わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 293 陶芸の手順とは10(施釉作業の手順1)。

2017-07-13 13:54:39 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

1) 全体の手順 (前回の続きです。)

 ⑤ 底削り後の作業。

  底削りで完成の作品もありますが、作品によってはその後に行う、組み立てや装飾作業等もあり

  ます。ここからは主に手捻り(手)作業になります。即ち作品がある程度乾燥し、機械的強度が

  出た後に行います。

  ⅰ) 組み立て作業。

   急須の様に個々の部品を轆轤挽きした後、適度に形を成型してから接着して形を作ります。

   同様に取っ手の付いたコーヒーカップなども、持ち手を接着します。

   背の高い作品では、上下に分けて作った部品を繋ぎ合わせて、作品に仕上げる事もあります。

  ⅱ) 装飾作業。

   化粧掛けや掻き落とし、透かし彫り、レリ-フ(浮き彫り、貼り付け)模様等の装飾作業は、

   底削り後で素地が変形しない程度に乾燥させた後にを行います。

   但し、作品を変形させたい場合や、「へら目」の様に素地が軟らかい方が、しっかり浮き出

   せる場合には、底削り前に行います。

  ⅲ) 作品が完成したら素焼き作業に入ります。

   素焼きを行う為には、十分乾燥させておかなければ成りません。不十分な乾燥ですと、窯の中

   で水蒸気爆発を起こし、作品がバラバラに壊れる事もあります。

   素焼きの終わった作品は、次に施釉するのが一般的です。勿論、焼き締め陶器の様に、施釉

   しない作品もあります。

2) 施釉の手順。

 ① 作品の選別。

  素焼き終了時に「割れやひび」の入った作品は、施釉せず廃棄処分になります。

  素焼きではほんの小さな「割れやひび」であっても、本焼きするとその傷は大きく広がります。

  その為、特別な作品以外は、この段階で廃棄処分にするのが正解です。勿論素焼きした後の土は

  元の粘土には戻れません。但し時間を掛けて作った作品や、二度と同じ様には出来ない作品の

  場合には、傷や割れ目を補修してから、施釉を行います。尚、素焼きした作品を補修する場合も

  あります。その為の補修剤も市販されています。

 ② 削り滓(かす)や、小さな傷は紙やすりで削り取ります。

  乾燥の甘い作品の底削りでは、削り滓が作品に「こびり付き」のを気付くかずに、素焼きをして

  しまう場合もあります。又爪跡等の小さな傷がある場合にも、出来るだけ目立た無い様に「紙

  やすり」等で修正します。サインを入れる場合、手書きですとサイン周辺が毛羽立ち(バリと

  も言います)易いです。手指で触れる位置にある場合、バリが引っ掛かり手指を傷つける場合も

  ありますので、丁寧に取り除く事です。

 ③ 作品の上に載っている埃(ほこり)や、「紙やすり」から出た粉を取り除く。

  埃などは、釉を弾き釉禿(ゆはげ)の原因になります。「ハタキ」を掛けたり、水拭くしたり、

  水洗いして取り除きます。

 ④ 下絵付けをするかどうかを選択する。

  下絵の具は伝統的「呉須」や「鬼板」、「酸化銅」などの他、現代では赤など華やいだ絵の具も

  登場しています。

 ⑤ 釉の種類を選択する。

  一番悩む処です。施釉する事は作品に着物を着せる事と同じです。即ち馬子にも衣装と言う様に

  作品の形云々よりも、釉の色で作品の価値が上がる事が多いです。勿論色は「焼き」によっても

  大きく変化しますので、釉の色=「焼き」の良し悪しとも言えます。

  作品を作る前から、この様な色に仕上げたいと考えて作品作りに取り掛かる場合もありますが、

  多くの人は素焼きが出来上がった後に考える事も多いはずです。

  ⅰ) 作品の用途によっても色が限定される場合もあります。

   a) 特に食器類であれば、器に盛る料理を引き立て、美味しく見せる色で無ければなりません。

    必ずしも器の色が華やかではなく、やや控えめの色が長く使って貰える器である場合が多い

    です。又湯呑み茶碗の様に、お茶の濃度を気に掛ける場合には、お茶の色が判別できる

    白っぽい色が好まれます。

   b) 花瓶などの場合には、花を引き立たせる色にする場合が多いです。

    器はあくまでも脇役であり、主役でる花の前に出て、主役を食っては成りません。

    但し、控えめと言っても、完全に器の存在を消して仕舞うと、存在意義が無くなりますので

    ある程度の存在感のある色に仕上げる必要があります。

   c) 壷などの置物の様に、作品単体で飾る場合には、自己主張する色に仕上げる必要があり

    ます。但し飾る場所も考慮する必要もあります。ご自分で使用する分には、飾る場所を考慮

    して、色付けを行う事も出来ますが、作品として販売する際には、どの様な方がどの様な使い

    方をするかは不明です。(但し、注文品は除く)それ故ご自分の判断で決める事に成ります。

  ⅱ) 釉は色だけでは無く他の要素も考慮する必要があります。

以下次回に続きます。
   
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