猫嫌いだったわたしが猫好きになるきっかけを与えてくれた、真っ黒クロ助キキ。
彼はかあちゃんっ仔で、それはそれはきれいな猫でした。
1年ですっかりおっきくなって、ご近所のメス猫に大モテ。急いで避妊手術をしました。
息子Kに拾われてきた日から丁度1年が経ったある日の夕方、いつもの散歩から帰る頃だと玄関の戸を開けると、
一方通行の道を挟んだ向こう側に座り、わたしを真っすぐに見つめるキキがいました。
「ああキキ、お帰り、さあ、家にお入り」と手招きするわたし。
「……」ただ黙ってこちらを見つめる彼。
「どうしたん、おいで、帰ってご飯食べよ」
「……」
わたしはそこでハッと気がつきました。キキはわたしにさよならを言っていると。
それでわたしも、声に出さずに彼に話しかけました。
(もうさよならなん?そうなん)
(かあちゃん、今までありがと。けどオレ、行かなあかんねん。ごめんな。さいなら)
彼はクルリと向きを変え、そのまま近くの路地の中に姿を消してしまいました。
とても悲しくて寂しくて、かなり落ち込みましたが、ちゃんとさよならを言ってくれたことで諦めがつきました。
そして彼が去ってから数日経ったある日、その、世にもおぞましい、思い出すと今だにムズムズする事件が始まったのです。
それはノミの攻撃でした。
わたし達が借りていた家は、屋根も床も、見てすぐ分かるぐらいに傾いた、とても古ぼけた日本家屋で、
前に住んでいた家族が猫を数匹飼っていたのだけれど、その猫ちゃん達、思いっきり放任されていたのか、
我々の引っ越す前に、柱や襖、それから障子など、すべてを修復しないと住めない状態だったんですね。
柱なんてもう、爪研ぎの道具と化していて、昔のコカコーラの瓶みたいに成り果てていました。
その猫ちゃんの温かな毛皮の中でぬくぬくと暮らしていたノミが、多分、キキの毛皮に引っ越し、
そのキキがいなくなっちゃったので、パニックになり、人間に噛み付いたっていうのがわたしの推測です。
あの時、どうしてわたしだけに集中されてしまったのか、それは今も謎ですが、とにかく片足だけで百以上も噛まれてしまい、
痒いやら痛いやら腹が立つやら、なんかフラフラするなあと思ったら、なんと熱まで出てしまいました。
ノミショック?
その日からはもう地獄。毎日毎日噛まれた痕が増え、化膿しやすい体質のおかげであちこち腫れたりお汁が出たり、
だいたい、蚊に1カ所でも刺されたらムチャクチャ面倒なことになるのに、こんなままでは命が危ない。
そう思ったわたしは、鬼のようにノミ退治(あれれ、ちょっと変?)をし始めました。
そして必死になって追いかけているうちに、とんでもないことを発見してしまったのです。
それは……、
畳の内部に住み着いているノミが、獲物を狙ってあの細い細い畳の目をくぐり抜ける時、体を縦にぺったんこにしちゃうんです
ほんとに見事にぺちゃんこになった体が、なんと畳をくぐり抜けた途端、パッと元の形に戻るんです!こえぇ~!
なんか、ホラー映画のワンシーンを観てるみたいに、背中がゾォ~ッと寒くなりました。
でも、旦那は言います。
「けどさ、長~いこと畳の上で四つん這いになってじぃ~っとしてるかと思たら、ババッと何かに飛びついてさ、まるで化け猫みたいなまうみの方がもっと恐かった。猫ノミに食われ過ぎてまうみが猫に化けていくのかってマジ心配した」
わたしも災難でしたが、ノミにも災難だったと思います。あのバトルで、1日最低百匹は潰しちゃってましたから。
そのうちノミの方がわたしの血に飽きたのか、息子達にちょいと浮気して、それから旦那に向かったんですが、
いやあ、毛むくじゃらも時には役に立つんですね。ノミが旦那のすね毛の中でもがき苦しんでいるのを何回も見ました。
それに、あんなにガリガリだと美味しくないんだろうなあ、いいなあ。
ってなことで、ノミのお話でした。
彼はかあちゃんっ仔で、それはそれはきれいな猫でした。
1年ですっかりおっきくなって、ご近所のメス猫に大モテ。急いで避妊手術をしました。
息子Kに拾われてきた日から丁度1年が経ったある日の夕方、いつもの散歩から帰る頃だと玄関の戸を開けると、
一方通行の道を挟んだ向こう側に座り、わたしを真っすぐに見つめるキキがいました。
「ああキキ、お帰り、さあ、家にお入り」と手招きするわたし。
「……」ただ黙ってこちらを見つめる彼。
「どうしたん、おいで、帰ってご飯食べよ」
「……」
わたしはそこでハッと気がつきました。キキはわたしにさよならを言っていると。
それでわたしも、声に出さずに彼に話しかけました。
(もうさよならなん?そうなん)
(かあちゃん、今までありがと。けどオレ、行かなあかんねん。ごめんな。さいなら)
彼はクルリと向きを変え、そのまま近くの路地の中に姿を消してしまいました。
とても悲しくて寂しくて、かなり落ち込みましたが、ちゃんとさよならを言ってくれたことで諦めがつきました。
そして彼が去ってから数日経ったある日、その、世にもおぞましい、思い出すと今だにムズムズする事件が始まったのです。
それはノミの攻撃でした。
わたし達が借りていた家は、屋根も床も、見てすぐ分かるぐらいに傾いた、とても古ぼけた日本家屋で、
前に住んでいた家族が猫を数匹飼っていたのだけれど、その猫ちゃん達、思いっきり放任されていたのか、
我々の引っ越す前に、柱や襖、それから障子など、すべてを修復しないと住めない状態だったんですね。
柱なんてもう、爪研ぎの道具と化していて、昔のコカコーラの瓶みたいに成り果てていました。
その猫ちゃんの温かな毛皮の中でぬくぬくと暮らしていたノミが、多分、キキの毛皮に引っ越し、
そのキキがいなくなっちゃったので、パニックになり、人間に噛み付いたっていうのがわたしの推測です。
あの時、どうしてわたしだけに集中されてしまったのか、それは今も謎ですが、とにかく片足だけで百以上も噛まれてしまい、
痒いやら痛いやら腹が立つやら、なんかフラフラするなあと思ったら、なんと熱まで出てしまいました。
ノミショック?
その日からはもう地獄。毎日毎日噛まれた痕が増え、化膿しやすい体質のおかげであちこち腫れたりお汁が出たり、
だいたい、蚊に1カ所でも刺されたらムチャクチャ面倒なことになるのに、こんなままでは命が危ない。
そう思ったわたしは、鬼のようにノミ退治(あれれ、ちょっと変?)をし始めました。
そして必死になって追いかけているうちに、とんでもないことを発見してしまったのです。
それは……、
畳の内部に住み着いているノミが、獲物を狙ってあの細い細い畳の目をくぐり抜ける時、体を縦にぺったんこにしちゃうんです
ほんとに見事にぺちゃんこになった体が、なんと畳をくぐり抜けた途端、パッと元の形に戻るんです!こえぇ~!
なんか、ホラー映画のワンシーンを観てるみたいに、背中がゾォ~ッと寒くなりました。
でも、旦那は言います。
「けどさ、長~いこと畳の上で四つん這いになってじぃ~っとしてるかと思たら、ババッと何かに飛びついてさ、まるで化け猫みたいなまうみの方がもっと恐かった。猫ノミに食われ過ぎてまうみが猫に化けていくのかってマジ心配した」
わたしも災難でしたが、ノミにも災難だったと思います。あのバトルで、1日最低百匹は潰しちゃってましたから。
そのうちノミの方がわたしの血に飽きたのか、息子達にちょいと浮気して、それから旦那に向かったんですが、
いやあ、毛むくじゃらも時には役に立つんですね。ノミが旦那のすね毛の中でもがき苦しんでいるのを何回も見ました。
それに、あんなにガリガリだと美味しくないんだろうなあ、いいなあ。
ってなことで、ノミのお話でした。
前半のキキちゃんの話でウルウルしてたら、話題がノミになった途端、背筋と涙が凍り付いたよ。
私もノミの被害に合った事があるんだけど、その時はまうみしゃんと同じで食われるのは私だけ。
足は真っ赤になるし、夏だったので恥ずかしくてプールにも行けなかったし、辛い思い出よ。
その年からちゃんとワンコのノミ退治を毎年する様になったけどね。
ほんと蚊とノミだけは許せん!!!
あれってさ、しまいにゃじんましん的に腫れあがるんやけど、噛まれたとこだけが微妙に硬かったりして……思い出したくねぇ~!
この夏、レッスン中に蚊を発見!レッスンそっちのけで、取り憑かれたように蚊を追いかけるわたしを見て、唖然としてた生徒ちゃん。人が変わるってのはこういうことか……と社会勉強になったようです。
旦那なんてさ、蚊でもノミでも、皮膚に辿り着くまでに嫌気がさしてくるみたいで、そんなに濃くはないねんけど、複雑にカールしてるのが効いてるのか、奴らは必ずもがき苦しんでるのよね。いいなあ、天然トラップ。