ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

デイヴの魂

2008年10月03日 | 家族とわたし
冷え込みがきつくなった昨夜、なかなか眠くならなくてぐずぐずしているうちに2時になってしまいました。
今朝、「お~い、そろそろ起きて一緒にコーヒー飲もうよ~」という旦那の声に起こされた時は、もうすでに10時?!
ドヨ~ンとしたままキッチンに行き、ドヨ~ンとしたまま椅子に座った途端、あ、えらいこっちゃ!
11時に家猫ショーティを獣医に連れて行かなければなりません。
ジャーマンブレッドをトースターに入れ、猫の移動用キャリーをゴソゴソ引っ張り出し、中の埃やクモの巣をはらい、
なにがなんだか分からんような朝食を取って、ウワァンウワァンと鳴くショーティと一緒にドライブしました。
病院の待ち合いでいる間、彼女は鳴き続け、その声を聞いた人は皆、これ、ほんまに猫の声?と驚いた顔でわたしに聞きます。
なにか言葉のようにも聞こえるし、赤ん坊の泣き声のようにも聞こえるし、皆は興味津々で彼女の周りに寄ってきます。
そのうち、英語も分かるの?とか言い出す人も出てきて、とてもにぎやかになりました。
ショーティは10才にしてはすこぶる健康で、毛並みも若く、とてもいい状態だと言ってもらいました



戻ってきて、彼女のパニックも少し治まりホッと一息ついていると、ガブリエル(デイヴの息子)から電話がかかりました。
危篤の知らせでした。

慌てて支度をして、デイヴのガールフレンドのデブラと3人でニューヨーク州に向かっていると、また電話がかかってきました。
臨終の知らせでした。

わたし達3人は行くのを止め、デイヴが好きだったタイ料理店に行き、彼の好物をお腹いっぱい食べることにしました。
デイヴの波瀾万丈の人生を、わたし達が知る限りではあるけれど思い出し、それを話しては笑い、話しては泣き、
デイヴの魂に乾杯!と、何回も何回もワインで乾杯しました。
彼は、彼の子供達がまだ小さい時分に、奥さんと一緒に道ばたで歌って生計を立てていたことがあります。
10年間ぐらい続いたイタリーでのジプシーのような生活は、彼にとってはとても色濃く、光と影の両面を持つ思い出だそうです。
彼は何回も病気や事故で死にかけたこともあり、麻薬などの経験も数年あり、酒におぼれたこともあり、
そうかと思うと、健康にこだわっていろんなことを試したり、人に勧めたり。
料理を作る時は、食材にこだわり、道具にこだわり、味にこだわり、色彩にこだわり、
作り終えた時にはキッチンもピカピカに片付いているという作法にこだわり、
わたしは、そんなんまるでうちの父ちゃんやんかと思いながら聞いていました。
食事の最後に、デイヴの大好物、不透明なオレンジ色したタイアイスティーで乾杯し、彼にお礼を言いました。

彼と逢えた3日前の火曜日の午後。冗談言ったりしんみりしたり、本音をちょびっと聞いたり、おかずを食べたり、
帰り間際に、しゃべり疲れて声は掠れて小さかったけれど、
「まうみ、あの家はいい家だ。良き時代のアメリカがしっかり残っていて、あんなに造りのしっかりした、それでもってチャームがある家は今時なかなか見つからんよ。絶対に手に入れろよ」と言ったデイヴ。
わたし達の友人の中で、あの家の内側を観た人は彼ただ一人。いい物を愛する彼の言葉だけに、とても嬉しい遺言です。

彼の魂は、きっとあの家のどこかにも居て、それでわたしはもう、薄暗い地下や屋根裏が全然恐くなさそうな気がします。
家の者が出かけていて、たった独りで残っていても、なんだか独りじゃないような気がすると思います。

ありがとうデイヴ、

そして、デイヴだった体さん、さようなら。



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2 コメント

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御冥福をお祈りいたします (PSママ)
2008-10-04 10:37:03
まうみしゃん

Daveさんって、ほんと面白い経験をいっぱいしていて、とっても魅力のあるチャーミングな人だったんでしょうね。

自分が何を信じて生きているのか全く分からないんだけど、この世とあの世って同じ世界のような気がする。
まうみしゃんが言うように、きっとDaveさんの魂は、まうみしゃんの新居へ遊びに来たり、家族を訪れたりするんだと思う。
身体って言う器があると不自由な時もあるよね。
きっと今は伸び伸びとより一層Daveさんらしく過ごしていると思う。

御冥福をお祈りいたします。
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父を亡くしてから、 (まうみ)
2008-10-04 12:30:34
魂の存在を固く信じるようになりました。
PSママの言うように、この世とあの世は同じ世界なのかもしれない。

今はただぼんやりと悲しくて、時々いきなり大きな石をボチャンと落とされたみたいに波立って、涙がドッと出たりします。

ホスピスに入院した日、彼はもう、死のうと決めたのかもしれません。
そして、慌てて彼のもとに行こうとするわたし達が高速に乗る直前に、そんな慌てて来んでもええよ、後でゆっくり逢おうと、タイミングを合わせてくれたのかもしれません。

そういうことも可能かも。
そう思わせるような男でした。

彼がくれた思い出の、それぞれに残る鮮明な色や匂いや楽しさを、これからも思い出しながら、彼の安らかな未来を祈りたいと思います。
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