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(アラビア語版)
(目次)
第3章 アラーの恵みー石油ブームの到来(19)
082 第四次中東戦争ー智将サダトの登場 (3/4)
サダトは合理的かつ緻密な手法でイスラエルに「一泡吹かせる」戦略を考えた。その戦略とは敵の裏をかいて短期間で戦果を挙げることであった。周囲を敵に囲まれたイスラエルは常に油断を怠らない。さらに実際に戦端を開きそれが長期化するとアラブ側に全く勝ち目が無いことはこれまでの中東戦争で明らかであった。
そこでサダトはまずイスラエルを油断させる陽動作戦をしかけた。エジプトが攻撃の素振りを見せるとイスラエルは直ちに全国民に動員令を敷いた。これは全くの見せかけでイスラエルは無駄足を踏まされた。この作戦は二度実施され、さすがにイスラエル国内には厭戦気分が生まれた。さらにこれまでの中東戦争で連戦連勝であったイスラエル国民には慢心と油断があった。
1973年、サダトは隠密裏にシリアにも働きかけ10月6日を期して奇襲攻撃を行うことにした。10月6日には宗教上の大きな意味が二つあった。一つはこの日がユダヤ歴で最も神聖な「ヨム・キプール(贖罪の日)」であったこと、そしてもう一つはイスラーム教徒にとっても神聖な「ラマダン(断食)月」だったのである。世界に名をとどろかせるイスラエル諜報機関すら全く予想だにしないことであった。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com