石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油と中東のニュース(10月19日)

2023-10-19 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・カタール、シェルとLNG供給契約締結。年間350万トン、27年間

・アブダビADNOCと日本JERAが6.9憶ドルのLNG契約締結

 

(中東関連ニュース)

ガザ紛争関連:

・ガザ地区空爆の死者3,300人、負傷者13,000人に

・イスラム世界に広がるイスラエルに対する抗議活動

・イランハメネイ最高指導者:イスラエルの犯罪続けば抵抗運動制止不能

・イスラエル、ガザ-エジプト間の検問所開放に同意。支援物資搬入ルート開く

・イスラエル:ガザ地区病院爆破はハマスと異なる過激派の誤爆が原因

・サウジ皇太子と岸田首相が電話会談

外務省HP参照。

・上村元サウジアラビア大使をエジプト、ヨルダン、カタールに派遣

その他一般ニュース:

・エジプトでMENA初の中国元建てパンダ債4.8憶ドル発行

・イラン、幼稚園及び小学校での英語、アラビア語等の外国語教育禁止

・サウジACWAパワー社、中国と太陽エネルギー、造水等7件の事業協力

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グローバルサウスに傾斜する中東北アフリカ諸国(MENAの多国間関係)(22完)

2023-10-19 | 中東諸国の動向

(注)本シリーズは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0586MenaMultiDiplomacy.pdf

 

6. その他の連携

 

(実利優先の兄弟愛!)

6-1. Abraham Accord(アブラハムの兄弟)

 

 2020年8月、ワシントンのホワイトハウにイスラエルのネタニヤフ首相、UAEアブダッラー外相及バハレーンのザイヤーニ外相が招かれ、トランプ米大統領(当時)の仲介で国交回復の歴史的な取り決めアブラハム合意が取り交わされた。

 

 アブラハムとは旧約聖書の最初の預言者であり、イシュマイル及びイサクの異母兄弟の父親である。イシュマイルの子孫は後にアラブ民族となり、イサクの息子ヤコブはユダヤ民族の始祖とされている。つまりアブラハムはアラブ民族とユダヤ民族の共通の始祖である。そのためユダヤ国家のイスラエルとアラブ国家のUAE及びバハレーンはアブラハムの兄弟(の子孫)であり、両者の外交関係樹立はアブラハム合意(Abraham Accord)とされたのである。

 

 血統的に兄弟民族であるとは言え、長く故郷のパレスチナを追われた(ディアスポラ)欧州のユダヤ人たちが第一次大戦後、祖国復帰運動(シオニズム)によりパレスチナに戻ると先住民のアラブ住民と激しく衝突した。第二次大戦後にユダヤ人は実力でイスラエルを建国、さらに数次の中東戦争で領土を拡充し、パレスチナ人を追放した。国境を接するエジプトとヨルダンはイスラエルと単独和平を締結したものの、その他のアラブ諸国はイスラエルと鋭く対立し、解決の道筋は全く見通せなかった。

 

 状況を変化させたのがアブラハム合意であり、世界中が驚いた。世界の常識の裏をかくのがトランプ大統領のお家芸である。イスラエルはイスラム教シーア派の大国イランの脅威におびえ、アラブ民族のパレスチナ人の抵抗に手を焼き、彼らを後押しする周辺アラブ諸国との絶えざる緊張関係に悩まされている。UAE、バハレーンとの和解はイスラエルにとって願ってもないことであった。一方UAE或いはバハレーンはどうかと言えば、アラブの大義を前にしてパレスチナ支援の旗を降ろすわけにはいかないが、イランやサウジアラビアに従って唯々諾々と反イスラエルの外交を持続することに疑問を覚え、世論も現状を認めイスラエルの最先端技術を導入する経済的実利に傾いている。外交面ではバハレーンに米第五艦隊の基地があり米国が後ろ盾としてシーア派イランの脅威から守ってくれる。

 

 利害の一致したイスラエルとアラブ2か国は手を結んだ。「アブラハムの兄弟」は友好のキャッチフレーズとして申し分がない。スーダン、モロッコも2か国に続いた。米大統領がバイデンに交代した後も大使館の開設、直行便の開設など関係は着々と強化されてきた。イスラムの盟主サウジアラビアは国王がアラブの大義に執心でイスラエルとの国交回復に慎重であるが、事実上の為政者ムハンマド皇太子は前のめりであり、イスラエルとサウジアラビアの国交回復は目前と言われてきた。

 

 しかしパレスチナ問題は経済的実利で脇に追いやられるほど簡単な問題ではない。ガザ地区を実効支配するハマスがイスラエルに猛烈な反抗をはじめ、これに対してイスラエル軍がガザに侵攻する気配が濃厚である。世界もイスラエル支持とパレスチナ支持に二分し、グローバルサウスの国々はパレスチナを支持している。

 

 「アブラハムの兄弟」は仲直りするどころか新たな兄弟喧嘩を始めた。兄弟喧嘩の仲裁者は見当たらず、しかも多数の人命を危険に晒す泥沼に陥ろうとしている。

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                     E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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