陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない
結果を招く事は多いです。
2) 施釉の手順。(前回の続きです。)
⑦ 施釉を行う。
施釉作業は基本的には一発勝負です。間違った場合再度やり直すのは、釉を剥がしたり、
作品を綺麗にする為など、多くの手間が掛ります。
ⅰ) 施釉を行う前に、どの釉(場合によっては複数の釉)をどの様な方法で行うかは、頭に
描いておく必要があります。何故なら多くの施釉の作業は3~5秒程度と、とても短時間で
終わってしまうからです。特殊な場合(スプレー掛け等)を除き、作業の途中で考える暇も
無い程です。
ⅱ) 使用する釉の濃度の調節を行う。
a) 釉の原料は、各種灰やカルシュウムの様な溶融剤の他、着色用の金属類も入りますが、
主に長石や珪石などの岩石類を粉末状にし、水で溶いた状態になっています。それ故、
使用直後を除いて容器の底に沈殿しています。即ち、水分と釉の成分が分離したり、上部が
薄く下部が濃くなっています。その為、均一な濃度にしてから使用する必要があります。
釉の種類によっては、一品を施釉した直後でも、沈殿を開始している物もあります。
又、長らく使用しないと水分が蒸発し、濃度が濃くなっている場合が多いです。
b) 容器に手を入れて掻き混ぜます。釉が固くなっている場合には、カンナ(鉋)等を用いて
底を引っ掻く様にして、少しづつ剥がし溶かします。量が多い場合には、釉を掻き混ぜる
専用の電動用具も市販されています。
場合によっては完全に水分が蒸発している事もあります。中途半端の濃度より、完全に水分
が無くなった状態の方が、釉は早く水に溶ける性質がありますので、あえて水を抜いて乾燥
させた後、水分を加えると早く全体を溶かす事が出来ます。
c) 釉を少量使用する場合は、容器の全部を溶かす必要はありません。
例えば、少量のスプレー掛け、少量の漬け掛け、イチインや筆(刷毛)描きなどです。
使いたい分よりやや多目の釉を別の容器に移し、水を添加する事で必要量の釉の濃度を調整
する事が出来ます。当然ですが、水よりも湯の方が早く溶けます。
d) 釉の濃度を測定する「ボーメ計」と呼ばれる、ガラス製の浮き計り(比重を計る)があります
が、必ずしも必要ではありません。慣れた方(数回経験した人)では、釉の入った容器を手で
攪拌した際、手に付いた釉の手触りや色の濃さで判断できます。
e) 釉を薄くするのは容易ですが、濃くするには手間が掛ます。
薄くするには、徐々に水を加える事で達成できますが、濃くする為には、水分を抜くか、
新たに釉を加える必要があります。その為、水分と分離している状態で上部の水を掬い取り、
やや濃度を濃くした状態で攪拌し、徐々に水を加えて濃さを薄める方法をとります。
f) 釉の種類によって濃く掛けた方が綺麗な色になる場合と、薄めに掛けた方が良い場合があり
ます。勿論、施釉する時間によって施釉の厚みに差を付ける事も出来ますが、短時間の範囲
内での違いですので、実際に濃淡を付ける事は難しいです。それ故、予め釉に濃淡を付ける
方が実際的です。尚、釉の厚みは一般に0.5~2mm程度と言われています。
薄い: 石灰透明釉 < 色釉 < 灰釉 < 志野釉 : 濃い
ⅲ) 素焼きした作品に施釉するのが普通ですが、素焼きせずに直接施釉する方法があります。
これを「生掛け」と呼びます。素焼きの手間を省く為と、素地と釉の密着度を良くする(?)為
や、発色度合いも若干差が出るとも言われています。但し「生掛け」の作品は、施釉時や本焼
きで作品が壊れる(形が崩れる)事が多いですので、余り推奨できません。
ⅳ) 素焼きした作品は、一部の技法を除き、完全に乾燥させて置く事です。
以下次回に続きます。
結果を招く事は多いです。
2) 施釉の手順。(前回の続きです。)
⑦ 施釉を行う。
施釉作業は基本的には一発勝負です。間違った場合再度やり直すのは、釉を剥がしたり、
作品を綺麗にする為など、多くの手間が掛ります。
ⅰ) 施釉を行う前に、どの釉(場合によっては複数の釉)をどの様な方法で行うかは、頭に
描いておく必要があります。何故なら多くの施釉の作業は3~5秒程度と、とても短時間で
終わってしまうからです。特殊な場合(スプレー掛け等)を除き、作業の途中で考える暇も
無い程です。
ⅱ) 使用する釉の濃度の調節を行う。
a) 釉の原料は、各種灰やカルシュウムの様な溶融剤の他、着色用の金属類も入りますが、
主に長石や珪石などの岩石類を粉末状にし、水で溶いた状態になっています。それ故、
使用直後を除いて容器の底に沈殿しています。即ち、水分と釉の成分が分離したり、上部が
薄く下部が濃くなっています。その為、均一な濃度にしてから使用する必要があります。
釉の種類によっては、一品を施釉した直後でも、沈殿を開始している物もあります。
又、長らく使用しないと水分が蒸発し、濃度が濃くなっている場合が多いです。
b) 容器に手を入れて掻き混ぜます。釉が固くなっている場合には、カンナ(鉋)等を用いて
底を引っ掻く様にして、少しづつ剥がし溶かします。量が多い場合には、釉を掻き混ぜる
専用の電動用具も市販されています。
場合によっては完全に水分が蒸発している事もあります。中途半端の濃度より、完全に水分
が無くなった状態の方が、釉は早く水に溶ける性質がありますので、あえて水を抜いて乾燥
させた後、水分を加えると早く全体を溶かす事が出来ます。
c) 釉を少量使用する場合は、容器の全部を溶かす必要はありません。
例えば、少量のスプレー掛け、少量の漬け掛け、イチインや筆(刷毛)描きなどです。
使いたい分よりやや多目の釉を別の容器に移し、水を添加する事で必要量の釉の濃度を調整
する事が出来ます。当然ですが、水よりも湯の方が早く溶けます。
d) 釉の濃度を測定する「ボーメ計」と呼ばれる、ガラス製の浮き計り(比重を計る)があります
が、必ずしも必要ではありません。慣れた方(数回経験した人)では、釉の入った容器を手で
攪拌した際、手に付いた釉の手触りや色の濃さで判断できます。
e) 釉を薄くするのは容易ですが、濃くするには手間が掛ます。
薄くするには、徐々に水を加える事で達成できますが、濃くする為には、水分を抜くか、
新たに釉を加える必要があります。その為、水分と分離している状態で上部の水を掬い取り、
やや濃度を濃くした状態で攪拌し、徐々に水を加えて濃さを薄める方法をとります。
f) 釉の種類によって濃く掛けた方が綺麗な色になる場合と、薄めに掛けた方が良い場合があり
ます。勿論、施釉する時間によって施釉の厚みに差を付ける事も出来ますが、短時間の範囲
内での違いですので、実際に濃淡を付ける事は難しいです。それ故、予め釉に濃淡を付ける
方が実際的です。尚、釉の厚みは一般に0.5~2mm程度と言われています。
薄い: 石灰透明釉 < 色釉 < 灰釉 < 志野釉 : 濃い
ⅲ) 素焼きした作品に施釉するのが普通ですが、素焼きせずに直接施釉する方法があります。
これを「生掛け」と呼びます。素焼きの手間を省く為と、素地と釉の密着度を良くする(?)為
や、発色度合いも若干差が出るとも言われています。但し「生掛け」の作品は、施釉時や本焼
きで作品が壊れる(形が崩れる)事が多いですので、余り推奨できません。
ⅳ) 素焼きした作品は、一部の技法を除き、完全に乾燥させて置く事です。
以下次回に続きます。