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(目次)
第3章 アラーの恵みー石油ブームの到来(20)
083 第四次中東戦争ー智将サダトの登場 (4/4)
10月6日、エジプトとシリアの二正面作戦により戦いが始まった。この戦争は通常第四次中東戦争と呼ばれているが、アラブ側は「ラマダン戦争」、イスラエル側では「ヨム・キプール戦争」と呼ぶ。イスラム教とユダヤ教の宗教戦争であることを示している。これまでの中東戦争は1948年の第一次中東戦争が「イスラエル独立戦争」、1956年の第二次中東戦争が「スエズ(運河)戦争」、そして1967年の第三次中東戦争は「6日戦争」と呼ばれた。宗教色を明確に持ち出したのは第4次中東戦争が初めてである。アラブ側もイスラエル側もそれぞれの国民に宗教すなわち「心(信仰)」の絆を思い起こさせることが重要だったに違いない。特に奇襲攻撃を受けたイスラエル側は「ヨム・キプール」の日に奇襲を受けたことは国民を鼓舞するに十分だったと思われる。太平洋戦争のハワイ真珠湾攻撃を米国は宣戦布告のない奇襲とし「リメンバー・パールハーバー」を合言葉に米国民の戦意を駆り立てたのと似た構図である。
奇襲攻撃緒戦のエジプト・シリア合同軍は破竹の勢いであった。しかしサダトはアラブ側の優勢が長続きしないことを覚悟していた。そのため彼はもう一つの作戦を立てた。アラブ産油国を巻き込み石油を武器に欧米やアジアの石油消費国をアラブの味方につけること、それが無理としても少なくともイスラエルと欧米の間に楔を打ち込むことであった。
(続く)
荒葉 一也
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