米国のビジネス誌Fortuneがアラブ世界の大企業500社番付を発表した[1]。アラブ22カ国の500社を売上高(revenue)によってランク付けしたものである。この資料には各社の売上高のほか、利益、資産、従業員数、業態等が示され、また上場企業についてはMarket value(市場総額)も明記されている。アラブ圏の民間経済を理解する一助になると思われるのでここにその概要を紹介する。
*表「1-M-03 Fortune 500 Hundred」参照。
(トップは売上高6千億ドルのサウジアラムコ!)
1.売上高上位10社の顔触れ
上位10社は以下のとおりである。
順位 企業名 国名 売上高(百万ドル) 業種
1 Saudi Aramco Saudi Arabia 603,787 エネルギー(石油、天然ガス)
2 Kuwait Petroleum Corp. Kuwait 106,597 エネルギー(石油、天然ガス)
3 Sonatrach Spa Algeria 60,000 エネルギー(石油、天然ガス)
4 QatarEnergy Qatar 51,903 エネルギー(石油、天然ガス)
5 OQ SAOC Oman 39,152 エネルギー(石油、天然ガス)
6 The Emirates Group UAE 32,620 航空輸送
7 Qatar Airways Qatar 20,836 航空輸送
8 National Bank of Egypt Egypt 20,106 銀行
9 Saudi Electricity Co. Saudi Arabia 19,202 電力
10 QNB Group Qatar 18,503 銀行
番付のトップはサウジアラビアのサウジアラムコ社であり、売上高は6千億ドルを超え、2位クウェイト石油の1,070億ドルを大きく引き離している。両社とも石油の開発・生産・精製・流通を事業とするサウジアラビア及びクウェイトの国営エネルギー会社である。3位から5位までも同じく国営エネルギー会社であり、アラブの5大企業はすべてエネルギー企業である。MENA(中東北アフリカ)地域は世界最大の石油及び天然ガスの埋蔵地帯であることがその背景である。
6位と7位にはUAE及びカタールの航空会社がランク付けされている。売上高はUAEのエミレーツ航空が326億ドル、カタール航空は208億ドルである。さらに8位から10位には銀行(エジプトナショナル銀行及びカタールナショナル銀行)及びサウジ電力が売上高190億ドル前後で並んでいる。
後述する通り上位10社のうち上場企業は1位のサウジアラムコおよび9位(サウジ電力)、10位カタールナショナル銀行の3社のみであり、他は非上場の国営企業である。これらのことからわかるのは、アラブ諸国では石油あるいは天然ガスを生産する国営企業がオイル(ガス)マネーを生み出し、そのマネーで金融業が巨大化し、また国内インフラの基本となる資本集約型の発電事業が発達、さらに対外的な国威発揚策として航空運輸業に資本が投下されていると言えよう。
10位以下について売り上げ規模で見ると、25位のAl Rajhi銀行(サウジアラビア)までが売上高100億ドルを超えており、41位Fertiglobe社(UAE、化学企業)までが50億ドルを超える企業である。152位以下の企業は売上高が10億ドル未満、500位のObeikan硝子会社の売上高は1.3億ドルである。
(続く)
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[1] https://fortunearabia.com/en/Home/Fortune-500-Arabia 参照。