(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
・ドル安とコロナ禍先行き不透明で価格上昇。Brent $67.09, WTI $63.54。
(中東関連ニュース)
・サウジとイランが今月9日にイラクの仲介で会談:F/T報道。
・シリア、5月26日に大統領選挙。米英仏独伊はボイコット呼びかけ。
・イスラエルとギリシャ、空軍教習所新設運営で16.5億ドルの契約締結。 *
・アブダビ企業G42、イスラエル防衛企業RafaelとAIの合弁事業設立。 *
*レポート「敵の敵は味方かそれとも別の敵か? 複雑な中東の合従連衡と離合集散」(2020年10月)参照。
・シリア反体制派のMichel Kilo、亡命先のパリでコロナのため死去。
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0530OpecApr2021.pdf
*「OPEC及びNon OPECの協調減産量(2021年4月現在)」(表1-D-2-35)参照。
2.Required Production (所定生産量):720万B/D削減で始まった1-3月の協調減産
今年1月初めのOPECプラス閣僚会合では1月以降▲720万B/D減産、Required Production(以下Req. Prod.) 3,665.3万B/Dでスタートし以後毎月見直すこととなった。昨年4月の会合では7-12月の削減量は▲770万B/Dとし、今年1月以降は▲580万B/Dに緩和(すなわち770-580=190万B/D増産)することとされていた。しかし2021年以降の需要回復に慎重なサウジアラビアと減産緩和を主張するロシアの主張が対立し、結局今年1-3月は昨年7-12月に比べ50万B/D減産を緩和する(▲770万B/D→▲720万B/D) ことで両者は妥協したのであった。
両国のRef. Prod.は同じ1,100万B/Dとされ、減産量▲720万B/Dを各国に平等に割り当て、減産率は▲17%となった。但し協調減産に当初から頑強に抵抗していたメキシコは今回も減産率ゼロとされた。また減産緩和強硬派のロシア及びカザフスタンに対しては2,3月にかけて合計15万B/Dの減産緩和(すなわち増産)が認められた。
1月の会議直後、サウジアラビアは100万B/Dを自主的に追加減産すると発表して関係者を驚かせた。真意は不明であるが、直前に米エネルギー庁長官が来訪しており、バイデン新政権に押し切られたとの見方もある。OPECプラス会合とサウジの自主減産を合わせると、3月のRef. Prod. はOPECが2,111.9万B/D、Non OPECが1,468.4万B/D、合計3,580.3万B/Dとされた。主な国のReq. Prod.はサウジアラビアが811.9万B/D(自主減産100万B/Dを含む)、ロシアは924.9万B/D、イラク385.7万B/D、UAE262.6万B/D、メキシコ175.3万B/D(協調減産に加わらず当初Ref. Pro.のまま)などである。
3月4日の合同閣僚会合では3月のReq. Prod.を4月いっぱい継続することが決議された。
- 5-7月の協調減産
直近の4月1日の合同会合では5,6,7月の削減量が協議され、OPECプラス合計で5月▲655万B/D、6月▲620万B/D、7月▲575.9万B/D減産され、サウジアラビアの自主減産も5-7月の3か月間で解消されることとなった。この結果7月のOPECプラスのReq. Prod.は3,809.4万B/D(内訳:OPEC2,303.3万B/D、非OPEC1,506.1万B/D)となり、国別の減産率はほぼ一律に▲13.7%に統一されている。国別のReq. Prod.ではサウジアラビアとロシアが同じ949.5万B/Dである。その他主な国ではイラク401.6万B/D、UAE273.5万B/Dクウェイト242.5万B/D等である。
- むすび
先に触れた通り昨年4月の合同会合でha
今年1月以降、2022年4月までの減産幅を▲580万B/Dと決定していた。今回の会合で決定した7月の減産幅▲575.9万B/Dはほぼこの水準に戻ったことになる。
翻ってサウジアラビアとロシアについて今年1月以降の実生産量をOPEC月報あるいはロシア石油省統計で見ると、サウジアラビアの生産量は907.7万B/D(1月)、812.3万B/D(2月)、809万B/D(3月)であり、またロシアは1,017.0万B/D(1月)、976.4万B/D(2月)、1,024.9万B/D(3月)であった。一見するとサウジアラビアの2-3月は100万B/Dの自主減産分を含めてほぼ合意を順守している。一方のロシアはRef. Prod.にオーバーしているように見える。(但し同国石油省の統計にはコンデンセートを含むため原油の厳密な生産量は不明である。)
減産枠を遵守できるか否かの最大の要因は原油価格である。代表的な指標油種のBrent原油の値動きを見ると、1月は平均54.77ドル、2月62.26ドルであり、直近(4月15日)は66.34ドルと堅調である。
コロナ禍の石油需要は流動的であり、またOPECプラス各産油国の生産状況もイラン問題等をふくめ見通しが立ちにくい。毎月開催される合同会合で現在のReq. Prod.が維持されるか否かは予断を許さない。
以上
本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
荒葉一也
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
(中東関連ニュース)
・オマーン、16日から付加価値税(VAT)5%実施。GCCで4番目。
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0529WorldRank5.pdf
(世界ランクシリーズ その5 2021年版)
(突如急上昇したUAE!)
5.2016~2021年の総合ランクの推移
(図http://rank.maeda1.jp/5-G01.pdf 参照)
ここでは中東4カ国(UAE、エジプト、サウジアラビア及びイラン)に日本、中国を加えた6カ国の過去5回の世界ランクの推移を検証する。
この6カ国に共通してみられる傾向は、いずれも前回(2020年)まで長期に低落あるいは低迷してきたことである。特に中国及びイランは過去5回を通じて連続して世界ランクが落ちている。即ち中国の2016年から2020年までのランクは99位→100位→103位→106位であり、イランは139位→140位→142位→148位であった。日本及びサウジアラビアも同様に長期下落傾向にある。日本の場合は2016年に111位であり2017年に114位に下落した後、翌2018年には110位に戻ったが2020年には121位まで落ちている(注、2019年は格差報告がなかった)。サウジアラビアは2017年の世界138位をピークにその後4回連続で順位を下げており2020年の男女格差ランクは146位である。またエジプトも2016年の132位から2020年の135位まで年々低下した。
しかし前回から今回にかけて中国、イラン及びサウジアラビアがさらにランクを下げた一方、日本、エジプト及びUAE3か国はランクが上昇した。日本は121位→120位とわずかなアップにとどまったが、エジプトは135位から129位に上昇している。特に順位の上昇が際立つのはUAEである。同国は前回の120位から今回は一気に72位に急上昇している。同国の各分野ごとの変化を見ると、政治分野が昨年の74位から24位にアップしており、その他の経済、教育、医療分野では大きな変化は見られない。
追記:各分野のスコアとその配分に若干の問題?
WEFの男女格差指数では日本のランクが極めて低く、特に先進国の中で最低のランクとスコアであることはかなりショッキングな内容と言えよう。日本の政治分野の男女格差が諸外国に比べて際立って大きく、また経済分野でも格差の是正が遅れていることはWEFが指摘するまでもなく明らかであり、その点ではWEFの評価に異論を唱えるつもりはない。しかしながら4分野のスコアの配分あるいは各分野において一部開発途上の国々がかなり高いスコアを出していることには若干問題があるように見える。
まず各分野のスコアの偏差値がかなり片寄っていることが指摘できる。例えば政治分野は0.760(アイスランド)が最も高く、0.000(パプアニューギニア/バヌアツ)が最も低い。その格差は0.760である。経済分野も政治分野同様スコアの格差が大きい。これに対して健康分野では最高スコア0.980(ブラジル他29カ国)に対し最低スコアは0.935(中国)であり、格差は0.045に過ぎず、教育分野では格差指数最大の1.000が37カ国にのぼっている。総合順位は各項目を加重平均したものであるため偏差値の大きい政治及び経済分野が全体のスコアと順位に影響を及ぼしていると考えられる。
各分野の国別スコアも問題含みと言えそうである。例えば健康分野の最高スコア0.980を与えられた39カ国の中にはナミビア(因みに同国は総合世界6位)、ボツアナなどアフリカ大陸の国々、あるいはブラジル、ドミニカ、エルサルバドルなどの中米諸国が上がっている。また経済分野では北欧諸国とともにアフリカのブルンジ、ギニア、ザンビアなど多くの開発途上国がトップグループに入っており、これらの国の中には独裁政権も混じっている。
スコア算定のデータは国際機関が発表したものも少なくないが、原始データはいずれも各国政府が提供したものである。各国政府が意図的に脚色したデータを提出してもそれを検証することは困難であり、このような意図的改ざんは独裁政権では極めてありがちである点を指摘しておきたい。(以上はあくまでも筆者個人の私見であることをお断りしておく。)
以上
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
4/13 経済産業省
令和元年度(2019年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(確報)
https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210413004/20210413004.html
4/16 コスモ石油
千葉製油所が特定認定事業者(通称:スーパー認定事業者)に認定されました
https://coc.cosmo-oil.co.jp/press/p_210416/index.html
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0530OpecApr2021.pdf
本年(2021年)1月からOPECとロシアを中核とする非OPEC産油国は新たな協調減産体制のもと、毎月閣僚会合(OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting)をビデオ会議方式で開催し、減産量を調整している。
本稿は昨年12月の閣僚会合で合意[1]されたReference Production(参考生産量)及び1月以降のAdjustment(減産量)並びにRequired Production(基本生産量から減産量を引いた各国生産量)について1月から7月までの決定事項をまとめたものである。
*詳細な数値については「OPEC及びNon OPECの協調減産量(2021年4月現在)」(表1-D-2-35)参照。
協調減産体制に参加しているのは以下の通りOPEC10カ国及び非OPEC10カ国の合計20の産油国である。なおOPEC加盟国のうちイラン、リビア及びベネズエラ3か国は経済制裁あるいは内政の混乱により原油生産が極端な不振状態にあるため協調減産には加わっていない。
OPEC(10カ国):
アルジェリア、アンゴラ、コンゴ、エクアトール・ギニア、ガボン、イラク、クウェイト、ナイジェリア、サウジアラビア、UAE (アルファベット順)
非OPEC(10カ国):
アゼルバイジャン、バハレーン、ブルネイ、カザフスタン、マレーシア、メキシコ、オマーン、ロシア、スーダン、南スーダン(アルファベット順)
- Reference Production (参考生産量)
12月に決定されたReference Production(以下Ref. Prod.)はサウジアラビアとロシアが共に1,100万B/Dである。両国に次ぐ有力産油国の生産量はOPECではイラク(465.3万B/D)、UAE (316.8万)、クウェイト(280.9万B/D)であり、また非OPECではメキシコ(175.3万B/D)、カザフスタン(170.9万B/D)などである。
Ref. Prod.はOPECと非OPEC(以下OPECプラスと略称する)の協調減産が始まった2018年12月に各国の直前の生産量をもとに算定されたものであるが、OPECプラスの二大産油国サウジアラビアとロシアについては今回1,100万B/Dに統一された。この結果12月の合同閣僚会合で20カ国合計のRef. Prod.は4,385.3万B/Dとなり、これが今年1月以降の減産調整の基準となっている。因みにOPECと
非OPECの内訳はOPEC 2,668.3万B/D、非OPEC 1,717万B/Dである。
(続く)
本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
荒葉一也
[1] The 12th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting concludes
2020/12/3 OPEC Press Release
https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/6257.htm
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(コロナウィルス関連ニュース)
(石油関連ニュース)
・IEA、今年の石油需要予測を570万B/D上方修正、9,670万B/Dに。
(中東関連ニュース)
・イラン大統領:ウラン60%濃縮はイスラエルのナタンズ攻撃に対する回答。
・クウェイト、裁判所がジャービル前首相に拘束命令:地元紙報道。 *
*「クウェイト首長家々系図」参照。
http://menadabase.maeda1.jp/3-2KuwaitSabah.pdf
・総裁交代下のトルコ中銀、公定歩合19%を維持。専門家は年央から15%以下との見方が支配的。
・シリア、通貨を1,250/ドルから2,512/ドルに切り下げ。
・ヨルダンの公的債務、GDPの85%に達する。若者の失業率も55%。
・UAE、日本の宇宙企業iSpace通じ2022年に月面探査衛星打ち上げ。