石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

キャッシュフロー残高400億ドルを超えるシェル:2023年7-9月期五大国際石油企業決算速報(6)

2023-11-17 | 海外・国内石油企業の業績

II. 五社の業績比較

ここでは五社の当期利益、売上高、売上高利益率、キャッシュ・フロー及び設備投資を比較する。

 

(対前期増益、対前年同期減益!)

1. 純利益[1](図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-52.pdf 参照)

7-9月期は全社が利益を計上しているが、各社に開きがあり、利益が最も多かったExxonMobilの91億ドルに対しShell 70億ドル、TotalEnergies 67億ドル、Chevron 65億ドル、bp 49億ドルである。ExxonMobilに比べるとShell、TotalEnergies、Chevron 3社は4分の3、bpは2分の1である。

 

前期(4-6月)に比較すると全社増益であるが、前年同期(2022年7-9月)比では、ExxonMobil及びChevronは利益が半減している。これに対しShellとTotalEnergiesはほぼ横ばいである。bpは前年同期5社中ただ1社マイナスであったが今期は他社に見劣りするもののプラスに転じている。

 

(原油価格に左右される売上高!)

2.当期売上高[2] (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-51.pdf 参照)

2023年7-9月期のBrent原油平均価格は86.75ドル/バレルであり、前期(78.05ドル)に比べ11%上昇しているが、前年同期(2022年7-9月)の100.84ドルからは大きく下落している。各社の売上高も油価の変動を敏感に反映している。

 

2023年7-9月期の売上高はExxonMobil の908億ドルが最も高く、これに次ぐのはShell (764億ドル)である。TotalEnergies、bp及びChevronはいずれも500億ドル台で並んでいる。ExxonMobilの売上高を100とした場合、Shell 84、TotalEnergies 65、bp 60、Chevron 57である。前項で触れた通り利益面ではExxonMobil、Chevron、Shell、TotalEnergies、Chevron、bpの順であり、ExxonMobilは売上及び利益の両面でトップ企業の貫録を示している。

 

(最高はChevronの12.6%、最低のbpも9.1%の利益率!)

3.当期売上高利益率 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-53.pdf 参照)

IOC5社の今期売上高利益率はChevronが12.6%と最も高く、これに続いてTotalEnergies(11.3%)、ExxonMobil(10.0%)が二桁台の利益率を達成している。Shell及びbpもそれぞれ9.2%、9.1%の好調な利益率を記録している。

 

前期(4-6月期)或いは前年同期(2022年7-9月期)と比較すると、Chevronは前期12.7%、前年同期17.7%と高い利益率を維持している。これに対しExxonMobilは前期9.5%、前年同期17.5%であった。TotalEnergies は今期(11.3%)、前期(7.3%)、前年同期(9.6%)であり今期の利益率が最も高い。ShellもTotalEnergiesと同様今期の利益率が最も高い。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

[1] 「純利益」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)

Shell:Incom/loss attributabel to shareholders

bp:Profit (loss) for the period; Attributable to BP shareholders

TotalEnergies:Netincome (TotalEnergies share)

Chevron:Net income

[2] 「売上高」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Total revenues and other income

Shell:Revenue

bp:Total revenue and other income

TotalEnergies:Sales

Chevron:Sales and other operating revenues

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(79)

2023-11-17 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第3章 アラーの恵みー石油ブームの到来(16)

 

079 富の分け前を求めて湾岸産油国に殺到する出稼ぎ(4/4)

その頃、クウェイトとサウジアラビアの中立地帯で石油の開発に乗り出した日本企業も人材が必要になり、数度にわたり募集広告を出した。1961年の最初の募集でアミン・シャティーラが採用され、その後ザハラも1968年に採用された。二人はともにパレスチナ難民であったが、応募書類のアミンの国籍欄はパレスチナのままであり、ザハラの国籍はヨルダンとなっていた。アミンの父親はパレスチナ人であることを誇りとし、いつか故郷のトゥルカルムに戻り教師を続けられる日の来ることを信じて国籍を変えなかった。一方ザハラ一家は数次の中東戦争を経て故郷の農地を取り戻すことはもはや不可能であると悟り、仕事を得るのに少しでも有利なようにと国籍をヨルダンに変更していた。彼らは以後パレスチナ系ヨルダン人と呼ばれることになる。

 

ヨルダン人のカティーブも転職組の一人であった。中東の石油会社は給料も良く、なによりも社会的な地位が高い。カティーブが故郷アンマンの両親に石油会社への転職を伝えると両親は手放しで喜んだ。ただ両親はその石油会社が名も無い日本企業であることに若干の違和感を抱いたが、第二次大戦後も欧米に踏みにじられたままのアラブの現状を思うと、廃墟から不死鳥のごとく蘇った日本に一抹の清涼感を覚えたのであった。

 

祖国パレスチナの復活を信じたパレスチナ人、ヨルダンに帰化して新しい人生を目指したパレスチナ系ヨルダン人、そして将来の豊かな生活を夢見るヨルダン人 ― 3人のアラブ人は運命に引きずられつつペルシャ湾沿岸の小さな町で日本の石油会社の従業員として同じ職場で働くことになったのであった。

 

(続く)

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする