともあるが、現在は4割弱に低下している。これにより石油市場におけるOPECの存在感が弱まった。OPEC+の結成はそれを補うものとなっている。
さらに同じ化石燃料の中で天然ガス(LNG)が目覚ましい成長をとげ、さらに地球温暖化問題で石油・天然ガスから原子力を含む非炭素燃料へ、さらには太陽光、風力など自然エネルギーへの転換が推奨されるに至って石油消費に対する世論が厳しく、産油国は逆風に晒されている。
しかし現在のところ自然エネルギーは価格が高く供給が不安定であるという弱点を抱えており、石油の優位性は消えていない。OPECはエネルギー革命の最後の決戦に臨んでいると言えよう。
OPEC加盟国のほとんどは国家財政の多くを石油収入に頼っており、カルテルによって高価格を維持することが必須である。サウジアラビア、UAEなどMENAの産油国は特にその傾向が強い。OPECは中東産油国の生命線と言える。
(続く)
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