石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

グローバルサウスに傾斜する中東北アフリカ諸国(MENAの多国間関係)(19)

2023-10-13 | 中東諸国の動向

5. エネルギー連携

(脱石油の過渡期に売り手の最大利益を追求するサウジとロシア!)

5-2. OPEC+ (OPECプラス)

 OPEC+(プラス)とは、OPEC13カ国及びOPECに加盟していない10カ国による原油生産カルテルを指す。非OPEC10カ国はロシアを筆頭にメキシコ、カザフスタン、オマーン、アゼルバイジャン、マレーシア、バハレーン、南スーダン、ブルネイ及びスーダンの各国であるが、生産量はロシアが約1千万B/Dと圧倒的に多く、これに次ぐのはメキシコ及びカザフスタンが170万B/D前後、その他7カ国は百万B/D以下である。前項に触れた通りOPEC各国の生産量もサウジアラビアが1千万B/D以上と飛びぬけて多い。このためOPEC+は実質的にサウジアラビアとロシアが取り仕切っている。

 

 OPECと非OPEC産油国が協調減産を始めたのは2016年12月に翌年1月以降合わせて180万B/Dを減産することに合意したのが最初である。両者は毎月合同監視委員会(JMMC)を開催し、その結果を各国の減産を監視し毎月閣僚級会合(OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting, ONOMM)に状況を報告する形式が取られた。

 

 なお実務のための常設機関は無く、OPEC事務局が代行し、プレスリリースもOPECを通じて行われている。その後、市況の変動により紆余曲折を経て現在では、OPEC13カ国のうちイラン、リビア、ナイジェリアを除く10カ国と非OPEC10カ国による協調減産体制となっている。

 

 直近の減産体制は対象20カ国の2022年8月生産量(約4,400万B/D)を基準とし、同年11月以降20カ国合わせて200万B/D減産するものであった。しかし本年はコロナ禍からの景気回復が遅れ石油需要が停滞、原油価格が下落傾向を示したため、OPEC+の二大産油国サウジアラビアとロシアがそれぞれ自主的な減産或いは輸出削減を行っているところである。その結果、最近のブレント原油及びWTI原油価格は90ドル/バレル前後まで上昇、これまでのところOPEC+の加盟国は生産者カルテルとしての利益を十分に享受していると言えよう。

 

(続く)

 

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(64)

2023-10-13 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第3章 アラーの恵みー石油ブームの到来(1)

 

064中東の石油産業の曙(1/4)

 アラブ産油国の人たちはよく「石油は我々の神アラーの恵みである」と言う。それは豊かな富をもたらす石油を与えてくれたアラーに対する純粋な感謝の気持ちであり、同時に石油を持たない他の民族(たとえば日本のような)に対する少しばかりの優越感が発する言葉でもある。実際、世界の産油国の多くはイスラームの国である。

 

イラン、イラク、サウジアラビアは言うまでもない。アルジェリア、リビアなどの北アフリカの産油国もアラブ民族であるとともにイスラームが国教である。サハラ砂漠を越えたナイジェリアもイスラーム教徒が多数を占めている。さらに東南アジアの産油国インドネシアもイスラームの国である。世界の原油生産量の半分近くはイスラームの国々が占め、埋蔵量ベースで見ればその割合はもっと高くなる。彼らが「石油はアラーの恵み」であるというのもあながち的外れではないように思われる。

 

 ただ石油とイスラームの関係は単なる偶然にすぎない。何しろ地中に石油が生まれたのは数億年前のことであり、それに比べると人類が誕生したのはごくごく最近のことになる。だから石油とイスラームを結びつけるのはかなり無理がある。もちろん信仰心の篤いイスラームの人々(ムスリム)からすればすべてこの世はアラーの御業と言いうことになるのであろうから、アラーがムスリムたちのために太古の昔に石油を地下に作りおいてくださった、と言うことになるのであろうか。科学的無神論(智)と信仰(心)の論争は常に水掛け論である。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

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