ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

米国『虫歯と眼鏡』事情

2021年09月30日 | 米国○○事情
9月下旬から先週の土曜日までの間、抱え込んでいたやらなければならないたくさんの事を済ませていった。
一番厄介だったのは歯と目の医者探しだった。
こちらの健康保険は、例えそれがオバマケア(国民健康保険もどき)であっても、歯と目の治療に関してはカバーしてくれないので、高額なくせにあまり役に立たないと評判の歯と目の保険を別々に買わなければならない。
こちらに移り住んで早21年が経ったけど、その間、歯の治療は実費で払い続けてきた。
ちなみに目の治療はまだ一度も受けた事がない。
歯の場合、たった一本の虫歯治療に何万円もかかるので、お金に余裕が全く無かった子育て時は、歯痛はとことん我慢するというのが当たり前だった。
もう我慢ができなくなったら行く→もちろん状況は最悪になって治療費がさらにかかる、という悪循環だったけど、それでなんとか凌いできた。
だけどここ数年、年齢のこともあるんだろうけど、インプラントやクラウンの治療が必要になってきて、これを実費で払うには、よほど注意して医者を選ばないといけないことを知った。
良い歯科医に治療してもらいたいのは山々なのだけど、治療費の事を考えると誰でも良いというわけにはいかない。
友人知人から教えてもらった歯科医に治療してもらい、費用を払う段になっておったまげる、という事も少なくなかったので、自分でコツコツ探しては行ってみるのだけど、やっぱり安い所にはそれなりの事情や理由がある。
悔しいけれど何件も実際に行ってみるとわかってくる。
だからまあ、今回は、決して安くはないけど法外に高くない、と思われる歯科医に診てもらうことにした。
予想通り、インプラント治療が必要だと言われた。
こちらでは、インプラント専門医に抜歯と義歯を被せる直前までの治療をしてもらい、また元の歯科医のところに戻って歯を被せてもらうというのが主流。
紹介してもらった専門医のところで抜歯してもらい、4ヶ月後にCT検査を受けてインプラント治療が始まることになっていたのだけど、抜歯だけで15万円払って仰天してたところに、その工程表に記されていた費用を見て目の前が真っ暗になった。
40万?!
もうすでに15万払っていて、そこに40万がさらにかかって、歯を被せる時にまた15万以上かかるはず…。
ってことは70万円かかるのか、たった1本の歯に…。
嫌だと思った。
流石にこれはないと思った。
でも今更他のところに移るのもなあ…とウジウジしていたら、その額を聞いてたまげた夫の友人が、わざわざマンハッタンからハドソン河を渡り、家族みんなで通っている歯科医院をゴリゴリ勧めてくれた。
わたしの家からだと車でちょうど30分ぐらい。
行ってみるとそれはそれは明るくて、開放的で、スタッフも医者もみんな若くて親切で、全員が韓国人で、また一からデータの撮り直しがあったけど、どれも最新機器で行われたので気にならなかった。
歯には問題がたくさんあるけど、歯根と骨はものすごくしっかりしていると言われた。
専門医と掛け持ちをする必要がなく、全ての工程を一人の担当医がしてくれる。
そしてドキドキの費用の合計は…19万5千円。
え?保険無しですよ、ほんとにそれでいいんですか?と思わず聞いてしまった。
それでいいんだって分かって、もう本当に救われた気持ちになって、何度も頭を下げてお礼を言った。
みんな、韓国ドラマで見るような、年上の人に対する若者たちの恐縮の仕草で、そんなお礼なんて必要ありませんよと微笑んでくれた。
治療はまだ始まっていないけど、支払いを恐れなくてもいい(もちろん多額の出費には変わりがないけど)事がどんなにありがたいか。
と、ここまでは歯のお話。

続いては目。
夫に鍼の治療を受けようとTシャツを脱いだ時、頭のてっぺんに乗っけていたメガネが落ちてレンズが割れてしまった。
そのレンズの上半分はピアノの楽譜を読むために、下半分は本を読むために調整されているもので、これが無くなると色んなものが読めなくなってとても困る。
そこでこちらに来て初めての検眼を受けることになった。
日本だと眼鏡屋さんに行けばそこで検眼して眼鏡を作ってもらえるけど、こちらではそうはいかない。
検眼してもらうためには、例えそのお店で眼鏡を購入するとしても、検眼代を払わなければならない。
それがまた高い。
大型チェーン店でも最低5000円、町中の眼鏡屋さんだと1万円を超える上に、なにやら検眼士の能力差も大きいらしい。
なので毎日時間があったらパソコンで評判を調べたり、値段を調べたりしていたのだけど、どこを選んでも何某かの問題が出てきて決められない。
やっと決めて予約を取ったものの、たかだか眼鏡のレンズを作り直してもらうだけのために、眼科医に診てもらわなくてもいいのではないかと思い直したり、いや、この際だから歳も歳だしきちんと診てもらおうと思ったり。
そんなこんなで何ヵ所も予約してはキャンセルし、ぐずぐずと迷っていたのだけど、あと1週間に迫っていたコンサートでのドタキャンがあったからと急遽代わりに演奏することになって、ますます眼鏡が必要になってしまった。
焦って行った場所は小規模のチェーン店で、検眼を担当するのは眼科医で、けれども費用は6千円と比較的安かったので飛び込んだ。
検眼は日本とは全く違う方法で行われ、目の後ろや周りの写真を撮ったりして、目の神経や血管はとても健康だと知らされた。
その処方箋を元にレンズを作ってもらうことになったのだけど、その時初めてわたしのメガネは縁無しだということを知り、うちはこの種類の修理はできないとあっさり断られてしまった。
そして再び店探しが始まる。
今度は縁無しメガネのレンズだけ作ってもらえる店を探さなくてはならない。
それが本当に難しかった。
店に行っては断られ、また行っては断られして、ネットでの評価を何千件も読んでクタクタになっていたところ、
「彼の技術はすごい。眼鏡に対する情熱を感じる。店に行けない人のために百個近くのフレームを抱えて自宅に来てくれる」
というコメントが書かれた店が目に入った。
もしかしたらこの人ならOKしてくれるかもしれない。
そう思って電話をかけてみた。
受付の女性に説明したのだけど、どうも話が通じない。
現物の写真を撮って送ってと言われたので送ってみると、横で男性の声がして、できると思うので持ってきてくださいと言われた。
ちょうど出先の車の中だったので、すぐ行きますと言って、ナビに住所を入れて走った。
案内に従って行くと、どんどん怪しい雰囲気の場所に進んで行く。
到着しましたとナビが言うのだけど、着いたところはスーパーマーケットの駐車場だった。
そのスーパーもなんと言えばいいのかサイケデリックで、中に入るまで何のお店なのかわからないような感じで、恐る恐る中に入ってみると一応スーパーマーケットだったのだけど、眼鏡屋なんてどこにも見当たらない。
お店の中をぐるっと一回りして、やっぱり見つからなかったので店員さんに尋ねると、ああ、あの角を右に曲がって突き当たりを左に曲がって、その奥にあるよ、と言う。
指された方を見ても首を傾げてしまうほどに何も無さそうだったけど、言われた通りに行ってみると、夜店サイズのそれはそれは小さな店舗が数件並んでいた。
一番奥の部屋の壁には眼鏡のフレームが所狭しと展示されていたので、やっとそこだと分かったのだけど、部屋の中には小さな折り畳み机の前に座っている女性と、奥の角っこで何か作業をしている男性だけ。
一瞬迷ったのだけど決心して、サッシの引き戸を開けて入った。
さっき電話した者ですと言って壊れた眼鏡を見てもらう。
すると男性がスッとそのレンズを手に取って、あかりに透かして見始めた。
そして言ったのだ。
そのレンズがどのような性能を持っているか、どのような追加がされているか、それら全てを的確に。
わたしは驚いて彼の横顔を眺めていた。
レンズ代はここから選んでくださいと、手書きの一覧表を見せてくれた。
実は何件か通った眼鏡屋で、元々のレンズの性能と同じ物を作る場合、レンズ一枚だけで5万円以上かかりますと言われて卒倒しそうになっていたので、その一覧表の価格はレンズ1枚分なのだろうと思っていたら、なんと2枚の値段だと言う。
結局はレンズのサイズを一回り大きくしたもらったり、光線対応を新たに加えてもらったりしたので、総額は5万円近くになったけど、フレーム修理も込みでの値段なので満足している。
仕上がるのに3週間かかると言われて、今待っているところ。

つい最近教えることになったモンスター生徒の話はまた後日。

慌てて練習して本番に臨んだコンサートは、パートナーのソプラノ歌手がワクチン接種証明ができないので建物の中に入ることができず、今度は我々がドタキャンをした。
マンハッタンはパッと見は元の姿に戻ったように見えるけど、廃業したお店が点々とあって、逆に営業を続けられているお店が奇跡のように思える。
お店はどこも、ワクチン証明書と顔写真付きの証明書(免許証など)の2枚を提示しないと入れてくれない。
これにはきっと賛否両論があると思うけど、あの地獄を見た人たちが暮らす街としては致し方がないと思う。

あ、そうだ、ある週末にマグロパーティに招いてもらって、今まで食べた事がないような美味いお寿司(例えば「鎧身」と呼ばれる部位)をいただいたことも書いておきたい。
これもまた後日。
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