二つ星の空

(旧「風からの返信」-11.21.09/「モーニングコール」/「夢見る灯台」/「海岸線物語」)

映画「小さいおうち」~愛について、そして罪について~

2014-02-01 23:38:43 | 小さいおうち
観ました。初日上映。そして、翌日も観た。2回。三回目も行きたいが、それはまだ。(2回観たことに悔いは無いが、その後仕事のスケジュールがえらいことになった・・・)

初日は家族で観て、見終わってから、山ほど話をした。
おいらの母親は、たきちゃんよりも年下だが、女中奉公の経験がある。山形から上京するたきちゃんが雪の中を歩いて行く姿が自分の経験と重なって、ものすごく共感したらしい。
また、板倉さんの下宿の場面で老夫婦がお灸を据えていたのを観て、子どもの頃を思い出したらしく、近所のおばさんに頼まれてお灸をすえてあげたときに、子供だから加減がわからなくて、熱くしてしまって悪かった、とか、妙に細かいことを懺悔っぽく話していたのが印象的だった。親にとっては、強烈に記憶を刺激される映画だったようだ。


そう、秘密は誰にでもある。他人ならいくらでも、そんなこと気にしなくていいよ、と言いたくなるようなことでも。永久に、その人のくさびとなり、えぐるような痛みと苦しさを、与えることだってあるんだ。

自分がすえたお灸の熱さを想像して、懺悔したくなる気持ち。

それは、渡さなかった手紙の重みと同じように、永遠にぬぐえない、優しさ故の悔恨なのだろうと、思う。


映画「小さいおうち」
とてもよい映画だった。何というか、とても好きな映画だ。雰囲気といい、人物の描かれ方といい、とても上品で、とても艶っぽくて、とても優しかった。そして、とても悲しかった。

その中で、考えた。

愛の様々な形について。
そして、罪というものの定義と、その重さについて。

書き始めるとえらく長くなりそうなので、何回かに分けて考えていきたいと思う。

今日のところは、書き殴りに近いが、とりあえず叫びたいことだけ記したいと思う。

(1)愛にはいろんな形がある、タキちゃんをれずとか短絡的にくくるんじゃねぇ!!!ってことを、山田監督も言いたかったんじゃないかなぁ・・・(おいらも同感だけど、個人的曲解?)この映画には、いろんな愛の形が描かれていて、それについてコメントしたくてうずうずしている。自他の境界さえ朧となるような愛の形とか、無意識の上のこの上ない愛情とか、、、この映画では、多様な人間の、多様な「愛し方」が描かれていると思うんだ。それは、肉欲とはまた別のもので・・・ああ、うまく言えないな。睦子さんの台詞は、観客へのひっかけだと思うんだよね。タキちゃんの気持ちは、決して「あれ」で定義されたわけではないと思うんだ。

(2)パンフレット読んで、吉岡氏のコメントに「収録中は、時子さんだけを見つめていた」とあったのに衝撃。タキちゃんへの気持ちってどんなだったんだろうなぁ。。。(恭一じいちゃんの意見に賛成派のおいら・・・)

(3)孫の妻夫木聡は、原作よりも情愛溢れる感じが好感度高かった。彼の最後のつぶやきは、思わず倒れ込みそうになるぐらいの脱力感だったが、あの「そぐわなさ」が、2度目見た時は、一種快感になっていた(笑)。そーだよ。おばあちゃんの気持ちは、おばあちゃんにしか、結局は知り得ないことなんだよ。偉そうに「わかった」とか言わない健史、謙虚だな。

(4)寝室の「絵」・・・おいら、映画を二度目に観たとき、初めて気づいた。初見の冒頭は、完全にわかってなかったです・・・あんなにクローズアップしてくれてるのに・・・山田監督、申し訳ない・・・それにしても、冒頭の葬式場面、おいらのばあちゃん(100歳)の葬式のときと見事に似ていて、すごく既視感を感じた。(それにしても、第一発見者って・・・健史、辛かったな。)

(5)エンドクレジットの最後に画面一杯に映し出される、板倉正治の「絵」。パンフレット読むと、制作過程はほのぼのしていたようだ。
おいら、最初見た時は「シャガール!?」と複雑だったが、板倉氏の雰囲気って、確かにシャガールの模写とか好きそうな気がする。ただし、あの絵を描いたのは、戦前だと思うんだ。あの絵は、彼が時子奥様に恋していた真っ最中に描いた絵。そんな、幸せな雰囲気を持った絵だ。(シャガールの絵を、戦前の日本で観る機会があったかどうかはおいらにはわからない。芸大なら可能か?もしなかったとすれば、板倉氏は「日本のシャガール」だ!)

(6)女性陣の色っぽさ、艶っぽさ(特に時子さん!)が素晴らしくて、板倉君の下宿で、あんな音が筒抜けな環境でどうやって何をいたしたんだろうとか(下品ですんません)、想像するだけで、中年としては、少々心臓が変な風に打ちそうな感じでした。タキちゃんも同じように想像したのかと思うと、余計にどきどきする。ものすごいエロティックでした。(平静を装って書いてますが、むしろ、鼻血もの・・・)

(7)時子さんが、なぜ、ぼくとつとした板倉青年に惚れたのか。それは永遠の謎ですが、原作の、少しすかした(?)感じの板倉くんより、映画の板倉君の方が、いたいけ(幼気)な感じが出ていて、観ていて納得できました。恭一少年に印象が似てるんだよね。お母さんとしては、息子に似ている、って本能的に警戒しないし、惹かれるっしょ。(この辺やばいかもしれないが、これも「愛」の一つの形だと思う)
そして、仮に二枚目と時子奥様が不倫していたって、観客は、共感も同情もしないのである^-^;寅さんが支持されるのと同じである。マドンナが惚れるのが「寅さん」だから、嬉しいのである。頑張れ、板倉!なのだ。

(8)板倉青年のイメージが「木訥」「幼気」というところにあるなら、役割的に、板倉=高倉健ではない。なので、山田監督は、吉岡氏がヒロイックな雰囲気を醸し出しそうだったのを、すかさずぶちこわしたのではなかろうか(笑)。健さんの場合は、二枚目で、当然のようにヒロインに惚れられて、でも、その思いを受け止められないストイックな事情があって、「すごくお似合いなのに、健さん、これでも我慢できるのか?!」ってところが、ハラハラどきどきで良いのである(と思う)。板倉青年は、時子さんに迫られたら我慢できない(苦笑)。身も心も奪われっぱなしなのである。それは、高倉健ではない(笑)。

(9)映画と原作は、鍵となる場面と、最後の結末が、少し異なる。その違いにも、それぞれの味わいがあって嬉しい。これについても、もっと色々考えてみたいな。

(10)映画館によって、映像の明るさが違うことに衝撃。最初観た映画館では、嵐の場面、釘や板の木目まではっきり見えたけれど、別の映画館では、全体的に暗くて、よくわからなかった。暗いのも味わいはあるけどさ・・・細かいところまではっきり見えた方がよかったな。


一言にするつもりが、延々叫んでしまった・・・陳謝。

「小さいおうち」いいっすよ。未見の方は、ぜひご家族で。おすすめです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「小さいおうち」公開まで1週間!

2014-01-18 22:18:10 | 小さいおうち
カウントダウンっすね。

・・・相変わらず崖っぷちで凍りつきそうになってます。
ダメじゃん。

「小さいおうち」の2週間後には、「ブッダ2」も公開です。
すげーな。でも、昔から、なぜかそんなスケジュールになりやすい吉岡氏。

「Always 三丁目の夕日'64」と「はやぶさ~遙かなる帰還」と「猫弁」とかすごかったなぁ。
「メイドインジャパン」と「猫弁2」とか(あれは2ヶ月あったか)もあり、そのほかでも、参加作品が比較的少ない割に、出るときは一気に出る、というか・・・

吉岡氏の活躍を楽しみに待ちます^-^初日挨拶頑張れよー!!!(誰に言ってる^-^;)


それはさておき。

「小さいおうち」期待は膨らむばかりですが、中でも、最近読んだ記事を紹介。(というか、自分用備忘録。)

ぐるなび「映画『小さいおうち』 - エンタメレストラン -」

記事を書いたのは金原由佳さん(映画ジャーナリスト)。

彼女の記事は、何というかとてもバランスがよく、読んでいて気持ちがいい。
「ああ、この映画見たいなぁ」という気持ちにさせてくれる、素敵な文章だ。

Yahoo映画の「小さいおうち」特集ページもいい作りだ。
「名作とともにひもとく「小さいおうち」の4つの魅力」というタイトルで、昔の名画が4つ紹介されているんだが、これがとても嬉しい。どれもおいらの好きな映画ばかりだ。

ぴあ「映画生活」では「「小さいおうち」魅力を分析」として、Yahooとは違った切り口で映画のいくつかの場面の魅力を紹介している。

ああ、早く観たい。
あと一週間、がんばらなくちゃな。

崖っぷち、とっくに落ちて、自分の足が消えてることに、自分で気づいていないだけかもしれないんだけど。。。

空を見上げる。
「撤収!」と強制終了にされるまでは、やるっきゃないよな。

寒い日が続くけど、気合い入れていこう。とりあえず、今日はこれにて。。。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「小さいおうち」こだわりの“おうち”の中を初公開!山田組こん身の出来栄え(映画.com)

2013-09-01 09:38:55 | 小さいおうち
映画.comの記事。様々な写真が鮮やかに掲載されています。

http://eiga.com/news/20130829/2/

おいらの現実にはこんな素敵なおうちは見たことないけど、
とても懐かしい感じがするのはなぜだろう。
映画、楽しみです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「小さいおうち」音楽は久石譲氏!

2013-08-10 13:56:31 | 小さいおうち
来年1月の公開が待たれる「小さいおうち」ですが、本日(8月10日)から、映画館で特報が流れるらしい。

公式ウェブサイトでももうすぐ見られると思うけど、公式Facebookのリンクからも、yahoo映画で見ることができます^-^(以下のurl)

http://special.movies.yahoo.co.jp/detail/20130809222592/

この映像についての記事はこちら。
「山田洋次監督「小さいおうち」 倍賞千恵子ナレーションの特報映像がお披露目」
http://news.goo.ne.jp/article/eigacom/entertainment/eigacom-39185.html


いい雰囲気だなぁ・・・実に楽しみ。
そして、久しぶりに「紅の豚」を見直したくなりました^-^

今日も暑いね。みんな体に気をつけて。
んでは。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続き(「小さいおうち」と「猫弁と透明人間」)

2013-04-20 13:20:36 | 小さいおうち
さっき書ききれなかったこと。

米倉斉加年も出るぞ!これがすごく嬉しい。
ちなみに、板倉氏の父親役・・・ではなく(笑)、恭一坊ちゃんの平成パートです。

そしてさらに、「猫弁と透明人間」について。
おいらが「猫弁と透明人間」で一番好きな、ある登場人物の言葉があるのだが、吉岡氏がそれを「とても好きだ」として挙げていた。曰く、「あれこそが百瀬を一言で表す」。

これを読んで、とても嬉しい気分になったのでありました。


追伸:あるイギリスのピアニストさんが「カーステでラジオかけてたら、いきなり「明日にかける橋」が流れた。事前に流すぞって警告してほしい。思わず泣いてしまうから。」とtweet。ああ・・・背景も感情もきっと全然違うんだろうけど、同じ反応する人がいるんだ、って思ったら、こっちまで泣けた。

オバマ氏の演説をまた思い出してしまった。

どうかぼくらが、人を愛する気持ち、人に対する思いやり、優しさを常に持っていられますように。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山田洋次監督作品「小さいおうち」の出演者がすごい!~制作会見レポートから~

2013-04-20 12:56:45 | 小さいおうち
ども。相変わらず「寒い」とか言ってるうちに、桜散りそうです(涙)。
崖っぷちのへなちょこ。こうして年老いていくのか・・・(洒落にならん)

相変わらずの毎日です。

さて。久しぶりにネット情報をチェックしました。
「小さいおうち」(2014年1月公開予定)の公式ウェブサイトが更新されています。
http://www.chiisai-ouchi.jp/

「最新情報」ってところをクリックすると、「制作会見レポート」の内容が読めます。
皆さん、気合い入ってる。主要出演者の皆さんの素敵なコメントが読めて、期待が高まりました。ところで、吉岡氏、会見後半であっさりと「とあるネタばれ」しているが、これはOKなんだな(笑)。(もちろん、すでに原作読んだ人は知っていることだが、結構大きいネタじゃねえのか、と一瞬心配になった。まぁ、最近は、ネタばれも集客のうち、という側面もあるようだし、いいのかもな。)

山田監督の、「フィルムで映画を撮ること」についての意見は、考えさせられました。
デジタル化によって、録音技師やフィルム編集技師という専門職や、フィルム生産が消えていく。デジタル化は、その視点で考えれば、単なる合理化(リストラ・人員整理のための手段)ではないか。そのことについて監督は腹立たしさを覚えている、と。

ちなみに、この会見については、http://news.walkerplus.com/article/38000/や、http://www.excite.co.jp/News/cinema/20130417/Moviecolle_5250.html?_p=1の記事等でも読めます。

動画はこっち→http://moviecollection.tv/interview/10068

おいらも同感。日本の農業にも工業にも(それだけでなく、商業やあらゆる分野の生活の営みを含むかもしれないね)、同じ構図を感じている。専門職の絶滅。そして日本人は、将来、何の技術も知恵も持たなくなるのではないか、と。

昔、奈良時代に、とても固い石を加工する優れた技術を持った石工がいた。その技術が存在したことは、現存する遺跡にも証拠として残っている。
だが、平安時代以降、その技術は失われ、現代に至るまで、日本人はその技術を持たない。(代替として機械による加工が可能になったから、もはや必要ない、とされているし、あえて固い石を加工する必要などないのだから、その技術は無用である、という意見もあるだろうが。)

そんな風に。技術も知恵も、あっけなく失われるのだ。それを部外者が嘆くのは「感傷」でしかないのだろうか。

今回は、「当事者」「関係者」としての山田監督の苛立ち、もどかしさが伝わってくる感じの会見でした。


さて、その「制作会見レポート」の下欄には、「小さいおうち」の出演者・スタッフの詳細が出ている。

これが、すごい。

まさに、オールスターキャスト。これで神部さんが出てたら完璧(?)ってくらい、山田ワールドだ。(出てるだろう、ここに載ってなくても!)

豪華絢爛な出演陣の中でも、おいらとしては、睦子さん=中嶋朋子、というのが、感慨深かったっす。おお、吉岡・中嶋は何年ぶりの共演だよ!?(実際に同じ場面に出てるかどうかはわからないが(汗))

そんなこんなで、大変嬉しい記事を読んだのでした。

そうそう、嬉しいと言えば、大山淳子さんの「猫弁と透明人間」が22日(月)に放映間近ですが、これに関して、講談社では、主演2人(吉岡秀隆&杏)のインタビューを、メール配信しているそうだ。大山女史ご本人のウェブサイトにリンクがあるので、読みたい人は、ぜひ「ぶんぶん館」「大山淳子」で検索してほしい。(いや、むしろ「講談社『BOOK倶楽部メール』 2013年4月20日 号外」か?)

このメールマガジンには、「猫弁と少女探偵(仮)」という、今夏発売予定の大山氏の新作の(完成前)簡易見本プレゼントの案内も出ているので、検索して読む価値は大いにあると思う。

というわけで、サボりっぱなしの本日、そろそろ休憩終了しまっす。では、また。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする