(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0586MenaMultiDiplomacy.pdf
5. エネルギー連携
(ガスOPECになり損ねたGECF!)
5-4. GECF(天然ガス輸出国フォーラム)
GECF (Gas Exporting Countries Forum, 天然ガス輸出国フォーラム)は2001年にロシアのプーチン大統領がカタールなど天然ガスの輸出国に呼びかけたことに始まる。当初は情報交換を目的に定期的なフォーラムを開催するにとどまっていた。
2008年のモスクワ会合で参加11カ国によりフォーラムの憲章が採択され、常設事務局をカタールに置く正式な国際機関として発足した。下記の通り正式メンバーは11カ国、オブザーバーは8カ国である。
*GECF加盟国(2023年10月現在、アルファベット順)
正式メンバー(11カ国):
アルジェリア、ボリビア、エジプト、エクアトール・ギニア、イラン、リビア、ナイジェリア、カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ、ベネズエラ、
オブザーバー(8カ国):
アンゴラ、アゼルバイジャン、イラク、モザンビーク、マレーシア、ノルウェー、ペルー、UAE
2008年当時、原油価格は過去最高の140ドル/バレルに急騰し天然ガスも連動して高騰、消費国はGECFが天然ガスのOPEC版に変貌するのではと言う強い懸念を抱いた。現在もその懸念が払しょくされた訳ではないが、GECFの動きを見る限りでは加盟国間の結束が堅いとは言えない。
GECFがガス生産国カルテルにならない理由をOPECと比較した場合、(1)OPECはセブン・シスターズなど欧米消費国の国際石油企業を国営化する資源ナショナリズムからスタートしているのに対し、天然ガス生産国は当初から販売量、価格の決定権を握っていたことが指摘できる。また、天然ガス貿易はロシアのように西欧消費国をパイプラインで直結する方式とカタールのようにLNGとして輸出する二つの形式があり、それぞれ価格決定メカニズム、契約形式が異なるため、カルテルとして一致した行動をとるのが難しい、ことなどがあげられる。
天然ガスは世界的な脱石油の潮流の中で潜在需要が高い。その一方で脱炭素社会、自然エネルギー志向は天然ガスにも逆風となっている。相反する動きの中でGECFが今後どのような方向を目指すのか目が離せない。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp